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嘘つき預言者は敵国の黒仮面将軍に執着される  作者: 花月
2.『vice versa』アウロニア帝国編
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47 レダ神の預言者との面会 ②



預言者(わたし)の部屋――の応接室のベンチへと大人しく二人は座った。


もう言い争いはしなかったが、空気はどことなく険悪なままだ。


おもてなしの軽いワインも準備してはいたが、ニキアスとアポロニウスから丁寧に断わられたので、リラと下働きの奴隷達はお茶(大麦を焙煎した麦茶に近いもの)とフルーツを大理石のテーブルの上に並べた。


お茶を一口飲むと、ニキアスがおもむろに口を開いた。


「…実はレダ神の預言者殿に、先日提案した『皆既日食を見るための装置』の作り方をご指南頂きたい」


どことなくよそよそしく堅苦しい口調だ。


アポロ二ウスはそんなニキアスの様子をちらりと見て、続けてわたしへと伝えた。


「皆既日食を『予測できる天体のショー』として皆に周知しようという案が採用になりました。

この――ニキアス将軍が音頭を取られる事になりましたのでマヤ様にご報告いたします」


(そうなのね…)

わたしは軽く頷いた。


ニキアスはわたしの方へ向き直ると

「先日の元老院で君が出した案が、一番混乱が少なく民衆へ伝えてもまずまず受け入れられるものだろうという結論に至った」

あの陛下が云々の提案で無い方だ、と続けて言った。


わたしは頷いた。


「そうですね。確かに『陛下が~』の件のものは無理があったかとは思います」


「…それで、明日陛下に案を上申するので、その『皆既日食を見る装置』を一緒に提出し説明したいのだ。作り方を説明をして頂けるか?」


(ニキアス達が陛下に報告するのね)

「装置と云うほど大掛かりなものではありませんが…承知いたしました」



*************



「まず、直接太陽の光を見てはいけないという事をお伝えしておきます。その上で…」


わたしはリラを振り返ってある物を頼んだ。

「ええとリラ、キリを持ってきてちょうだい」


「キリで…ございますか?」

「そう。穴を開ける道具のキリよ」

「わ、分かりました。マヤ様」


リラが慌てて部屋を出て探しに行っている間に、わたしは隣の自室へと歩いて机の上に置いてある白い紙を探した。


作るのに適しているのは、なるべく厚みがある紙だ。


でないと、陽の光が紙に透けてしまう。


わたしは厚みのある羊皮紙を探し出すと、二つ折りにしてしっかりと合わせてカード状にした。


リラが持ってきたキリを受け取り、小さな穴を開ける。


そしてそれを二人に見せた。

「――できました」


「……これだけか?」


「これだけです」

「…申し訳ない。見せてくれるか?」


言われたままわたしはカードをニキアスへと手渡した。


ニキアスは受け取ると、半分に折った小さな穴付きの羊皮紙をまじまじと見つめた。


「……これで太陽を見るのか?」

怪訝な顔でニキアスはわたしへと尋ねた。


「はい。直接覗いてしまうと、太陽が消えていく(日蝕の)間も太陽光で目を傷めてしまう危険性があります。ですから直接覗くのではなく、こうやって…」


わたしは窓際に立ち、太陽に背を向けた状態で穴の開いたカードを日光に翳した。


そしてその穴から映る小さく黒い影を、カードを持っていない手の平に映して言った。

「…これで欠ける太陽の影を見るのです。ここに白い紙があると良く映って見やすいですわ」


ニキアスとアポロニウスを振り返ると、二人共ぽかんとしてわたしを見つめていた。


「そんなモノで?……」


「もうひとつは先程のピンホールで見る方法を細長い筒で作る道具もあります」

小学生の夏休みの宿題で作った事もあるから、わたしはしっかりと覚えていた。


筒や箱を使う方法だが、同じ様にピンホールを開けて道具を作ってみせた。


それも併せて二人へと作り方を説明をする。


ニキアスは益々ぽかんとし、反対にアポロニウスは理解した様に頷いた。


「成程…直接太陽を見ない様にしながらも、観察するための道具ですね」


わたしは続けて説明をしていった。


「あとは…鏡に映した太陽を直接見ずに壁などに映して見る方法もありますわ」


****************


「――ありがとうございます、マヤ様。

少なくともカードなら一般市民にも配れそうです。

それに…観察道具もこんなに簡単につくれるなら、あと三か月もあれば少なくとも貴族の分は作って確保できそうですね」


アポロニウスは、にこにこと笑顔でわたしに言った。


ニキアスはわたしの作ったカードを持ち上げて、じっと穴の開いたそれを見つめていた。


「マヤ…いや、レダ神の預言者殿に今一度伺いたい。太陽の光についてや日蝕を見る知識を何処で手に入れた?」


美しいグレーの瞳にわたしの話を嘘だと疑う色は無いものの、わたしを真っ直ぐに見て尋ねてきた。

「…レダの神殿か?それともゼピウス国の秘儀か?」


ニキアスの表情を見て、わたしは不安になって訊いた。


「…わたしの言葉をお疑いになっておりますか?」


「いや…疑ってなどいない」


ニキアスは半分に折った羊皮紙を大理石のテーブルにそっと置くと、首をゆっくりと振った。


「ただ…不思議で仕方が無いのだ。能力の著しく高い預言者とは言え、君ばかりが何故こうも…」


早く核心(答え)にたどり着くのか。



(ああ…またニキアスに色々怪しまれてしまったかも…)

ニキアスがそう考えるのも仕方が無いと思いつつも、わたしはようやく答えた。


「…以前もお答えしました。『神託』と『未来視』でございます」


ニキアスはわたしをまた無言でじっと見つめた。


「さすがレダ神の預言者殿として最高峰のお方ですね。素晴らしいです」


そのわたしの――云わば口から出まかせの言葉で全て説明がついた様に、アポロニウスだけは感嘆して頷いていた。


お待たせしました。m(__)m


読んでいただきありがとうございます。

ブックマーク・評価いつもありがとうございます!


次回は8月16日になります。(早く上げられれば早めにあげます)


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