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嘘つき預言者は敵国の黒仮面将軍に執着される  作者: 花月
2.『vice versa』アウロニア帝国編
143/260

56 兄と弟 ②

お待たせしました。

近親相姦・BL ・15R・暴力表現が入ります。


嫌な方お気つけ下さい。



「ニキアス、面を上げよ」


頭上からパラパラと降ってくるガウディの身体から滴り落ちた水滴は、浴槽の湯の温度を保っていてまだ温かい。


「……」


ニキアスは浴室の床を向いたまま、顔を上げなかった。



いや、上げられなかったのだ。


部屋の蒸し暑さが原因では無い汗が、今度はニキアスの背中を伝う。


「ニキアス」

「…お許しください。俺は…」


「何の許しを請うている?」

「……」


「ニキアス。余は同じ事を言うのを嫌う。

お前は知っているな?」


ひび割れたガウディの命令する声に、無理に背中を押されたかの様にゆっくりニキアスは顔を上げた。



そして――ニキアスは目の前の光景に思わず目を見開いた。


(そんな…)

さぁっとニキアス自身の顔から血の気が引いていく。



ガウディは無表情のままニキアスの目の前に立って見下ろしていた。


湯に長く浸かっていた為か、長身で痩身のガウディの裸体からは蒸気が薄っすらと立ち上っていた。


その身体にはニキアスの様に鍛えた筋肉では無く、細い筋肉が無駄なく付いた細い強靭な鞭のような肢体だった。



しかしその中央から見えるモノは。


嫌が応でも自分の目の前の距離で見えている()()は。


(兄上…)

ニキアスは幼い頃から刷り込まれた恐怖と緊張で、自分の口の中がからからに乾いていくのを感じた。



(――勃っている)



『いや、まさか今更…()()はあるまい』

何故自分はそう思ってしまったのか。


兄上は決して俺を自由にさせるつもりなど無いのに。


*****************



()()は湯から上がったばかりのためか濡れそぼり、突き上げる様に怒張して立っていた。


ただの少年だったニキアスを苦痛と快楽の闇に堕とし、蹂躙し尽くしたモノだ。


ニキアスが思わず()()から目線を反らせた瞬間、ガウディは()()を指さし温度の無い声で命令をした。



「――咥えろニキアス。いつもの様に」



その言葉を聞いた瞬間ニキアスは『皇帝陛下への礼儀』も忘れ、思わずガウディの顔を直接仰いでしまった。


ニキアスを見下ろすガウディは、かくりと小首を傾げそのまま口角を上げた薄笑いをしている。


その光の無い真っ黒い両目は、三日月の様に細められていた。



()()はお前にずっと会いたがっていたぞ」



ひび割れたガウディの囁き声は、まるで『お前に逃げ場は無い』と言っている様にも聞こえた。


****************



「ニキアス」


十分に立ち上がった()()を見せつけるかの様にガウディは跪いたニキアスへと一歩前へと近づいた。


「――…」

ニキアスは青ざめたまま、その首を微かに振った。


そして自分のトーガや衣服が床を流れる湯で濡れるのも構わず、そのままがばっと浴室の床に自分の頭を付けて平服した。



「お…お許しください、兄上。俺にはもう出来…ません」



次の瞬間――ニキアスは横っ面に衝撃を受けた。


皇帝ガウディが素足で思い切りニキアスを蹴ったのだ。


ニキアスは床に横向きに倒れそうになるのを、自らの手で支えた。


パタ…と赤い液体が床に一滴落ちる。


口腔内で血の味がするのは、今のガウディの蹴りの衝撃で中を切ったからに違いない。


ガウディはニキアスの口の端から落ちる血を見てふっと笑った。


そしてニキアスの方へ少し屈むと、ガウディは顔を寄せニキアスを正面から見た。


「出来ない?それは何故だ?」

「それは…」


「あの女が原因か?」

「女…」


言葉に詰まるニキアスへガウディは質問を続けた。


「…マヤといったな、確か。あのゼピウスから来たレダ神の預言者」

「……」


「成程。お前はあの女に本当に入れ上げているという訳だ」


ニキアスは答えられず、無言のままガウディを見つめ返した。


するとガウディは、両手でニキアスの髪を掴んで、そのままぐっと頭を抱え上げる様に持ち上げた。


「…っ!」


いきなり髪を掴まれた様な形になったニキアスは、思わず声を上げ――られなかった。


ガウディがそのまま深く唇を重ねてきたからだ。


「!…あにっ…」


抗議する為に開いた口の隙間から、ガウディの舌はニキアスの口腔へ狡猾な蛇の様に入り込んだ。


「…っん、兄うえ…」


ガウディはニキアスの髪を掴んだまま、幼い頃に受けた様な執拗なキスを繰り返した。


「っ…」

口腔内の傷をなぞるざらついた舌に思わず声を上げると、ガウディは目を細めた。


ガウディの舌による蹂躙は留まる事無く、抵抗しないニキアスの舌は吸い上げられ、歯列から口腔内までガウディのそれに犯されていく。


唾液が口腔内の血と混ざりながら糸の様に口の端から滴り落ちた。



力任せにガウディを振り払って拒否すれば、今のニキアスなら簡単にガウディの腕から逃れられる。


しかし、もしそうしたら

(マヤは一体どうなる?)


『あの女が原因か?』

『マヤと言ったか、あのゼピウスから来たレダ神の預言者』


(兄上は俺の急所を知っている)


ニキアスの舌を貪るガウディの一方的なキスを受けながら、ニキアスはふと気が付いた。


顔を傾けたガウディの左の耳介――ひだの内側だが、小さい頃から見た事のある赤い宝石が小さな星が瞬く様に光っている。


(何故光っているのだろう)


ニキアスは不可解な石をじっと見つめた。


お待たせしました。m(__)m


読んでいただきありがとうございます。

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