36 ピュロスの行方 ③
R15になります。嫌な方 ちょっと無理やり系がダメな方
お気を付けください。
「ニキアス様!聞いてください、お願い…」
わたしは身体をよじって、ニキアスの拘束から逃れようとした。
「ニキアス!聞いて、この展開は…んっ!…」
この展開は間違っていると言おうとした瞬間、もう一度わたしに覆い被さる大きなニキアスの影に唇を塞がれて言葉が失われた。
剣を握る大きなゴツゴツした手で荒々しく胸を揉まれ、その先端をきゅっと摘ままれると
「…あ、んっ…ああっ!」
背中をのけぞらせて叫ぶわたしに低いニキアスの囁き声が聞こえた。
「いい声だマヤ…もっと啼いてくれ」
「…ああっ…ダメっ…ニキアス様…」
背中と腰を撫で上げていくニキアスの指先と、胸の頂きの回りをなぞってから下腹に向かう彼の舌の動きに翻弄されて、わたしは声を上げ続けた。
ニキアスの愛撫に身動きが取れず、わたしはその沼に沈んでいくだけだった。
ニキアスの片手がするりとわたしの脚の間を滑って奥へと入ってくる。
その甘くみだらな指の動きは直ぐにわたしを昂ぶらせ――何度も強制的に上らされてしまう。
「…ん、あっ…あ、ニキアス様…っ!…」
テントの中の空気がすべて熱く重たい粘液の様だった。
「マヤ、お前も…もう我慢できないようだ」
ニキアスが掠れ声で呟いて、わたしの脚をぐいっと上に持ち上げ身体を寄せた。
「――俺もだ…」
(ダメだわ!…このままじゃ…)
『奪われる――奪われてしまう』
またマヤが炎に巻かれる場面と、皇位を簒奪したニキアスがギデオン軍に囲まれて血溜まりに沈む映像が、まるで一度観た事のあるモノクロ映画の様に脳裏に蘇がえる。
このままでは――この小説の中に飲み込まれる。
「待って――駄目っ!…ニキアス…!!」
わたしが叫んだ瞬間だった。
テントの中を閃光が走った――と同時に。
――ドーンッ!バリバリバリッ!!!
大気を切り裂くような衝撃音が、空気と地面を震わせた。
*********
「キャーッ!!」
「何だ?雷が落ちたぞ!?」
「燃えている!消火しろ…!」
ニキアスとマヤ王女は、テントの外で何処かで悲鳴が上がったのを聞いた。
ニキアスは轟音が鳴ると同時に起き上がり、暗闇の中で彼女を見つめた。
「――マヤ、お前か?」
「ち、違います…違うと思います…」
真っ直ぐにニキアスの瞳に射すくめられ、マヤは慌てたように首を横に振った。
ニキアスは寝台から音も無く離れると、下半身だけ素早く寝台の近くに落ちた寝間着を履き、剣と面布だけ素早く引っ掴んでテントの外に出た。
テントからちらほら奴隷や就寝中だった兵が出てきて、一体何が起きたのかとあちこちでざわついている。
細長い手足のユリウスが、丁度雨の中をこちらのテントへ向かって走ってくるのが見えた。
いつもなら隙無くきっちりとトーガを纏ってくるのだが、流石にその時間はなかったようだ。
浴衣のように合わせ襟の上衣に緩い膝下の下穿きとサンダルといった出で立ちだった。
「どうした?雷が落ちたようだが、被害は分かるか?」
ニキアスがユリウスへ問うと、
「そのようです。こちらに向かいながら確認したところ厩舎のテント近くに落ちて馬が興奮状態で落ち着かないみたいです」
「分かった。そちらは俺も行こう」
そこにはニキアスの愛馬もいるはずだった。
「ダナス副将軍はどうした?」
ニキウスはユリウスへ問うと
「カーラとお楽しみだったんじゃないですか?ちらりと見たら、泥酔状態で起きてきやしませんでしたよ。新しい兄弟が出来て、母上に怒られなきゃいいですけどね」
ユリウスはさらりと言ってから、ニキアスをまじまじと見つめた。
「あれぇ…噓でしょ、閣下もですか?珍しい。僕知ってるだけで一年…いや一年半ぶり位ですよ!?」
『イェラキ隊』から上司を知るユリウスは、おもちゃを見つけた子供のような声を上げた。
「上官の閨の数まで覚えなくていい」
ニキアスは苦笑してユリウスへと指示をした。
「ユリウス、お前は部隊長等と連携をして他のテントや人間に被害が出てないか確認してくれ」
この騒ぎでも、ダナス副将軍のように女奴隷とねんごろになり、酒を呑んでテントの外に出てこない者も数多くいたからだ。
「分かりました――確認してきます」
ユリウスは敬礼をすると、そのまま身を翻しテントの密集する方向へ走っていった。
ニキアスがもう一度テントの中に戻ると、掛布を裸の胸に引き上げたマヤが、心配そうにこちらを見ている。
「ニキアス様…大丈夫でしたか?皆は…」
「分からん。これから確認にいくところだ」
ニキアスは長い髪を後ろでまとめ、合わせ襟の上衣を肩へ羽織るとそのままサンダルを履きながら言った。
それから、面布のある方の目でマヤをちらと見ると
「…俺が間違っていたのかもしれんな。やはりレダの神殿で拒絶された時から君には触れるべきではなかった」
そう言うとバサッと天幕を開け、ニキアスは外へ出て行った。
そしてマヤは1人テントの中に残された。
お待たせしました。
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