表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
嘘つき預言者は敵国の黒仮面将軍に執着される  作者: 花月
1.嘘つき預言者の目覚め
43/260

42 街道の海賊団 ②

「そう言えば、ニキアス様が父上の処に送ったあのカーラという少女ですが…」


ユリウスがニキアスの隣に馬を進めて言った。

「今朝姿を消してしまったと…」


昨夜ダナス副将軍が、カーラと共に皇宮から送られた酒を一緒に呑み進めていく内に眠り込んでしまい、目を覚ましたら彼女はいなくなっていた、と報告した。


「皇宮から来たのは事実なのか確認はしたか?」

「はい。皇宮から来た書状は本物でした」

「とすると…カーラ自身が侍女と入れ替わった可能性が高いな」


ユリウスは頷いて言った。

「そうですね――何かしらの被害があった訳では無く、父上が酔い潰されただけですが、目的が気になります」


「まあ…俺だろうな」


ニキアスはため息をついた。

カーラは彼のテントに来ていた。


ニキアスが彼女を望めば、彼のテントで世話をする事になっていただろう。

マヤがいてもいなくとも、その展開にはならなかったろうが。


(しかし…姿を消したというのが解せない)


ユリウスはニキアスと同じ事を考えていたらしい。

「でももしそうだとしても…わざわざ姿を消す必要は無かったですよね。父上の側に居れば色々情報収集もやり易いと思うのですが…」


実際そうなのだ。


ガウディ皇帝が送り込んだのであれば、ニキアスのテントから出るように言われたとしても軍に留まりそのまま様子を見る事も出来るはずなのだが。

姿を消した方がかえって怪しまれる。


それを何故敢えて#誰にも言わず姿を消した__・__#のか?


(あの女の目的は一体何だったんだ?)

ニキアスは行軍の先頭を馬で乗り進みながら、消えた皇宮からの侍女カーラの事を考えていた。


 *******


「よく揺れますね…マヤ様のお身体は大丈夫ですか?」


馬車に揺られて座席が上下によく揺れるが、道路事情というよりは馬車の作りによるものだろう。

道路は石畳の様に綺麗に舗装されているが、クッションの無い車輪がもろに振動を受け車体が揺れるのだ。


「大丈夫よ、ありがとう。ナラこそ大丈夫?」

「なんてお優しいお言葉…マヤ様は本当にお優しいですね…」

ナラは少し赤くなって言った。


馬車に揺られている暇な時間にもわたしはなるべく小説の流れを思い出だそうとしていたが、またある事に気づいた。


小説のなかで、街道を帰路として使用する事を勧めていたのは、皇軍『ティグリス』の兵らの主な勢力であるダナス副将軍等だ。

ニキアスはダナス副将軍らの強い希望があったが、大盗賊団を警戒しハルケ山を突っ切って帰る事を選んだ。


今回もどうやらニキアスの様子だと、やはり街道押しなのはダナス副将軍だった。

(どうして街道を使いたいのかしら?)


馬に乗ったユリウスがわたしの乗る馬車の車体を叩き、

「マ…あっと、…乗り心地はいかがですか?」

気を遣って敢えてわたしの名前は言わずに尋ねてくれた。


「はい、大丈夫です」

わたしは答えて

「ユリウス様…ちょっと訊いてもいいですか?」


ダナス副将軍の話しを直接その息子にきくのもおかしな話だが、現在はユリウスが尊敬するのは、将軍ニキアスのため『教えてくれるかも』と淡い期待からユリウスへ直接訊いた。


「ああ、それは後の利権が絡んでくるからです」

ユリウスはあっさりと教えてくれた。戦争の常識らしい。


街道沿いは良い商業地になっている。

征服した後の褒賞としてゼピウスの土地を希望すれば貰えることもあり、ダナス副将軍としては是非見ておきたいものらしい。


「あとは女遊びをしたいからですね」

(なるほど…)

わたしは頷いた。


街道沿いにはその手の店が多くある為、女日照りが辛いダナス副将軍にとっては必須らしい。

軍内では普通に男色も流行っていたが、ダナス副将軍は女性しか抱けないそうだ。


アウロニアから連れてきた女性奴隷やゼピウスより連れてきた処女の奴隷の他、街道沿いにある玄人が好む店もダナス副将軍にとっては人生に必要な刺激の一部らしい。


(でもこの嗜好も特に珍しくないのよね)


古今東西の権力者を紐解けば、金や権力を手にいれた男性が流されやすいモノの一つでもある。


 *********


「普通なら大盗賊団のでる危険性のある街道を警戒するのではないのですか?」


わたしがユリウスに尋ねると、彼はあっさり答えた。


「最強と言われる#皇軍__・__#ですから」

どうやらそんなのは皇軍『ティグリス』が蹴散らして当然というスタンスらしい。


わたしは思ったのだ。

(なぜこんなに街道が気になるんだろう)


なぜこんなに不安に…そう、今不安な気持ちに襲われるんだろう?

小説では通らなかった筈の帰路の選択に『本当にこの帰路で大丈夫なのだろうか?』と妙な胸騒ぎを抱いた瞬間だった。

お待たせしました。


読んでいただきありがとうございます。

良ければブックマーク評価いただけますと嬉しいです。


なろう勝手にランキング登録中です。

よろしければ下記のバナーよりぽちっとお願いします。

評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ