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嘘つき預言者は敵国の黒仮面将軍に執着される  作者: 花月
1.嘘つき預言者の目覚め
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30 帰途の選択 ⑤

ニキアスは、ユリウスがカーラの腕を取ったままテントから出て行くのを見送った。


マヤ王女はカーラがまさかダナス副将軍のテントに連れて行かれると思っていなかった為か今回の展開に呆然としている様に見えた。


そして彼女ははっと気づいたように言った。


「ニキアス様…彼女は何もしていませんよ?本当にわたしが…」

「…これからするのだ」


マヤの言葉をニキアスは手を振って止めた。


「――これからするのですか?」

疑問符をつけたままのマヤの顔を見てニキアスは苦笑した。


「…分からないか。多分あの女は義兄上からの間者だ」


その言葉に、マヤは目を見開いた。

ニキアスはさらに言葉を続けた。


「それにさっきも言ったが…俺は戦の間女を抱かん」


(…言い訳のように聞こえるのは何故だ?)

ニキアスは自身の言葉を苦々しく思いながらマヤを見ると、彼女は納得したように頷いていた。


「皇帝陛下の…そうだったのですね」

後半の言葉を聞いているのかいないのか分からないマヤの反応にニキアスは少しほっとした。


*********


『預言者としてでなくてもいいから』

とニキアスは前置きをしてから

「…参考までに君に意見を聞きたい。敵国の王女に聞くのも妙だが如何せん情報も少ない。以前俺に帰路についてハルケ山以外のルートを訊いてきたな。他に適当な帰路があるのか?」


実際にニキアス等アウロニア帝国軍が通った帰路がハルケ山ルートがだったから『亡国の皇子』小説内に違うルートの記載は無い。


ニキアスが真剣な顔でわたしを見つめているのが分かる。

わたしはなるべく小説の内容を思い出しながら言った。


「わたしが分かるのは…」


実際のルートとしては使わなかったが、小説内の挿絵に確かもう#二つ__・__#アウロニアへ戻る道があった筈である。


「街道は山道よりは整備はされていますが、今は特に大規模な盗賊団も横行していて被害がかなり出ていると言われています。もう一つのルートはルー湿原を横断する事です。最速で安全ルートと思われますが…嫌がる人もいるかもしれませんね」


ニキアスは深刻そうに頷いた。

「…そうだな。得体の知れない生物がいる場所だ」

ルー湿原にいる生物が『ヴェガ神の遣い』と言われる為、兵らは皆()()を畏れ湿原に入りたがらない。


幼虫のような見てくれで、人間の血を吸って膨れる気色悪い姿の生物が生息する場所である。

「湿原にいる『ヴェガ神の遣い』によって勇猛果敢な部隊長らでも湿原に入るのを嫌うのが予想される」


わたしはニキアスを見つめた。

「…湿原にいるのは、ヴェガの遣いと言われている様な正体不明のものではありません。あれは吸血ヒルという立派な生物で人の血は吸いますがそれ以上の事はありません」


わたしは小説内での文章を思い出して、ニキアスへ説明をし始めた。


「吸血ヒル?」

ニキアスはわたしの言葉に眉を顰めたが、構わず続けた。


「その様な生き物聞いた事が無い。それに人の生き血を吸うのだろう?」

「蚊も人の血を吸いますわ」

「それはそうだが、見た目も…」

「…これは…神託ではなく知識になりますが」


今度はわたしが前置きして説明を始めた。

『亡国の皇子』に書かれている様なただの『チスイヒル』であれば身体に入る服や靴の隙間を防げばいいのだ。

例え吸われたとしても直ぐにヒルをはたき落とし流水で洗えばよい。


昔ハイキングで登ったコースで山ビルが出て、パニックになった事があったが、ガイドさんは問題ないと言うようにヒルを摘まみ上げ、吸われた皮膚の部分をよく水で綺麗に流してくれた。


多少痒かったり後に痕になったが、それもしばらくすると消えた。


昔は瀉血といって、悪い血をヒルに吸わせたりした事が民間療法ではあったらしいから、血を吸われたくらいでどうにかなってしまうとも考えられない。


ニキアスにそう告げると半信半疑の表情で返されてしまった。


「神殿と宮殿と塔の中でしか生きていない世間知らずに、よくそんな知識があるな」

「せ、世間知らずではありますが…」


わたしはニキアス等がチスイヒルを知らない事にも驚いた。

(アウロニアには山や湿原が無いからあまり見る機会が無いのかもしれない)


次の瞬間彼の口から皮肉っぽい発言が聞かれてわたしは焦ってしまった。


「…まさか嘘ではあるまいな」

「嘘じゃありません!」

わたしは直ぐにニキアスに訴えた。


「(今は)ニキアス様の信用を失うのが(火炙りになるかもで)一番怖いのに、わたしそんな嘘なんて…」

ほとんど本音がだだ漏れながらわたしが必死でニキアスを見上げると、何故かニキアスは無言でその頬がほんの少し赤い気がする。


(もしかして――やっぱり信じてもらえなかったのかしら?)

ニキアスの反応にわたしはとてつもない不安に襲われた。

お待たせしました。


読んでいただきありがとうございます。

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