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嘘つき預言者は敵国の黒仮面将軍に執着される  作者: 花月
2.『vice versa』アウロニア帝国編
135/260

48 レダ神の預言者との面会 ③

早めに上がりましたので投稿します。よろしくお願いします。



「それでは…これで失礼いたします」


預言者の部屋の入口で、わたしは廊下に出て二人を見送った。



わたしの作った羊皮紙のカードとピンホールの道具の作り方のメモを持ったアポロニウスは、わたしへと深々と頭を下げた。


「マヤ様には色々と教えて頂いて…」

と云うと、わたしをじっと見つめて少し顔を赤らめた。


そしていきなりさっとわたしの手を取り、そのまま両手でぎゅっと握った。


「この計画が少しでも上手くいく様に、僕等天文学者は全力でお手伝いさせていただきます。

そしてこの手柄が必ず…マヤ様のお陰だと広めてみせます」


わたしは熱を帯びて言うアポロニウスの口調に少し気圧されながらも

「あ…ありがとう。明日陛下への説明を頑張って下さいね」

とようやく返した。


少し離れた場所で立つニキアスにちらり視線を移すと、彼は無言のまま、ほんの少しそっぽを向いている。


そんな様子のニキアスを見ると、仕事中とは言えわたしは気になって落ち着かなかった。


(ああもう…今日、少しでも二人きりで話す時間が取れれば)

そうすれば、ニキアスの不機嫌の理由もわかるのに。


わたしは心の中で大きくため息をついた。


「…お二人共、今日はお疲れ様です。わざわざお訪ね頂き、ありがとうございました」

わたしは礼をして歩く二人を見送ってから、自分の部屋の中へと戻った。


*****************


「ねえ、リラ…ニキアスが何故最初あんなに不機嫌だったのか分かる?」


部屋の扉を閉めた後、わたしはリラへと尋ねた。


リラは一瞬口ごもったが、わたくしも良く分かりませんが…と前置きした上で、


「アポロニウス様がお仰っていたのは、『ニキアス様がマヤ様の手柄を横取する様な事を言った』と…」


「ニキアスが…?」

(そんな事をニキアスが自ら言ったりはしないと思うけれど)


けれど…そうだとしたら。


(ハルケ山の土砂崩れの回避もニキアス自身の手柄になっていた事になるのだけど)


いや。

そうなっていた筈だ。


それを含めたゼピウス攻略戦の評価だったのだから。


(……でも預言者なんてそんな立場(もの)よね)

とわたしは思いなおした。


神の言葉を伝える貴重な存在ではあっても、実際の世界では何の力も持たないのだから。


「そうだったの…アポロニウスは、それを気にしてくれたのね」


『皆既日食』がいわゆる『国家の大事』の様な扱いにならなければ、今回の案が自分の手柄になる ならないははっきり言ってどうでも良い、と言うかわたしは気にならない。


けれど

(いったいいつになったらニキアスに会える機会があるのかしら)


お互いの立場や状況を考えればなかなか堂々と会えないのは仕方が無いとは分かっていたけれど。


(…またニキアスに会いたい)

やっぱり実際に会って姿を見ると駄目だわ。


会ってあの腕で抱きしめてもらいたかった。

不安になる事など無いと言ってもらいたかった。



******************



わたしはため息をついた。

(気分を変えよう)


日の光がちらちらと輝く窓の外を覗きながら、リラに尋ねる。


「リラ…今日来られるお客様はおしまいかしら?」

リラは応接室の大理石のテーブルの片付けを手早く奴隷と共にしている。


「いえ、先ほどもうひと方、追加で来られるとの事でした」

「まあ、そうなの?」

「はい。お聞きしたい事があるとの事でしたが…」

「分かったわ。このまま待っているわね」


わたしは頷きながら

(預言者とは思っていたよりも、気を使う仕事なんだわ)

と考えていた。


『神託』の内容や解像、解析度はその人の能力による物はあるけれど、それをどうやって他人に告げるかで、かなり周囲の対応は変わる。


『優秀な預言者』とはそこの立ち回りもしっかりしている人なのだ。


(きっとどこの世界でも同じよね)


その時、コンコンと控え室の部屋の扉を軽く叩く音がした。


(次の方かしら?)


しばらくしてから、また扉をノックする音が響く。

「……」


(あら?リラはいないのかしら)


そういえば片付けに出払ったかの様にリラと奴隷達の姿が部屋からすっかり消えている。


「…はい? おりますわ。どうぞ」

とわたしは答えたが、そのまま反応がない。


するとまた、コンコンと叩く音がする。


仕方がなくわたしはおそるおそる扉を開けた。


そこには――なんとさっき帰ったとばかり思っていたニキアスが立っていた。


「ニキアス…!」


「急で申し訳ない」


『アポロニウスは?』

とわたしが尋ねようとした瞬間、扉の隙間から長身の身体を滑らせる様に、するりとニキアスは部屋の中に入ってきた。


「ニキアス、どうして…」


「レダ伸の預言者殿に是非お訊きしたくて戻ってきた」


そしてそのままこれ以上は無い程、鮮やかに魅惑的に笑った。


「教えてくれ。ゼピウスからさらってきた美しい王女はまだ俺を愛しているかを」



お待たせしました。m(__)m。


読んでいただきありがとうございます。

ブックマーク・評価いつもありがとうございます!


次回は16日までには上げますが多分R15になります。

嫌な方はお気をつけください


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