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嘘つき預言者は敵国の黒仮面将軍に執着される  作者: 花月
3.亡国の皇子
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15 怨嗟の声

大変お待たせ致しました。


明けましておめでとうございます。

今年もよろしくお願いします。


ゼピウス国内では、アウロニ帝国への不満と怨嗟の声がかなり高まっていた。


次々と寄せられる報告を聞きながら、ニキアスはゼピウス国に到着してから何度目か数えるのも忘れたため息を付いた。


元ゼピウス国の高官クレメンスと会談をしたが、ニキアス率いる皇軍『ティグリス』軍が帰ってから、アウロニア帝国兵による暴行や略奪が著しく酷くなった様だ。


それは皇軍『レオ』のペトロス=デュカキス将軍率いていた軍隊の、規律を守らない兵らが中心に、無法地帯と言ってよい程の蹂躙を行ったためだったのだ。


農地や畑を理由も無く焼き払うという意味のない事をしたお陰で、貧しい農奴だけでなく、一般の人民まで恐ろしい程の食糧危機に陥ってしまった。


ニキアスは会談を行った会館のある高台から、ゼピウスの首都を見下ろした。


大分前に燃やされた筈の宮殿からは、何故か時折思い出した様に白い煙が立ち上がる。

誰か金目の物を捜して燃え残った建物の後を掘り出しているか、破壊された建築材を火をおこすために燃やしているかだろう。


豊かで優美と言われていた首都ゼピウスの面影は、もう既に無い。


塔の上で燃える宮殿を見ながら座り込んでいた彼女の事だ。

(この光景をマヤが見たら…嘆くだろうな)


ニキアスはアウロニアにいる碧い瞳の恋人の事を考えて、物思いに沈んだ。


 ******


「コルダ国から援助の申し出が…?」

ニキアスはクレメンスに尋ねた。


コルダ国から一時的に『復興の手伝い』をしたいと元ゼピウス国へと申し出があったと、クレメンスはニキアスへ告げた。


先日、ゼピウスの隣国であるコルダ国からアウロニア帝国へと使節団がやって来た。

如何やら彼らは『ゼピウス国から大量の難民がコルダ国に流れているために困っている』と皇帝陛下に直訴したのだ。


難民は一般の村民宅に押し入り、強盗や殺人をするらしい。


国境に関所を置いて兵らが監視をする様にはしているが、地形的にコルダ国には特に障壁になるようなものは無く、住むのに困ったゼピウスの民が、国境を楽々と超えてかの国へと流れ放題になっている。


それを防ぐためにもコルダ国の方で軍隊を出して対処をしたいとの事だった。


しかし『復興の手伝い』とは名ばかりで、そのまま軍隊を引かせずにゼピウス国に居座ってしまえば、アウロニア国の植民地になったゼピウスに武力を聞かせる事も出来る。


簡単に受けては危険なコルダ国からの提案だった。


もちろんガウディ皇帝陛下は拒否をした。


しかしアウロニア帝国は、領土を短期間で急激に拡大したお陰で、一見確立していそうな植民地下での政権の基盤づくりが、なかなか出来ていないジレンマに陥っていた。


アウロニア帝国直下領は、皇帝と優秀な元老院がしっかりと舵取りをして纏めているが、他国への侵略後に植民地化がスムーズにいかないのは、言語と宗教が国々で異なっているからでもあった。

それが現皇帝・ガウディの頭の痛い事でもあった。


 ******


復興作業を着々と進めながら、ニキアスは『皆既日食』の事象を皆に知らしめるため説明や講演会をゼピウス国の各地で行ったが、アウロニア国内と違って反応はいまひとつだった。


戦いに傷ついたゼピウスの民は、数週間後の事象よりも、今目の前の食事にありつけるかどうかの方が、はるかに大事だったのだ。


それを見たニキアスは、帝国へ食糧の援助を早急にする様に早馬を走らせつつ、手持ちの食料や燃料などを各地に配りながら、同時にミケウス=カレと共になるべく多くの人々に知らせるべく各地を飛びまわった。


ニキアス自身だけでなく、副将軍ダナスも説明をする為にゼピウス国内を転々と回りながら(時折サボっている様子もあったが)命令を遂行していた。


そうしてニキアス『皆既日食』の起こる日時が近づいた時、ユリウスがニキアスへと話しておきたい事があると云ってきたのだった。


 *****


ニキアスは、ゼピウス国の会館の一部を執務室として借りて仕事をしていた。

ゼピウスの各地からの連絡が山積みの書類として目の前にある。


部屋の扉をノックする音がして、ユリウスがひょいと顔を覗かせた。


「ニキアス様…お時間が空いた時に是非お話したい事があります」


珍しく深刻そうな表情を浮かべたユリウスに

「どうした?ユリウス、何か急用か?」

「…実はリラ姉から連絡が来まして」


リラはユリウスの年上の従姉で、時に肌を重ねる相手らしい。

恋人の様な立場では無いが、非常に信頼出来る相手で、ユリウスの話だと頭の回転の早い女性らしいのだ。


ニキアスも顔合わせ程度なら、数回会った事がある。


マヤの侍女のポストを担うリラは、時折宮殿内や父親が元老院貴族である立場からの情報を、時にユリウスへと流してくれる。


「どうした、何かあったか?」

ユリウスの表情が気になってニキアスが訊いた。


「実は…大変申し上げにくいのですが…」

ユリウスは話し難そうに言葉を選んで――暫くしてから云った。


「どうやらマヤ様が…陛下の御寝所にお呼ばれになった様です」

お待たせしました。m(__)m


読んでいただきありがとうございます。

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