表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
嘘つき預言者は敵国の黒仮面将軍に執着される  作者: 花月
1.嘘つき預言者の目覚め
3/255

2 状況把握が難しい ②

お待たせしました…やっと第2話です。

わたしはレオス将軍の黒い仮面をぼーっと見つめた。


(…ちょっと待って)

ゼピウス国の名が出てきたってことは。


(ここって、わたしが読んでいた小説『亡国の皇子』の中ってこと?)

 

ニキアス=レオスは登場人物の中の仇役の将軍で、主人公の従兄弟にあたる男だ。


この小説の主人公はギデオン=マルス王子。


幼い頃、自分の父と母をニキアスの兄ガウディ=レオス現皇帝に弑逆され、王子の座を追われたのだ。


(でもマヤ王女なんて数行だけで…すぐ殺されなかったっけ?)


わたしは首を捻って考えた。


ニキアスが話している内容を聞きながら、この場面が小説のどの部分にあたるんだろうと考えると、ゼピウス国陥落後のある節目に当たる事に気付く。


徐々に状況が飲み込めてきたが、

(...これはいわゆる異世界ほにゃらら…なんだよね?)


社会人でアラサーだったわたしが、数多く読んだ異世界への転生もの。

(…かと言って逃避したい程、現実世界が厭だったわけじゃないんだけれどな)


会社勤めで通勤する毎日に多少の窮屈さは感じていたし、幸せな状況に飛び込めれば『ラッキー』と言いたいところだったけれど。


よりにもよって、数行で死んでしまう――仇役の男の婚約者で、預言者なのに噓つきの傲慢女に転生するとは、ツイていないとしか言いようがない。


(…こんな展開になるんだったら別に来なくても良かったのに)

と心の中でぶつくさ言っていると、

「お前は…話しをきちんと聞いているのか!?マヤ王女」

とうとうニキアスに怒られてしまった。


 ******


ニキアスは目の前の女を見下ろして、思わず怒鳴りつけた。

塔で寝台下から身体を引きだした最初から――この女はどこか様子がおかしかった。


(どこが?)


挙動全てが、である。

なぜかむかしの傲慢さの欠片も見つからない。


あれから大分経った今も、周辺国の噂では彼女の傲岸ぶりは消える事無く聞かれていた。


しかし今の彼女は――うろうろと部屋を歩きまわりながら、ぶつぶつと独り言を呟いたかと思うと、ぴたっと足を止め石のように固まって考え事をする。


その繰り返しだった。


最初は『レダ』神の『神託』でも下りてきたのかと思った。


()()()()()()()()()ったから。


『レダ』神の『預言者』――それは『レダ』神の声を聴く貴重な存在だ。


通常であれば『レダ』神の神殿に預けられ、そこで生活をして生涯を終えるはずなのだが。


幸か不幸か、彼女は王女として生まれてしまった。


貴重な神の『神託』を自らの利権の為に利用したい王と、神殿に入り神の声を厳かに聞くという一見選ばれし者の存在だが、不自由で縛られた生活をしたくない娘。


結局、親子の考えが合致したのだろう。


『神託』は王家に都合のいいように捻じ曲げられ、虚飾を塗りたくられた。


そのことが最終的に神の怒りを買ったのだ。


自然災害や天候不順に因る土地の荒廃。

王家の乱れた浪費と重税。


流石に女神の怒りの『神託』が下り出した時には、マヤ姫も父王に慌てて報告したが時はすでに遅し。

王国のいたるところで起こり始めた綻びは、元に戻す事はできなかったらしい。


その上不吉な神の予言ばかり伝える娘を、とうとうゼピウス王は高い塔に閉じ込めてしまった。


国力が落ち隙をみせれば、虎視眈々と狙う隣国はすぐ攻め入ってきた。


そうして結局――隣国で急成長を遂げ、次々とゼピウス国以外の隣国諸国を征服し続けているアウロニア帝国に、赤子の手を捻るより簡単に陥落してしまった。


長期に渡るゼピウス国の歴史はあっけなく終焉をむかえたのだ。


 *****


ニキウスはマヤ王女を見下ろして、眉根を寄せた。


(それにしても解せない)


何なのだろう?この挙動不審な動きは。

まるで迷子のようだ。


敵国の兵に捕まってしまったという不安のあまり、気でもふれたのか。


(…仕方がない)

とニキアスは嘆息した。


(義兄上には必ず連れて帰る様にと命令されていたが…)


実際には抵抗すれば拘束もやむなし、自分に敵意を持ち攻撃してくれば、斬って捨てるぐらいの気持ちだったニキアスだったのだが。


(こんなに無抵抗の状態では、こちらの名が地に落ちるばかりか、レダ神の怒りを買うかもしれない)


なんといっても彼女はまだ『レダ』神の『預言者』――レダの娘なのだ。


「マヤ王女」

ニキアスは彼女に声をかけた。


「貴女は曲がりなりにも王族の娘だ。自害したいならふさわしい部屋や毒物を用意させよう。大人しく投降するなら、俺の名にかけ無体な真似を兵士らにさせないと保証しよう。アウロニア帝国に連れていかれた後は、どうなるかは分からんが…」


連れ帰れば間違いなく義兄上の愛人にされるだろうが、自分としては王女に対しての丁寧な礼儀を尽くしたつもりだった。


たとえ彼女が、幼い頃のニキウスに忘れられない程の苦痛を与えた相手だったとしても。

読んでいただきありがとうございます。

良ければブックマーク評価いただけますと嬉しいです。


なろうランキング登録中です。

よろしければぽちっとお願いします。

評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ