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嘘つき預言者は敵国の黒仮面将軍に執着される  作者: 花月
2.『vice versa』アウロニア帝国編
117/260

30 元老院の執政官

アウロニア帝国皇帝軍 

①パンテーラ【豹】軍 ヤヌス=クセナキス将軍

②レオ【ライオン】軍 ペトロス=デュカキス将軍    

③ウルサス【熊】軍 イオアニス=ストラトス将軍

④ティグリス【虎】軍 ニキアス=レオス将軍

                                        参考までに


ユリウスは首を傾げて考えていた。


あの奴隷の女(少女?)に何処かで見覚えがある様な気がしたのだ。


(一体何処でだったか…)


ユリウスはひとの顔を必ず一度で覚える質だったが、今回は何故か直ぐには思い出せなかった。


「うーん…奴隷だからなぁ…でも、なんか思い出せそうなんだよね…」


ユリウスは首を傾げながら()()()見覚えのある気がする奴隷の事を考えていた。


(確か何処かで…)


すると父ダナス副将軍が、通路の真ん中で足を止めて自分の後ろで止まったままのユリウスへ声をかけた。


「ユリウス!議会の開始時間に遅れるぞ」

「あ、はい。今行きます」


父の声に完全に思考を遮られたユリウスは、その奴隷の事は頭から消し去り議会堂の方へと足を進めたのだった。


************



元老院は『アウロニア帝国の市民』と認定された者たちで構成される。


その中でも貴族と呼ばれる身分の者が元老院のほとんどを占めている。


もちろんその中に平民もいる。


彼らは護民官と呼ばれ僅かな人数だが、主に平民等の中で問題になっている案件を評議会に持ち込んだりしている。


貴族が多い元老院を統括する立場であるのが、元老院議長である執政官である。

現在はガウディ皇帝陛下の正妻の血縁であるドロレス議員が執務官になっていた。


議会堂は皇宮内にある。


円形で囲ったベンチのような椅子に銘々が座れる様になっていて、そこで議論や裁択をする場になっている。


中央に通路があり、真っ直ぐに進むと一段高くなっている場所が会議を統括する執政官が立つ場所だ。


「お久ぶりですな。ダナス副将軍」


隣に座り声を掛けてきたのは、同じ皇軍『パンテーラ』を指揮するクセナキス将軍だった。


いかにもアウロニア帝国軍人然とした茶色の髪と日焼けした肌の持ち主だ。

真っ白い艶やかなシルクのトーガが褐色の肌に映えている。


「先日の対ゼピウス国攻略の素晴らしい戦果、おめでとうございます。流石勇猛果敢な『ティグリス』軍ですな」


「いやいや『パンテーラ』軍の、熱砂の国ベルガモン攻略と比べたら簡単なものでしたよ…」


父ダナス副将軍が珍しく照れて頭の後ろを掻いているのを息子ニキアスは呆れ顔で見ていた。


(ニキアス様の指揮と軍の活躍があってこそなのに…)


クセナキス将軍は傍らのユリウスの表情に気づいてダナスへ尋ねた。

「彼は…息子さんですかな?」


ユリウスはクセナキス将軍に向かって一礼をした。


「ユリウス=リガルト=ダナスです。初めてお目にかかれて光栄です。パンテーラ軍のヤニス=クセナキス将軍閣下」


「初めまして、ユリウス。私の事を良く知っているな」

クセナキス将軍は、ユリウスに向かって少し苦笑すると


「いや、利発そうなお子さんですな。今日は元老院会議の見学といったところですか」


「そうです。この度やっと十五歳になったので執政官殿に許可を頂きましてな。来年はこの議会の一員になりますから」


ダナス副将軍は、そう言ってまた最近背の伸びた自分の息子を見た。


「ところで…お姿が見当らない様だが、本日()レオス将軍は議会にはご出席されないのですかな?」

クセナキス将軍がダナス副将軍へ尋ねた。


「我が上司は今回の戦さの残務整理をしなければいけないといって居りましてな。どうやら今回()出席は難しいらしいです」

とダナス副将軍が言うと、クセナキス将軍と二人で顔を見合わせてくっくっと忍び笑った。


(気分が悪い光景だな)


ユリウスは、自分の隣でいい大人が出席していない人物(ニキアス将軍)を馬鹿にするような会話をしているのを聞いて、嫌な気持ちになった。


自分の父親がニキアスを良く思っていないのはもう分っているが


(他の皇軍の将軍にまで馬鹿にされるなんて…あまりにもニキアス様が気の毒だ)


戦争の残務処理も本来であれば将軍以下――つまり父などが率先してやるべきで、将軍であるニキアスがそう命じてもいいのだが、多分のらりくらりと躱して父は仕事を引き受けないだろう。


そもそも元老院議会の構成員はもともと生粋の貴族出身層が厚く、その中でも嫡男が多いことから、妾腹の出身者は軽く見られがちではある。


ニキアス=レオス将軍に至っては、前王弟侯と妾腹(どころか踊り子という遊女と変わらぬ立場)の子供であり、義兄ガウディ皇帝の好意を無下にして王宮を出奔し、ドゥーガの神殿に身を寄せたという特殊な育ちだ。


元老院議会の面々と(政治家)関わらず、今の立場に為り上がったと思われがちである。


陛下の温情で、ニキアスも一応元老院議会出席の権利は持っているが、現状ニキアス=レオスはほとんど会議に出席しなかった。


すると、ドロレス執務官が取り巻きの議員を引き連れて現れた。


会議堂の真ん中の通路をでっぷりした身体と巻き毛を揺らしながら歩いている。


壇上に上がったドロレス執務官の少し甲高い声が堂内に響いた。


「待たせた。ではこれから議会を始める」



(多分…色々と面倒で複雑なお立場なのだろうな)


目の前の壇上に堂々と立つドロレス執政官を見ながら、ニキアスが元老院議会を避ける理由を想像するのは、ユリウスにとって難しい事ではなかった。


お待たせしました。m(__)m            


読んでいただきありがとうございます。

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