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嘘つき預言者は敵国の黒仮面将軍に執着される  作者: 花月
2.『vice versa』アウロニア帝国編
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31 預言者の評議会 ①



ドロレス執政官は甲高い声を張り上げた。

「ではこれで各々議題は論議、裁可された。本日の元老院会議は終了とする」


そこでドロレス執政官は元老院の議員を見渡した。


「これから預言についての第三評議会と研究班がやってくる。

まあ二回目にはなるが、重要な案件の為今回は皆に是非とも出席してもらいたい。

内容については私からでなく評議会の者達からお願いする。

以上だ」

と言って、ドロレスはざわつく議員の声が聞こえる中壇上を降りた。


そしてお付きのような議員と共に、ベンチの最前列にちょこんと座った。


(ガウディ陛下の腰巾着と思っていたけれど、そうでもないのだな)


ユリウスは、ドロレス執政官のスムーズな議題の進行と評議裁決を半ば感心しながら見ていた。


(採決へのスムーズな誘導は流石の執政官と言うべきか)


すると議事堂の入口から、普段ユリウスが見かけた事の無い緑色のトーガを纏った壮年の男の集団が入ってきた。


「本来なら私がここに立って皆さんにお目にかかる事も滅多にないのだが」


いかにも科学者然とした姿の彼らは壇上の前にズラリと並ぶと、中央に立ち眼鏡を掛け、立派な顎髭を持つ男が口を開いた。



「前回ここにいらっしゃらなかった方もチラホラと見られるので、自己紹介させて頂く。私の名前はクイントス=ドルシラ、神学と哲学の研究者だ。

元老院議員でもあるが、今日は第三評議会員の長としてここに立たせていただいた。

後ろに控えるのは同じく評議会のメンバーとその研究者達になる」


ドルシラは元老院の議員等を見渡して言った。


「今回の発表の内容は他言無用で頼みたい。

何といっても預言者の言葉を正確に吟味するのが我らの仕事だ。

余計な憶測や混乱を招く事態は避けたいからな」


*************



『太陽が完全に消える』


第三評議会の持ってきた議題は議員達の中で大きな反響を呼んだ。


星を観察する天体学者の中でも、この現象をハッキリと説明できるものはいなかった。


アウロニア帝国での天文学は天動説である。


自分達を中心に星々は回っていて、あの偉大なる太陽ですら『我らのいる場所の回りを回って』いる。


そのため真昼間に太陽が消える現象を理解する事は難しかった。

何よりもこの現象に恐れを抱くものが多かった。


元老院の議員等は各々質問を出し合い、最終的には『この預言内容は本当に正しいものか』を疑う者まで出始めた。


「預言を下したのはどなたか?」


議員の一人からそんな質問が出た。


クイントス=ドルシラが答えた。


「今回はコダ神とレダ神の二人の預言者だ」


「景国の宦官男娼とゼピウスを滅ぼした嘘つき娘じゃないか。そんな神託を本当に信じるのか?」


元老院の議員達の一部から、二人を中傷する様な声が次々と上がり出した。


ドルシラは議員達の騒めきを注意する様に、パン!と両手を強く数回叩いた。


「昔の境遇だけで差別的発言をするのは止めて貰いたい。

発言内容も非常に低レベルで、お世辞にも脳で会話している様には聞こえないぞ。

預言内容については、ガウディ陛下とバアル様とお二方も承知されている」


「つまり預言内容は、既に陛下が認めた内容だという事か」

ドロレス執政官が確認する様に言った。


「そういう事になりますな、執政官。ですからこの()()()()()()()として我々は検討していかなければならないのですぞ」


*****************



「まずその現象の起こる日付は特定できるのか?」


元老院の中より質問の声が上がった。


「太陽神であるメサダの神殿に確認すると同時に、天文学者が計算をしているところだ。結果が出るまで今しばらく待って欲しい」


ドルシラが質問した議員に答えた。


「け、計算とは一体何なのだ。何故月や星でもないのにここで天文学者が出てくるのだ」

「太陽の事なら神殿に訊くのが一番早いし、それでいいのでは無いか」


ドロレス執行官は、他議員の意見が飛び交う中、挙手をして再び質問した。


「神殿でなく天文学者に頼んだのは何故だ?誰かの見解によるものか?」


「その通り」

クイントス=ドルシラは頷いて答えた。


「レダの預言者の勧めだ」


***************


――遡る事数日前――


「マヤ様…ここからおひとりになりますが、大丈夫ですか?」

「大丈夫よ、リラ。ありがとう」


わたしはリラに声をかけて、玉座の間の前の扉に立った。


今日は長い白いチュニックに編み上げサンダル、化粧はせずに髪を緩く三つ編みにしてまとめ、白いフード付きの長いマントを頭から顔が見えない様に被っている。


この白いマントは被って来る様にと事前に渡されていた物だ。

どうやら預言者は皆着用する必要があるらしい。


恐ろしい事だが警備兵がセキュリティーチェックと言いつつ、やたらに身体を触るのにも、大分慣れてきてしまった。


「どうぞ中へお進みくださいレダの預言者殿。皆様、既にお待ちになっております」


わたしは頷いてから、以前も訪れた玉座の間へと足を進めた。


赤い絨毯が敷かれた通路の真ん中を通った向こうに、いつも通り陛下が皇帝の椅子(ソリウム)に座っている。


陛下の変わらず無機質な黒い瞳で見られると、全てを見透かされている様な妙に落ち着かない気分に陥ってしまう。


「遅いぞ。レダの預言者」

「…大変お待たせして、申し訳ありません」


(約束した時間までに、まだ十分に余裕がある筈だけど…)


そう思いつつもわたしは陛下に丁寧に一礼して、赤い絨毯を下を向いたまま玉座に向かって歩いていった。


少し顔を上げると、目の前に見えるのはわたしと全く同じ白いフードを被った人影が三つだ。


(…三人?)


わたしは疑問に思ったが、玉座の横を見て更に驚いた。


緑色のトーガを身に着けた集団が何故か一斉にわたしの方を見ていたのだった。


お待たせしました。m(__)m


読んでいただきありがとうございます。

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