1 『亡国の皇子』
第三部始まります。どうぞよろしくお願いします。
『亡国の皇子』とは――
無数の星々の様な人と神を鍋の中のスープの様にかき混ぜた『運命の書』だ。
ザリア大陸に七兄弟神が生まれ栄える前からずっと起こるべくして起こる様に定められた『混沌からの秩序へと移行する物語』だった。
『秩序』――それは兄弟神とは全く別の新しい神の誕生の物語だ。
ある帝国滅亡後、神とは異なる力を持つ異能の男児が誕生する。
その者は世界を渡り歩き各地でまるで神の様な奇跡を見せて人々に崇められる存在になっていく。
しかもその選ばれた子どもは人の中で生まれるのだ。
そしてそれをきっかけとして、七兄弟神教の信仰は徐々に衰退の一途をたどる。
七兄弟神がそれを初めて聞いた時、神々の皆が気が触れた様に『自分達への信仰が廃れてしまうなんて信じない』と繰り返した。
まさか自分達の存在が――神が『混沌である』とみなされるなんて。
ザリア大陸の神々はこの運命を大人しく受け入れる事を拒否した。
しかし終わりを司るヴェガ神だけは、それを受け入れた。
自分達の果ての姿を己の力で知ったヴェガ神は、この『亡国の皇子』に従う事に決めた。
例え自分の兄弟の神々が反対したとしても。
『男児の誕生など許さない』とヴェガ神以外の神は、皆『亡国の皇子』を否定した。
そして同時に『帝国滅亡後に自分の皇子が立っていればいい』と考えた神々は、神自身の操り人形になる最後の皇子を探し始めた。
ヴェガ神はメサダとコダの兄弟が『亡国の皇子』を『メサダの書』に上書きする為に千年以上前から動いているのに気が付いた。
そしてその動きに対抗し、自分の妻も何か秘策を画策している事も。
そして――子であるメサダ神はギデオン王子を使い、妻のレダ神は自分の預言者を利用してニキアスを膝まづかせようとしている事もすでに知っていたが、父であるヴェガ神はそれを止める気は無かった。
『終末』へ向かって必死で足掻き続ける事が、更なる『混沌』を生み出していく事に気付かない彼らに最早自分の言葉は届かない。
『それが亡国の皇子の流れの一部なのだ』という言葉すらも。
自分に連なる者が、この神々が支配する土地の最後の帝国の覇者と知ったヴェガ神は、帝国の中心が立てられるであろう位置に自分の力が及ぶ地下神殿を造った。
そしてヴェガ神は分っていた。
帝国終焉最後の地に立つ子供こそが選ばれた人間。
その子こそが『亡国の皇子』だという事を。
お待たせしました。m(__)m
読んでいただきありがとうございます。
ブックマーク・評価いつもありがとうございます!
なろう勝手にランキング登録中です。
よろしければ下記のバナーよりぽちっとお願いします。




