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嘘つき預言者は敵国の黒仮面将軍に執着される  作者: 花月
1.嘘つき預言者の目覚め
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78  メサダ神の怒り ①


森の奥から数人の馬を駆る音が聞こえてきた。


「…誰か来る…?」

抱き合っていたニキアスとわたしが慌てて身体を離した時、ちょうどわたし達を捜すアウロニア兵等の姿を確認する事ができた。


「あっ…見ろ!レオス将軍様らしいぞ!」

「やはりか…ドゥーガの加護を纏っている人間だからもしやと思っていたが…」

「ああ、マヤ王女様まで…見つかって良かったです」


アウロニア兵達は、わたし達を何とか捜そうと小さなグループで纏まり、散開して森の中をずっと捜索してくれていた様だ。


「あ…」

わたしは捜索メンバーの中に第三部隊の部隊長さんを見て、思わず声をかけてしまった。


「すみません。部隊長さん、捜してくれて…ありがとうございます」

「いや…姫さんが見つかって良かったですよ。ナラが半狂乱になっているから早く戻ってやってください」

「…はい。そうですね」


ニキアスと目を合わせて頷いてから、ニキアスとわたしはわたし達を待ってくれているアウロニア軍のテント設営場所へと馬を進めて帰ることにした。


ナラはわたしの姿を確認するなり転ぶ様に走って近づいて来た。

「マッ…マヤ様っ!よ、よくぞご無事で…」

「ごめんなさいね。ナラ…心配かけて」


わたしは涙でぐしょぐしょの顔で、転ぶように駆け寄ってくるナラを抱き止めた。


「気を失ってその後の記憶がないのです…申し訳ありません」

と涙を流して繰り返すナラの背中をトントンとしながら

「大丈夫よ…ナラのせいじゃないの。お互い無事で良かったわ」

と落ち着かせた。


ニキアスは『勝手な行動を取って!』とどっちが将軍なのか分からない程、ユリウスに大目玉を喰らったらしい。


またユリウスに因ると、自分の父親であるダナス副将軍とその部下は、街の娼館でべろんべろんに酔っ払っていて使い物にならなかったそうだ。

(全く呑気な方である)


ニキアスが消えた後ユリウスは、部隊長と相談しながら軍を纏め何と――軍の損害を確認し、けが人の把握と手当させ、死者の埋葬をし、ニキアスの捜索隊まで編成させたというから驚きだった。


「ふふ…そうだ。成人したらお前が皇軍『ティグリス』の将軍をやればいい。そうすれば俺は直ぐにイェラキ隊に戻れる」

ニキアスは笑いながらまだぶつぶつと小言をいうユリウスへ余計なことを言ったものだから、またユリウスは烈火のごとく怒ったらしいと後にナラから聞いた。


今回の将軍でありながら戦線離脱した理由を、ニキアスはマヤ(わたし)の捜索とは言わなかった。

「君は詳しく知らないほうがいいし、話さない方がいい…後々面倒なことに巻き込みたくないからな」


ニキアスは『玉璽の奪還』と言って話を通すつもりらしい。


(あ…アナラビの事言いそびれちゃったわ。ボアレスの事も…)

ボアレスのことはともかくも一つ気がかりが残ってしまった。


(後で二人になった時に言えるかしら?)

盗賊団の奇襲後の後片づけで忙しいニキアスを見て、わたしは後にしようと思った。


湯あみと着替えを済ませニキアスを待ちながら、彼のテントの寝台で少しウトウトしている時に――それは起こった。


 *********


「余計なことをしてくれた」

いきなり頭の中を少年の声がする。


ハッと気づくと何処までも白く広い床の上に座っていた。

空にはいくつもの太陽が昇っていて晴れていて、とても暑い。


(え…?ここはどこ?)

わたしはあたりを見渡した。


「お前は全く余計な事をした――全て何世紀も前から順調な計画だったのに」


ふと見上げると目の前に、とても端正な顔だが表情がすっかり抜け落ちている少年が、トーガを纏って立っていた。


不思議なことだが、この少年の顔はとても整っているのに、数秒目を離すと直ぐに忘れてしまいそうな程特徴が無い。


ただ瞳だけが、透き通るガラス玉の様だ。


「何故…過去で未来視が出来た魂が、預言者マヤ王女として転生したのか、忌々しい…」


『全く持って忌々しい…』と繰り返す。

能面のように表情が無く、声に抑揚も無い。


「…これ以上のお前と『レダ』の干渉を許さない。すでに起こってしまった事はもう変えられないが、これからの事に手を出せばお前がたとえ『レダ』の『預言者』でも容赦しない」


まるで精巧な機械人形が喋っている様だった。

「赦すのは…わたしの王子がこの国を治め、わたしと…をただ一つ神として崇める事のみ。…その為にも」


ぶつぶつと独り言のように呟くと、いきなりわたしの額に手を当てた。

「あの()共々――記憶を変える」


わたしは思わず少年に向かって叫んでいた。

「止めて下さい!――『メサダ』神様!」


次の瞬間少年は、伸ばしていた手と共にビクリと身体を動かした。


能面のようにぴくりとも顔の筋肉が動かないのに、わたしに対して憎悪の表情を浮かべているのが分かった。


圧倒的な不可侵なちから――神の大いなる存在を感じる。

少年は唇だけ動かした。


「……今たかがひとの分際で我に逆らったな?」


わたしは恐怖で全身の皮膚が粟立ち、吹き出る様な冷や汗をかいて、全身のガタガタとした震えが止まらなくなった。


お待たせしました。


読んでいただきありがとうございます。

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