57 奪取 ①
R15になります。
ご注意ください...m(_ _)m
アドステラ盗賊団のアナラビは、メサダ神の加護を受けながら注意深く目を凝らし、ニキアスのいるテントの方向を見ていた。
「一体どうなってんだよ…」
今日だけで、数え切れないほどの舌打ちをしている。
襲撃の狼煙をあげようとしたら、盗賊団の部下から「仔犬の姿が消えた」と報告があった。
ボレアスが気に入っていた女がニキアス将軍のテントに入り、攫って来いと言った仔犬までも黒仮面将軍のテントから出てこない。
そんなこんなで襲撃のタイミングを逸してしまった。
途中テントの周りが騒がしくなったが、何故か将軍が男をおぶって走りながらテントに戻って来て、またすぐに帰った。
「意味がわかんねーじゃねえか…」
呟くアナラビの横に少女が歩いてきた。
「…襲撃のタイミングを逃したみたいね」
非難めいた声をかけたのは、あの『カーラ』と名乗った少女だった。
艶やかな花のような印象の彼女は、豊満な胸の前で腕組みをした。
「お前もニキアスには近寄れなかっただろ?タヴィア」
『マヤ王女が生きている』とアナラビに報告したのは彼女だった。
(あのテントの中に入った女がそうだったのか)
ますますアナラビは、マヤ王女を手に入れたくなった。
神の存在の近くにいる『預言者』は希少でなかなかお目にかかれない。
アナラビですらメサダ神の加護を受けられるだけなのだ。
ましてやマヤ王女のような神官以外で神託を降ろせる人間は、本当に稀な存在なのである。
「明け方前に実行するぜ」
見張りの兵と犬に気配を気取られるなと伝えると、アナラビ自身も気配を殺しながら標的のいる場所まで近づいていった。
**************
「マヤ…」
わたしの名前を呼ぶ息が熱い。
背中でニキアスの重さと体温が熱の固まりのように感じる。
そのせいかわたしの身体も火照って熱くなっていく。
背中から前に回された手で、服越しに優しく胸を擦られると思わず吐息が漏れた。
ニキアスがふっと笑って
「…可愛い反応だな」
と言うので、とても恥ずかしくなってしまう。
もう片方の手が衣服のなかにするりと入ってきて、わたしの下腹の辺りの肌をそっと撫でてからもっと下に降りていった。
「…あ…」
思わず出た声を聴いてニキアスが小声で言った。
「マヤの身体が熱い」
ニキアスはわたしの顔を軽く後ろに向かせると、覆いかぶさるように深く
唇を重ねてきた。
熱い舌がわたしの唇を割って入ってくる。
「マヤ…」
わたしの足を開かせた二キアスの手の動きは、普段剣や大槍を振るっているとは思えないくらい繊細だ。
「…ここも熱いな」
囁きながら慣れたようにゆっくりとニキアスの手先が、両足の間を付かず離れずで触れていく。
(そういえばニキアスはとても器用だった)
何故かわたしはこの瞬間、思い出してしまった。
「…ん、…あぁ…あ…」
ニキアスは優しくわたしの首や背中にキスを落としながら、彼の指の動きに翻弄されるわたしの声を、十分堪能している様だった。
「…気持ちいいか?マヤ」
ニキアスは枕に顔を埋め、頷く事しかできないわたしの脚を今度は固く閉じさせると、今度はもう少し背中に体重をかけてきた。
そして少し切なそうに微笑むと
「マヤ…ここまでする気は無かったが、お前のその声を聞くと俺はおかしくなってしまうな」
次の瞬間、ニキアスの熱の塊が閉じた足の間にするりと入った。
ニキアスは少し意地悪に笑いながら
「足はしっかり閉じておけよ…開けば」
(挿れるぞ)
と囁いて、わたしの首筋をまた吸っていった。
ニキアスの手は熱くその唇は甘く、彼の言葉と吐息でわたしの身体と頭はぐずぐずに溶かされてしまいそうだった。
***************
「…喉が渇いたわ…」
暗いテントの中目が醒めるとわたしは背後からニキアスに抱きしめられた
状態で目が醒めた。
ニキアスの重い腕をゆっくり持ち上げて外し、水瓶のある方へ音を立てない様に静かに歩いた。
木の器へ水を汲んで、飲もうとした瞬間。
いきなり――『神託』が降りてきた。
これが『神託』だと解ったのは、今までに無い感覚――言葉がそのまま頭の中へ降ってくる感覚だったからだ。
同時に見えたのは闇を引き裂く赤い光だった。
『閃光が夜明けを引き裂いてやって来る』
「…マヤ、どうした?」
ニキアスの声がしてはっと気が付くと、わたしは水の入った器を落していたらしい。
わたしはニキアスの方を振り向いて言った。
「ニキアス様、神託です…どうして…」
(どうしてわたしが受けられるの?マヤ本人じゃないのに)
わたしの混乱をニキアスは突然の神託の為と勘違いしたのか、彼は寝台を降りると手早く服と面布を身につけた。
「アナラビ?」
わたしの言葉を繰り返しながらニキアスはテントの天幕を空け、まだ星の見える昏い外を見た。
見れば、焚火の勢いが少し弱まっている。
もうすぐ明け方の為、兵士の見回りが甘いのかもしれない。
その近くで白い犬が親子で丸まって眠っていたが、ニキアスが天幕を開け
外を覗くのをみた瞬間、親犬が立ち上がり真っ暗な樹々の隙間を見つめた。
それを確認したニキアスは闘神ドゥーガの加護を唱え、闇と樹々に目を凝らしたのだった。
お待たせしました。
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