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嘘つき預言者は敵国の黒仮面将軍に執着される  作者: 花月
3.亡国の皇子
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23 式典の出席 ①

大変お待たせしました…(つд⊂)


するとその時部屋の扉をノックする音が聞こえたかと思うと、従者の青年がひょいと顔を覗かせた。


「申し訳ありません、バアル様。次のご予定のお時間になってしまいました。申し訳ありませんが…ご面会の時間をこれ以上伸ばすのは難しいかと…」


「まあ…」

(帰国されたばかりでバアル様もお忙しいに違いないわ)

わたしは『これ以上バアル様のご迷惑になるだろう』と、そそくさと席を立った。


「バアル様…あの、お忙しいのに申し訳ありません。わたくしもう退出させていただきますわ」

「マヤ姫。もし良ければ、私から陛下へお伺いする事も出来るが…」


「…あ、いえ、あの…いいです。大丈夫です、バアル様」

バアル様に気を遣って頂いたが、わたしは慌ててバアル様へ手を振った。


バアル様がそんな事をしたら今まで以上にややこしくなるに違いない。


「あの…わたくしから直接陛下へお訊きしてみますので、あの…何も…何も知らない様に振舞っていただけますでしょうか…」


バアル様はわたしを見て肩をすくめた。

「それは…姫がそれで良いなら、私は構わないが…」


わたしはそのままリラと共に、バアル様の部屋を退出した。

「すみません。今日はご予定が詰まっていらっしゃるのに、お時間を取って頂きありがとうございました」

「…そうか、済まないね。また時間のある時にニキアスの話しも聞こう…とは言え、私はまた出かけてしまうから次回お会いできるのは、また随分後になるとは思うが」

「はい、分かりましたわ。お忙しいと思いますが、どうぞお身体をご自愛ください。道中の御無事をお祈りしています」

「ありがとう、マヤ姫」


バアル様は、白い歯が見えるくらいにっこりと笑ってくれた。


 ******


部屋までの帰り道、歩きながらわたしは一人考え込んでいた。

心配でリラが何回か声を掛けてきたくらいだ。


(一体…どういう事なの?)

わたしが一ヶ月以上掛けて、手紙の遣り取りをしていた相手は…バアル様では無かった。


(本当に手紙のお相手は陛下だったの?)

手紙自体が無くなっているのだから、バアル様にも確認のしようがないけれど。


ひとつだけ救いなのは、バアル様がわたしの言った『手紙の遣り取り』自体を『嘘』だと思わなかったことだ。

何と云っても『嘘つき』の称号を持つわたしの言葉をバアル様に信じて貰えたのは大きい。


けれど、式典前日の大事な夜だと云うのに、わたしは殆ど眠れなかった。


自分の部屋の寝台に横たわりながら、薄暗い光の中掛物の下で、わたしは何度も寝返りを打った。


 *****


式典当日――まだ陽が上らない暗い中、やっとウトウトしてきた所でわたしはリラにたたき起こされた。


「マヤ様、マヤ様…。起きてくださいませ。どうやら今日一日長くなりそうですわ。まず湯あみをして下さいませ」


眠い眼を擦りながらフラフラと歩いてお風呂へと入り、浴槽から上がるといきなり数人の奴隷に囲まれて、バタバタと慌ただしく準備が始まった。


「ええ…?確か式典は、お昼からよね」


(準備するには早すぎない?)

と思っていると、リラが

「宴も一緒に催されるようですから、早めに準備をさせていただきますわ」

と言った。


「え?リラ…式典て日蝕を見るだけじゃなかったの?」


「それが当初は、謁見の間で『皆既日食』を待つという事だったらしいのですが、元老院議員の中で『どうせなら盛大に皆で見よう』という話になったらしく、一緒に盛大な宴も大広間にて催されるようです。

その場には元老院の方々のみならず、皇后様やお子様、側妃様の方々も一緒にご出席されるので…」

「まあ…そうだったのね」


『皆既日食』自体の現象は大分認知されていたし、『神』による『警告』や『怒り』ではない――という事は広まったとは聞いていたのだが。


それでもどちらかと云えば『忌み事』とされ、形式的な式典を行って皆そそくさと過ごすのかと思ったが、本格的に『珍しい天体のショ―』として周知させるつもりらしい。


陛下の前や第三評議会と元老院の集まりに呼ばれた時は、白いチュニックとトーガ、マントだけと制約があったが、『宴』となるともなるとやはり華やかさも求められるらしい。


わたしはいきなり奴隷数人に取り囲まれて、肌に香油を塗り込み、手と足の爪も念入りに磨かれ、鮮やかな赤いマニュキュアを塗る。

そしてその間朝食替わりのフルーツと蜂蜜の入ったパンを齧った。


白粉を顔に叩き、何かの顔料を使った黒いアイラインを引いて口紅を塗る。


そして一際白い…プリーツをふんだんにあしらったチュニックを着て、複雑に編み込んだ髪に白い花と月桂樹の髪飾りをつけ、背丈を補強する為の上げ底のサンダルを履いた。


「姿見を。マヤ様の前へ持って来て頂戴」

リラは出来上がったわたしを満足気に見つめながら、側にいた女奴隷へと命じた。


「とてもお美しいですわ。まさしくレダ神の娘と言ったご様子ですわ、マヤ様」


確かに鏡に映るわたしは、とても華やかで綺麗だった。

背丈も厚底のサンダルでいつもよりもすらりとして見えて、もう少し胸と腰があれば更に完璧だったに違いない。


「ではトーガを纏ったら、白いマントを被って頂いて…会場の方へ向かいましょう、マヤ様」

お待たせしました。m(__)m


読んでいただきありがとうございます。

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