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嘘つき預言者は敵国の黒仮面将軍に執着される  作者: 花月
2.『vice versa』アウロニア帝国編
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32 預言者の評議会 ②

『ルチアダ神』 芸術音楽の預言者 アレクシア出てきます



アウロニア帝国には、政治家である議員が集う元老院と各部門の有識者や学者等が作る部会があり、それが評議会と言われるものである。


元老院の議員を兼ねる事のある彼らは、その評議会委員として活躍中の時は、それぞれ決まった色のトーガを纏うのが定められている。


青色のトーガを纏う第一評議会は法律や自治に関連するもの。

赤色のトーガを纏う第二評議会は軍部軍事に関連するもの。


そして緑色のトーガを纏う第三評議会は預言や神殿に関連するものであった。


***************


ガウディ陛下のざらっとする乾いた声が響いた。


「前回そして今回、各預言者から出された預言の内容が重大かつ猶予ならぬ物として、第三評議会メンバーを召集する旨となった」


するとその緑色のトーガを纏った集団からひとり、眼鏡を掛けて立派な顎髭を持つ男性がスッと前に出てきた。


「陛下からご紹介頂きました第三評議会議員長クイントス=ドルシラと申します。バアル様は以前からの旧知の仲ですし、先日フィロン様にはお会いしましたが…残りのお二方は初めてお目にかかりますな」


…お二方?


(わたしと…あとは一体誰かしら?)


わたしは改めて白いトーガを被る預言者達を見た。


「預言内容の理解を深める為に今回もクイントス=ドルシラに協力してもらう。預言者達はフードを下せ」


**************


手をかけてフードをゆっくり下すと、他の預言者達の姿をはっきりと見る事ができた。


ドゥーガ神の預言者バアル様、コダ神の預言者フィロン、そしてもう一人女性が立っている。


長いストレートの黒髪に、わたしとは違う深い青色の瞳と艶のある象牙色の肌。

歳はわたしと同じか少し上位の、彫刻師が彫った様な繊細で整った目鼻立ちの女性だった。


この小説の中の登場人物に、美男美女が多いというのは今に始まった事ではないけれど、その中でも一際目を引く美女だ。


それよりも気になっていたのは

(誰かに似ている気がする)

と言う感覚だった。


…誰だったかしら。


すると、いつもより格段に気を使った様な陛下の声が聞こえて来て、わたしは驚いてしまった。


「アレクシア。ここまで来てくれて感謝する。体調に変化は無いか」


アレクシアと呼ばれた女性は陛下に向かって花の様に微笑むと

「有り難いお言葉ですわ。けれどお気遣いはご無用でございます」

と優雅に一礼した。


(わあ…綺麗だわ)


彼女の優美な所作のひとつひとつに驚いていると、隣に佇むフィロンから妙な雰囲気を感じた。


彼の顔を見ると、表情は変わってないのに変なオーラが出ている。


(え…何故?)

わたしはまたびっくりしてしまった。


決して同業者を見る目ではない。


表現が難しいけれど(なんだか…)()()()()()()()()だった。


*****************


「ではアレクシアから確認する」

ガウディ陛下の言葉にドルシラが少し驚いた口調で尋ねた。


「ルチアダ神が先で良いのですか?」


陛下はアレクシアをちらと一瞥して言った。

「構わん」


アレクシアと呼ばれる女性が私達の方を見てまた優雅に一礼した。


わたしの方を見た時、少し微笑んだ気がしたのは気のせいだろうか。


「神託が降りたなどではありませんが、我が神『ルチアダ』様からの加護を感じる事が出来ません。殆ど神託は降ろさない方ではありますが、ここ一年余りの女神様のご様子は気になります」


(芸術と音楽の神『ルチアダ神』の預言者だわ)


彼女の発言から、アレクシアが宮殿内に在住する三人目の預言者『ルチアダ神』の預言者である事が分かった。


そして同時に誰に似ているかを思い出した。


幼い頃の記憶がいきなりわたしの頭の中に浮かんで来たからだ。



『経典で見た芸術の神ルチアダ様みたい』

それをきいた美しい少年は心底嫌そうな表情になった。


『…女神じゃないですか』

少年は小馬鹿にした様に鼻で笑った。



(――ニキアスだわ)


アレクシアは、少年の頃のニキアスに似ているのだった。



*************


クイントス=ドルシラは

「では…アウロニア帝国領の『ルチアダ神』の宮殿に確認を入れておく必要がありますな。どうするかは…」


後ろの控える緑色のトーガを纏った集団に向かって確認する様に頷くと

「情報が集まり次第、内容を検討して元老院へ議題として提出しましょう」


ドルシラと陛下とアレクシアの間で流れる会話を、わたしは意味が良く理解できないまま聞いていた。



**************



すると、陛下がいきなりわたしの方を向いた。


「レダの預言者よ、この件に関してはどうか?」


預言者達と評議会の皆が一斉にわたしの方を見た。


「わ…わたくしですか?」


(ええ!?)

どうして陛下はわたしに話の矛先を向けたの?


居眠りをしていた授業中(今はしてないけれど)に、先生にいきなり名指しされた学生の様にわたしはどもりながら答えた。


「わ…分かりません。も、申し訳ありません…」


陛下は同じ様にフィロンの方を向いて

「コダの預言者はどうか?」

と尋ねた。


フィロンは流れるような口調で陛下に答えた。

「私めの神託にその様な内容はございません」


(あ、そうか…あんな風に答えればいいのね)

焦って変な汗をかいてしまったわ…。


フィロンの返答に成程と思いつつも、陛下が

(そもそも異なる神の神託内容をなぜ他の預言者に質問するんだろう?)

とわたしは不思議で仕方がなかった。



お待たせしました。m(__)m


読んでいただきありがとうございます。

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