8 悪夢 ①
更にドロドロしてきます、ごめんなさい。R15 ショタ 近親相姦(正確にはしてませんが) 男の子同士がダメ‼な方は飛ばしてね。(後半部分です)
ユリウスからそれを聞いた時、ニキアスは言葉を出せない程の衝撃を受けていた。
「――陛下のお渡りがあったそうです」
痛ましい不幸な出来事を告げるかのように、ユリウスは慎重に言葉を選んでいた。
ニキアスはぐっと唇を嚙み締めた。
――だから。
(だから、宮殿に彼女を連れて行きたくなかったのに)
いや、連れて来るべきでは無かったのに。
力を入れ過ぎた唇からは血が滲み、口腔内に鉄の味が広がった。
「…マヤの、彼女の様子は…?」
自分が彼女をみすみす奪われたという事へのショックと不甲斐なさへの怒りはこの際置いて、陛下のお渡りによる彼女への身体的、精神的な影響の方が更に心配であった。
「リラ姉からの伝言では、少々首に痕が残った程度で取り敢えず身体に問題は無いと」
問題ない筈が無いではないか、とニキアスは言いたくなったが、この程度で済んだのは、幸運だと言えない事もなかった。
一晩であの怪物に身も心も完全に壊される女性は、姫君という立場で無くとも数多かったからだ。
時々感じるのは、兄上は女性に対して特に何も…時に欲情すらしないのではないかと言う事だった。
自分の子供を産んだ后や側妃の元へは、基本的には子供を懐妊した時点でお渡りを止めてしまう。
流石に噂を聞かないので、政治的に繋がりのある妃らには丁重な扱いをしているのかと思いきや、寧ろノータッチになっているのが現状で、妃らはガウディの邪魔に為らない家系か、もしくは奴隷の若く美しい男に歓びを見出だしていた。
「マヤ様への面会のご希望は出されているんですよね」
「出している。宮殿に入った当日よりずっと」
「わざと遅れた対応を取っている可能性も有りますが、一つ気になる事を訊きました。マヤ様が預言者として宮殿に召し抱えられたと…」
「どういう事だ。敗戦国の姫だぞ。預言者として召し抱えるなどと…」
通状では到底考えられない事態だ。
「ええ。ゼピウス国の様に預言を政治の為に虚言にするつもりでしょうか?」
「いやそれは…考えにくいな…」
預言者はマヤ以外にも何人かいるから、その者らを全て欺いて預言内容をガウディの意のままに替えるのは簡単ではない。
――では何故宮殿に預言者として残したか。
「考えたくはありませんが、ニキアス様への楔…脅しですかね」
ユリウスは呟いた。
マヤという人質が宮殿にいれば、ニキアスが怪しい行動を起したくともできない。
同時にそれはマヤが虚言を吐けば、今度は『ニキアスに何か恐ろしい事が起こるかもしれないぞ』と無言の圧をかけることにもなる。
お互いがお互いの存在を大事に思えば思うほど、その楔はより深く突き刺さっていくのであった。
「くそっ…!」
ニキアスは申し訳程度に付けていた面布を片手で勢いよく剥ぎ取って床に叩き付けた。
*****
その夜は寝苦しくない気候だったにも拘わらず、ニキアスは何度も魘された。
「はっ…!」
寝台の上で汗だくで目を覚まし、飛び起きたのだった。
それはニキアスが、六歳の誕生日を過ぎて数日経った時の当時の頃の夢だった。
そしてそれが原因で、父上の館も離れる切っ掛けになる…記憶の沼に深く沈めた筈の事を思い出してしまったのだ。
十三歳になり、大公の代わりに当主になったガウディ兄上が、ニキアスの元へ訪れた。
母は身分の低い踊り子だった事に加えて、ニキアスの左頬から額にかけて蒼い痣があるのを見た時に、早々に父上の屋敷から姿を消した。
ニキアスは、父の後ろ盾も無いままにほとんど顧みられる事無く育ったが、ガウディだけは違っていた。
幼い頃からニキアスの痣を見ても、気持ちが悪いなどと言ったりせず、無表情でその痣を眺めていただけであった。
時に指先でつんつんとその痣の痕をなぞる事もあった。
ガウディはニキアスへ食べ物や服用の布や読書用の本などを定期的に直々に持ってくる事があり、ニキアスは純粋にそれに感謝していたのである。
――あの時までは。
ある日、ニキアスがガウディが持って来た羊肉の入ったピタパンを、彼の横でもぐもぐと食べていると、ソースが口の端から落ちた。
ガウディはそれを親指で拭ってぺろりと舐めた。
またソースが口から滴り落ちる。
ガウディが屈んで今度は直接舌で舐め取った。
ニキアスはびっくりした。
幾ら六歳でもいきなり口を舐められるのは何かが違うと分かっていたのだ。
パンを食べ終わると同時にニキアスはあっという間に引き倒された。
手足が長く背もいつ間にか伸びたガウディはニキアスの上に覆いかぶさりキスをし始めたのだ。
思い出したくない時間だが、特に痛い事はされなかった…その時は。
ただ全身、特にいつも自分では決して触らない場所を執拗に触られ弄られ、唇や舌で何度も繰り返しにキスされたのだ。
「あにうえ…どうして?」
ニキアスが一体何が起こっているのか分からないと呆然とする内に、ガウディはニキアスの下腹の当りで顔を上げた。
黒目勝ちの目を細めた薄笑いだった。
「…さあ、どうしてだろうな。ニキアス…考えろ」
それからぐっと伸びあがって、またニキアスへ舌を絡めるような深いキスを繰り返した。
「お前が常に奪われる側だからかな…可愛いニキアス。そうだろう?」
そして左目の痣の上にガウディはそっとキスを落とすと囁いた。
「…お前は俺が知る中で一番美しく、そして醜い男になるのだろうな」
お待たせしました。
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