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嘘つき預言者は敵国の黒仮面将軍に執着される  作者: 花月
2.『vice versa』アウロニア帝国編
162/260

75 (幕間) 引き金 ① 

二部を〆るにあたって幾つかストーリを投下していきます。



「…可愛い義弟だとは思ってはいる、が…」

時折少し相手する程度の義弟を思い出し、ガウディは独り言を呟いた。


そのままヒョロっとした長身を窮屈そうに屈めながら立ち上がると、神殿から借りた見すぼらしい馬車から降りる。


(予定では二、三日で帰るつもりだったが…)

結局ここに戻るまでに五日近く掛かってしまった。


ガウディは自分に課せられたという役割を既に重荷に感じていた。



(…本当に()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()?)



父――大公の飲酒と職務の放棄は特に最近酷過ぎる。


実の兄のアウロニア王にですら既に『目に余る』と思われてそうだ。


とは言えアウロニア王の執政も大概で、有力貴族の汚職や王家との癒着は酷いものだった。


キラリと左の耳介に隠れた赤い宝石が光る。


(まぁ…神官の話など本当かどうかは当てにならぬな)

とガウディは思っていた。


「…思っていたよりも遅くなってしまったな」


寒さで白くなる息を吐きながら、防寒用のマントを細長い身体にぐっと引き寄せた。


(母上に『遅れる』と連絡できなかったから心配なさっているだろう)

と一瞬心配になったが

(…いや。時間の概念の余り無い方だから、俺が長く居なくても気が付かないかもしれない)

と思い直して大公宅への僅かな距離の公道をてくてくと歩く。


自宅の邸の入口に到着すると本宅の入口を警備する兵が二人並んで立っている。


「ガ、ガウディ様…今まで一体何処へ!?ずっと捜していたんですよ!?」


ガウディの姿を見つけるやいなや、何故か血相を変えてガウディの元に詰め寄った。


不思議に思ったガウディは

「一体とはなんだ?出かける事は母上には話してあるが」


「…もしやご存じ無いのですか!?」

「その…お母上様が、奥様が大変な事になりました。ガウディ様がご不在の間に…」


「大変?それは…一体どういう事だ!?」


珍しく表情を変えるガウディを見た衛兵等は、顔を見合わせ青ざめたまま口ごもってしまった。


******************


(――母上は何処だ?)

いつも迎えに出てくる母の姿が見当たらないのにガウディは直ぐに気が付いた。


邸内の雰囲気は皆が無言でありながら、何やらバタバタと物音だけがしていて騒がしい。


外泊中の間に家財やそこかしこの壁に白い布が掛けられている。

窓には植物のリースが掛けてあった。


(あれは…魔除けの植物だ)

本で見た知識でガウディは知っていた。


(あの植物を使う時とは…)

死者の穢れを家の中に入れない目的で使うものだ。


そして邸内中に穢れを払う様にかけてある白い布と、窓に掛かる魔除けの葉のリースの意味とは。


(…この様子はまるで――)

ガウディの中に云い知れぬ不安が湧き上がって来た。


予測不可能な行動をしがちな母の事だから、最初はまた何かしらの大変な事をしでかしてしまったかと思っていたのだが。


「答えよ、母上は何処にいる?」

「…申し訳ありません。自分達からはとてもお話できません」


『大公閣下から直接お聞きください』と言って足早に歩く衛兵らに連れられ、嫌な予感を抱えたまま、ガウディは本宅の父である大公の書斎まで案内された。


(…遊び三昧で酔っぱらいつも本宅には不在の父親まで居るとは)


ガウディは、珍しく書斎に座る父親の様子が何時もと違う事に気が付いた。


「…何処に行っていた、ガウディ。この役立たずめ」


書斎の机の上にもワインの瓶とグラスは置いてある。


父の言葉がいつもより聞き取りやすい。


酔ってはいるが、比較的呂律が回るようだった。

とは言え泥酔はしていないの程度だが、代わりにいつも以上に不機嫌な様子だ。


「申し訳ありません。少し出かけておりました。母上にはお伝えして…」


すると、ガウディの話を遮る様にいきなり父は告げた。



「――その母は死んだぞ。お前が居なかった間に」


またガウディの左耳の赤い石がキラリと光った。


お待たせしました。m(__)m


読んでいただきありがとうございます。

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