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嘘つき預言者は敵国の黒仮面将軍に執着される  作者: 花月
3.亡国の皇子
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29 預言の始まり ①

お待たせしました。

この箱型の観測器具は小学生でも工作できる観測器具です。

(知らない方はネットとかで見てみてね)


あとこのエピソードを仕上げている丁度のタイミングで『北アメリカで皆既日食が…』とびっくりです。

(残念ながら日本では見えなかった様ですが)めっちゃタイムリーやんって思っちゃいました。

わたしがアポロニウス初め、第三評議会議員と天文学者達に伝えたピンホールを開けて作る観測器具は長方形の箱型で、わりと大きいしっかりとした紙で出来た軽い物だったが、よく見ると丁寧に作られていた。


元老院の議員等は宴会の料理を堪能し、既に酒に酔っていた者もいたが、『是非窓の開く大広間の真ん中に』と誘われたり声を掛けられて、興味のある者は皆ふら付く足取りで、ピンホールの付いた箱を持って中央へと集まった。


同時に会場の端々では、明り取りの火を点す準備もされている。


「『蝕』の始まりから完全に終わるまでは二時間半かかります。

西から太陽が徐々に欠けていくのですがもうそろそろ始まりそうです」


大広間の真ん中で貴族達が皆一斉に集まっている光景は異様とも言えたが、皆関係なく観測器具の使い方を天文学者が説明をしていた。


「目を傷めてしまいますから、決して直接太陽を見る事はお止め下さい。観測器具をお渡ししましたが、その小さな穴は太陽を見る穴ではございません。穴から入った太陽の光を箱の底の白い紙に映して、形を観測して下さい」


何時の間にか、皇后陛下と皇女達と側妃と思われる高貴そうなチュニックを纏った女性達は、奴隷達と共に壇上の長椅子から下に降りて衛兵に囲まれながら、先程配られた観測器具の説明を受けていた。


しかし姫君から『え~、なんで直に太陽を見ちゃダメなの?』『そうよ~いっつも見ているじゃないの』と説明係に次々に質問が投げられた。


話を中断される度に『長時間太陽の光を直接眺めては目に悪いのですよ』と説明をしなければならず、器具の使用方法までたどり着けないのがなかなか大変そうである。


「完全に太陽が隠れるのは、欠け始めてから一時間15分から30分かかります。どうぞゆっくりとご覧ください」


元老院議員からも次々に説明をする天文学者へと質問が上がっている様である。

「そんなに時間がかかるのか?」

「ぱっと欠けて直ぐ終わるのではないのか?」

「酒を飲んで待つことにするか…」


「陛下はご覧にならなくて宜しいのですか?」

その時、わたしの耳にドロレス執政官の尋ねる様な声が聞こえた。


その声でわたしは陛下の座っている長椅子を見上げた。


(陛下は…広間の真ん中でご覧にならないのかしら)


すでに説明を聞き終えた、皇后様と姫達、多分側妃になられる方々は各々箱型の紙箱を持ってスタンバっている様だ。


ドロレス執政官の声が届かなかったかの様に、陛下は無言でポンポンと紙で出来た観測器具を組んだ膝の上で弾ませている。


いつもの真っ白いチュニックにサンダルと皇帝である紫のトーガをきっちりと纏っているが、長椅子に寄りかかったまま長い脚を持てあまし気味に組んで座っていた。


そして――陛下はわたしを見た。


 *****


騒めく人々の声の中、陛下は唇の動きだけでわたしを呼んだ。


『こちらへ来い』


わたしの心臓が跳ねあがった。


(…陛下に呼ばれたわ)


陛下はそのまま階段下に並ぶ二人の衛兵に声を掛けると、衛兵は頷いてわたしを通す様に横に退いた。


再び陛下にちょいと指先で呼ばれたわたしは、チラリと皇后様の方を見た。

彼女達は『日蝕』の始まりを見ようと集まる人々の輪の中にいる為、こちらは気にしてもいなそうだった。


わたしは小さく頭を下げ、少し早足のまま階段下に立つ衛兵の真横を通り、長椅子の直ぐ真下の段まで上がり、陛下に向かって膝を曲げた。


わたしは面を下げたまま陛下へ小さく声を掛けた。

「…お呼びになられましたか?陛下」


すると陛下のひび割れた声が小さくだがしっかりとわたしの耳に聞こえたのだ。


「…太陽と月が完全に重なったらもう一度余の所へ来い。お前に見せたいものがある」

「は…?」


思わずわたしは陛下の顔を真っ直ぐに見上げてしまった。


陛下の少し離れた大きな目は相変わらず真っ黒で光が無い。

それでいて目を反らす事を許さない――わたしはその闇に引き込まれそうになった。


そしてそのまま呟かれる陛下の低い声は、何か呪文の様にも聞こえた。


「『皆既日食』時…太陽を隠す新月により、ヴェガの力は一瞬この地に満ちる。メサダの力を凌駕する程に――」


「ヴェガ神…?」

(ヴェガ様…?)


意味が分からずわたしは思わず呟いたが、陛下は何も返さずわたしをじっと見下ろした。


(どうして?)

何故今ヴェガ神が関係するの?


(あの優し気なお爺さんの見掛けによらず、ヴェガ様は確かに月を始め…夜・闇・死の象徴でもありそれを司る神でもあるけれど…)


「おお!ご覧ください!…とうとう蝕が始まりましたぞ…!」

第三評議会の誰かの声が響き、わたしは後ろを振り返った。


「皆の場所に戻れ」

次いで気怠そうな陛下の声が聞こえた。


わたしは陛下に小さく頭を下げると、そのまま会場にいる他の人の注意を引かない様に階段を静かに下りた。


(月が完全に隠れるまでに一時間半近くあるわ)

『新月によりヴェガの力は一瞬この地に満ちる。メサダの力を凌駕する程に』


(あれは一体どういう意味だったのかしら?)

陛下は一体わたしに――何を伝えようとしているのだろう。



お待たせしました。m(__)m


読んでいただきありがとうございます。

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