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嘘つき預言者は敵国の黒仮面将軍に執着される  作者: 花月
2.『vice versa』アウロニア帝国編
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39 消える太陽 ③



「後にメサダ神の神殿に神託が降りているか確認し、正確な日時の確定としますので、是非レダ神の預言者殿にも特別に出席して頂きたい」


一瞬わたしは、クイントス=ドルシラの言っている意味が分からなかった。


「………え?」

ぽかんとしたまま、わたしは慌てて彼に尋ねた。


「ごめんなさい。もう一度…」




「元老院会議に、レダの預言者殿も出て頂きたいのです」


クイントス=ドルシラはわたしの顔を真っ直ぐ見て、もう一度繰り返した。


(元老院に出席するってこと…?)


わたしは口ごもりながらドルシラに尋ねた。

「で、でもわたしはこの国の預言者になったとはいえ、ゼピウス国の人間ですし…」


「あのですねー…」

わたし達二人のやり取りを聞いていたアポロニウスは、ガシガシと髪を掻きながら言いにくそうに言った。


「貴女はもう王女の身分では無くなりましたし、ゼピウスはもう我がアウロニア帝国の属国ですよ」


「その通りです」

ドルシラは深く頷いた。


「ゼピウスはいずれ植民市として扱われるでしょう。原則で言えば貴女もその一員ですからアウロニアの市民と同権は与えられます。しかし、今回は…」



「アウロニア帝国市民では無く、第三評議会の補佐として陛下と執政官から許可が下りました。

もちろん貴女だけでなくコダ神の預言者殿も呼んでおります」


「元老院にわざわざ…?」


「そうです。貴女の日蝕の見解と、太陽神であるメサダ神の神託が合致するのか()()()()()をする必要があります」


ドルシラの言葉に、自分の顔からすうっと血の気が引くのを感じた。


(答え合わせって…どういう意味?)


クイントス=ドルシラは、そんなわたしの顔を見ながら話を続けた。


「貴女の言った通り()()であるなら…事前に計算でわかるものなら、私たちはこの『太陽が消える』現象を恐れずに済むという訳です」


やっとわたしはドルシラが言っている意味を理解した。


「…つまりわたしとフィロン様は元老院の方達の前で試される…という事ですね」


「その通りです。レダの預言者殿」

クイントス=ドルシラはほんの少し微笑んでから、あっさりと言った。


「しかし貴女の方が、コダの預言者殿よりもずっと分が悪いと思っていて下さい」



**************



次の日――わたしはリラと共に元老院の開かれるホールの方へと足を進めた。



(ああ緊張するわ…)

わたしは昨日のクイントス=ドルシラの言葉を思い出していた。


『第三委員会は飽くまで預言を正しいものとして検証する機関です。

もし間違っていた場合の判断は――元老院にお任せしています』


今日もわたしは足首までの長く白いチュニックを着ている。


髪を編み込んでアップにし、白いフード付きの長いマントを羽織った。

顔が見えない様にするのは顔バレ防止の為らしいから、深くフードも被っておく。


(…緊張で昨夜はほとんど眠れなかった)


会議自体は昼過ぎなのだが、朝から緊張し過ぎで気持ちが悪い。

そのせいで朝食も昼食もほとんど食べられなかった。


何といっても、多くの元老院議員の前で晒し者になる可能性があるからだ。


何度思い返しても小説『亡国の皇子』内で『皆既日食は何月何日に起こる』とまでは書いていない筈だった。


(それを元老院の議員達の前で答え合わせのお披露目ってエグいわ)


もし太陽神メサダ神の神託とアポロニウスが出した計算の日付が大きく異なっていたら、わたしの発言(神託)の信憑性はかなり減るだろう。


可能性は低いけれど『皆既日食自体が無い』となれば、わたしだけでなくフィロンの預言自体も信じてもらえなくなる。




「…大丈夫ですか?マヤ様。頑張ってください」


リラから励ましの言葉をもらったわたしは力なく頷いた。

「ええ…上手く行く様に祈ってて」


「きっと上手くいきますわ」

リラは大きく頷いてわたしの手を両手でぎゅっと握った。


***************



元老院の開かれるホール(アウグルという名前らしい)の前に緑色のトーガを纏った第三委員会のメンバーが集結している。


クイントス=ドルシラとアポロニウスはその集団の前の方に居る様だ。


集まった集団の中に何時の間にかフィロンも居た。


白いマントにフードを深く被っていて全く表情は見えないが、ぱっと見にも彼がかなり緊張している様子は伝わった。


「…あの、この間は…」

「話しかけるな」


声を掛けると直ぐにフィロンに返された。


「こんな大事になったのは、言っておくけれどあんたが原因だから」

憎々し気に一言呟いた後、彼はわたしを完全無視する状態に入った様子だ。


(『太陽が消えるのは帝国崩壊の合図』ってコダ神の神託を話しただけでも、十分元老院へ呼び出される可能性はあった筈なんだけれどな…)


前回の評議会でのわたしの発言からの今回の元老院出席の流れで、フィロンのわたしへの心象は完全に悪化している様だった。


「――ではそろそろ行きましょう」

クイントス=ドルシラの声が聞こえた。


わたしは大きくため息をついて、第三評議会のメンバーの後に続きホールの中へと入っていった。


お待たせしました。m(__)m


読んでいただきありがとうございます。

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