81 王女の誘惑 ②
R15になります。
R15強めです
嫌な方お気を付けください。
「マヤ…もう止めよう。君の気持ちは嬉しいが、無理に俺としなくていい」
「…え…?」
「マヤが俺に…誠実でいてくれようとしているのは分かっている。勿論俺を嫌っていないのも。何かしらの理由があって、こんな事をしようとしているのだとも」
「……」
(いきなりどうしたの?)
急に冷や水を浴びせられた様な感覚があった。
何故だろう――なんだか…とても気持ちの悪い展開だ。
「…君の気持ちが伴わない状態で、俺に無理に抱かれる必要はない。だが必ずアウロニアでガウディ兄上から君を貰い受ける。俺の事は、今は…大切な友人や兄の様に慕ってもらえればそれでいい」
ニキアスの言葉を聞く度に――わたしの中で、得体の知れない違和感が募っていく。
「…俺に全て捧げると言ってくれた言葉は嬉しかった」
わたしはニキアスが急に何を言っているのかが理解出来なかった。
「無理に…抱かれる?」
(今わたしが、『お願い抱いて』って言っているのに?)
一体何が目の前で起こっているの?
わたしを気遣う様に微笑むニキアスは、見とれる程美しい。
けれどヴェガ神の庭を抜けて交わした誓いや抱擁が、目の前で違ったものにすり替わっていく様を目の当りにして、わたしは愕然とした。
現実的には何も大きな事は起こっていないのに、わたしの全身に悪寒が走り鳥肌が立つ。
目の前で得体の知れない大きな力を目の当たりにした気分だ。
(…メサダ神だわ)
――嗤える程の喜劇仕立てだった。
今この瞬間にも二人の愛や絆を、メサダ神はこうも簡単に安っぽい同情心や親愛の情に書き換えようとしている。
恐ろしいのはこの流れに抵抗せずに乗ってしまったら、わたしもそれで仕方が無いと納得してしまいそうになる事だ。
(…これ以上待つのは危険だわ)
最早一刻の猶予もならないのよ。
もう肚を括らなきゃ駄目なんだわ――×××。
わたしは前世での自分の名を呼んだ。
*****************
メサダ神のえげつない計画に、思わず吐き気がしそうになる。
わたしはニキアスの手を取った。
「ニキアス…貴方は抱いてと言ったわたしの決意を拒むの?」
手は預けたままニキアスは、わたしをじっと見つめた。
「...ニキアスを愛しているから今抱いてほしいの」
わたしの言葉に、ニキアスはとても驚いた顔をしていた。
「…愛してる?お前が?」
「何も言わないでニキアス。わたしの処女をあげる。お願い、今すぐ貴方が欲しいの…挿れて」
「…いれ……」
(ああ…とうとうニキアスが呆然としてしまったわ)
ニキアスの口が驚きのあまり半開きになってしまっている。
まさか王女がそんな言葉を使うとは思っていなかったに違いない。
焦り過ぎた余り『ド直球』な言い方になってしまった事をわたしは少し後悔した。
(プライドが高く純粋なマヤ王女は、死んでもこんな破廉恥な言い方をしないだろうから…)
わたしも生前であればこんなムードの無い台詞は吐かなかったのに。
でも今は緊急事態だ。
おまけに時間も無くわたしは焦りまくってもいた。
何故ならこのニキアスの数秒の沈黙の間にも、メサダ神がこれからの展開の書き換えをしようとしている筈だからである。
「ニキアス…さあ、脱ぎましょう。手伝うわ」
わたしの顔を見たまま返事をしないニキアスの服を勝手に脱がせるべく、わたしは彼の上衣に手をかけた。
「ま…待て、マヤ…ちょっと」
「さあ早く、下穿きも脱いで」
「マヤ分かったから、ちょっと落ち着け」
「ニキアス…早く」
ニキアスはひらすらわたしを落ち着かせようと宥めている。
燭台の蝋燭の明かりの中、二人とも寝台に座っているというのに、一方のわたしだけ全裸と言う状況下――。
甘い言葉が交わされる事は無く、服を脱げ、いや待てのすったもんだの攻防戦が繰り広げられていて、これから盛り上がってセックスをしましょうというムードもへったくれも無い。
こんなグダグダな状況の中、わたしが本当に彼をその気にさせる事が出来るのか…と絶望しかけた時、ニキアスがいきなり声を上げて笑い出した。
*******
「はっ…はははっ…マ、マヤの顔が…」
ニキアスは下を向き、自分の裸の膝を叩きながら笑っていた。
「…ふふっ…はぁ…昔の様だ。…覚えているか?」
わたしが首を傾げると、ニキアスは目に浮かんでいた涙を手の平で拭った。
「そうか…ふふ。覚えていないか。花を摘み、お前の部屋に届けた八歳の誕生日の事だ」
花を受け取った後、余りに泥だらけの俺を見て、お前は汚いからと俺の服をいきなり脱がせ始めたな、とニキアスは話し始めた。
「俺は嫌がったのに、命令されて仕方なく脱いだら…お前、俺の脚の間にあるモノを見て…」
ニキアスはまたくっくっくっと、笑いが止まらない様だった。
「『怪我したの?大変、腫れてるわ!』って大声で叫びそうなのを、俺は口を押えて必死で静かにしてもらった覚えがある…」
それから、わたしを見つめて濃いグレーの瞳を甘く煌かせた。
「ああ…愛している、マヤ…」
「わたしも。ニキアス愛してる…本当に」
「無理になんて言わないで。本当にわたしが望んでいるの」
と言うとニキアスは少し微笑んだ。
「お前からの愛の言葉は今日が初めてだ…嬉しい」
わたしは自分からニキアスへ唇を寄せてキスをした。
何度も唇を重ねると彼の唇を舌でなぞってから軽く噛んだ。
ニキアスが少しため息をつくと、そのまま彼の耳元へ唇を近づける。
「…わたしが欲しいなら好きなだけあげる」
(お願い、全部ニキアスのものにして)
と彼の耳に囁くと、わたしの頭の後ろに手を回したニキアスが今度は手加減せず私の唇を食み始めた。
「マヤ、マヤ好きだ…愛してる」
何度も囁き、繰り返しわたしの肌を吸ってはまた舌を這わす。
わたしは快感に声を大きく上げて、ニキアスを更に煽った。
ニキアスの逞しい首に少し歯を立てて乳首を指で擦ると、ニキアスの身体がブルっと震えた。
甘い言葉を紡ぐ余裕は無かった。
お互いの吐息と快楽に上げる声だけがテントの中で聴こえていた。
********
わたしの脚の間で、片足を持ち上げたニキアスの頭が動いているのが見える。
ニキアスが敏感になる場所をわざと音を立てながら思い切り吸うと、またわたしは嬌声を上げた。
「…きついな、解すぞ」
剣を握るごつごつとした指が、中を何度も擦ると足先から背中に向かって快楽が駆け上がって行く。
「――達したな」
快楽に声も出せず、彼の頭を押さえてがくがくと背中をのけぞらせるわたしを見たニキアスが呟く。
わたしは息も絶え絶えだったが、起き上がって少し驚いた表情のニキアスに向かって手を伸ばした。
屹立しているそれを優しく掴んで、彼が限界になるまで手を動かしていく。
ニキアスが息を吐くような声で呻くと、肉食獣の様な眼でわたしを見つめた。
「マヤ、もうやめろ…言っておくがこんな事をされたら優しく出来ない」
「…でもニキアス。気持ち…いいでしょう?」
ニキアスはわたしをぐいと抱き寄せると耳元で甘く獰猛に囁いた。
「…はっ…覚悟してくれ、マヤ…お前が煽った代償だぞ」
わたしはうっとりと微笑んで、目の前にいる汗に濡れた美しい獣を見上げた。
「――いいの、必要無いわ…はやく来て」
ニキアスがわたしの中に入ってくると同時に、はるか遠くでメサダ神が上げる怒りの声が聞こえたような気がした。
お待たせしました。
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