49 執着のかたち ①
結構がっつり(?)R15になります。
イヤな方お気をつけください。
「教えてくれ。ゼピウスからさらってきた美しい王女はまだ俺を愛しているかを」
ニキアスは悪戯っぽい表情で、魅惑的な笑顔で笑った。
「ニキアス…」
「驚かせてすまないマヤ…しかし、そんな顔も愛らしいな」
ニキアスはわたしの顎を軽く摘まみ上を向かせた。
わたしはニキアスを見上げた。
美しい形のグレーの瞳は濃い長い睫毛に彩られていて、その美しさに思わず、ぼうっと魅入ってしまう。
面布を外すのがもう当たり前の様になった顔は、彫像の様に整っていて、左目の痣の跡は今は見る度に薄れている。
それは、もう美しい顔を損なうものでは無かった。
「…会いたかった」
ニキアスが小さく呟いた。
その言葉を聞いて『…わたしも』と言おうとした瞬間、彼はわたしの額にちゅと軽くキスを落とした。
「マヤ…質問の答えは?」
ニキアスの甘い微笑みに思わず目を奪われたわたしは、はっと気づいた。
「も、もちろん(わたくしも)ですわ」
とわたしは慌てて答えた。
今度はニキアスは瞼に僅かに唇を落とした。
「勿論…何だ?」
「……あ…」
『愛してる』と言うのが急に恥ずかしくなったわたしは、口ごもってしまった。
ニキアスの両手がわたしの肩に置かれるのを感じると同時に、わたしの顔の横で彼の声がした。
「さぁ、答えてくれ預言者よ。彼女はまだ俺を愛する人と呼んでくれるだろうか」
低く艶のある声で囁きながら、わたしの耳朶をニキアスは少しずつ唇で食んでいく。
「あ…そんな…ニキアス…意地悪ですわ」
「意地悪をしているのはお前の方だろう?」
吐息混じりの声でようやく答えるわたしを、ニキアスはぎゅっと逞しい腕で抱き締めた。
「あんな学者の男に気安く触らせるなど。
俺は嫉妬で頭がおかしくなりそうだったのに」
わたしはニキアスの言葉に驚いて思わず云ってしまった。
「…や、やきもちを妬いたの?ニキアスが?」
(あの…ニキアスが?)
「そうだ。満足か?」
「ま、満足なんて…」
「アウロニア帝国ティグリス軍将軍ニキアス=レオスを嫉妬させた罪は重いぞ、マヤ王女」
そう言うなりニキアスはわたしをひょいと横抱きにして、そのままわたしの寝室のある方へ歩き始めた。
わたしは慌てて云った。
「待って、ニキアス…あの、リラが…」
(戻ってくるかもしれないのに)
「…侍女はしばらく帰ってこない」
ニキアスはわたしの考えを読んだ様に、少し意地悪に笑った。
「俺の恋人にしっかりと俺の気持ちを分かってもらうために、しばし席を外してもらった」
「…わ、分かってもらう…?」
「そうだ」
ニキアスはそのまま寝室へと入ると、わたしの身体を寝台にゆっくりと降ろした。
そしてどこまでも甘く――けれど獰猛に笑った。
「ゼピウスからさらってきた王女は、もう俺のものだと言うことを」
******
ニキアスはわたしに何度か軽くキスした。
そのまま親指で軽くわたしの唇を撫でる。
「マヤ…口を開けろ」
言われるがまま薄く開けたわたしの唇の間をニキアスの舌が割り入ってきた。
緩く歯列をなぞってから一気に入った熱い舌がわたしのを捉える。
「んぅ…」
ニキアスがわたしの舌を吸っては擦って、巻き付けてまた吸い上げる。
口腔内を熱い舌で蹂躙されて、わたしは息が出来なくなった。
唾液が口の端から落ちて、息が切れてしまう。
「んぅ…ふ…ぁ…」
「呆けている表情も可愛いな、マヤ…」
(ニキアスってこんな感じだったかしら…?)
ニキアスの行動に少し違和感を覚えたけれど、わたしの思考は追いつかなかった。
怒涛の勢いで繰り返されるディープキスに息が出来なくなり、わたしの頭は酸欠の状態の様になっっていく。
「どうした?マヤ、不思議そうな顔をしている」
またもわたしの考えを読んだかの様に、ニキアスが微かに微笑んだ。
緩くわたしの身体に手を沿わせ、そのままわたしが着ていたチュニックを丁寧に脱がせ始める。
「お前がいけない…今度裏切られたら、俺は狂うと言った筈だろう?」
わたしははっと目を見開いた。
(そうよ。確かにマヤが初めてニキアスに捧げた夜に言っていたわ)
『けれど覚えていてほしい。次にお前に拒まれたら俺は壊れるかもしれない』
「ニキアス…わたしは…」
(裏切ってなんかいないわ)
と云おうとして半身を起こすと、その勢いでチュニックがはらりとはだけてしまった。
慌てて顕わになった胸元を隠そうとすると、ニキアスの手で押さえて止められてしまった。
「駄目だ。隠すな」
わたしは思わすニキアスの顔を見た。
ニキアスは美しく微笑んで、わたしの耳元で優しく囁いた。
「マヤ…分かっている。お前には全くの落ち度がない事も。
あのアポロニウスという学者の男が、勝手にお前に懐いているだけだ。そうなのだろう?」
「ニ、ニキアス、怒っているの?でも彼は…」
「怒ってはいない、まだな」
「お…怒っているじゃない…」
「あの男の話など…今はどうでも良い。肝心なのはお前の気持ちと態度だ」
*****
ニキアスはわたしの脚の間に手を差し入れると、ゆっくりと膝を割った。
そのまま彼の手は優しくわたしの内腿を撫で上げていく。
同時にわたしの首筋に唇と舌を這わせ、時おり音を立てて吸っていきながら、わたしの身体をまた寝台に横たわらせた。
するとニキアスはふっと笑って、いきなり裸の胸の先端を指先で軽く弾いた。
「ん、あ…っ!」
「可愛い乳首はもう反応しているな」
『すっかり固くなっている』とニキアスは薄っすら笑って
「では下はどうだ?俺の事を欲しがっているか確かめてみよう」
と言って、いきなりわたしの両足を揃えて上へ持ち上げる。
「きゃ…、ま、待って…」
ニキアスはそのままわたしの露わになった場所に目をやった。
頼りない下着をずるっと横にずらし、いきなり敏感な場所へと舌を這わせはじめた。
「ここもすっかり潤んでいる」
「あ、や、は…恥ずかしい。止めて、ニキアス」
腰を動かし舌の動きから逃れようとするわたしの身体をニキアスはぎゅっと押さえた。
「あ、ふぁっ…」
そのまま乳房全部を大きな手で揉み上げられながら、同時に胸の先端を上に伸ばしたニキアスの指で軽く摘ままれた。
胸の刺激と温かい舌が容赦無く抜き差しされる快感と、そして羞恥がごちゃ混ぜになって、あっと云う間にわたしは絶頂に連れていかれてしまった。
びくびくと足を痙攣させるわたしをニキアスは冷静な顔で見下ろした。
「まだだぞ、マヤ。まだ足りない」
「…ニキアス…待って…」
ニキアスは呆けたままのわたしに、また深く唇を重ねて、舌を絡めた。
さっきの舌の刺激で敏感になった場所を、ニキアスに執拗に指で擦り上げると、直ぐに快楽の熱がじんわりと腰に灯るのを感じてしまう。
「ダメ…んっ…んうっ!…」
快楽に達した瞬間、唸る様な声で背中を仰け反らせるわたしを見て、ニキアスはうっすら笑って囁いた。
「レダ神の預言者マヤ王女、忘れるな。お前は俺のものだとレダ神の前で誓った事を。そして俺は…お前のものだ」
涙目で見上げたわたしを見降ろして、ニキアスはうっとりと言った。
「お前が俺の与える快楽に溺れ『俺で無ければ駄目だ』と、『俺が欲しい』と懇願するまで今日は許さない」




