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嘘つき預言者は敵国の黒仮面将軍に執着される  作者: 花月
2.『vice versa』アウロニア帝国編
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17 バアルとの面会 ③

大変お待たせしました。


わたしは、何か考察している様なバアル様の横顔をじっと見つめた。


「…少し待ってくれるか?」


すると、バアル様は隣の私室らしい部屋に入ってしばらくしてから筒状の書簡を持ってきた。

そしてその中から、長い巻物の紙をするりと取り出した。


「これを見て欲しい」

と言って、バアル様はその書状をくるりと開いた。


「君も知っていると思うが、我が神殿の神は闘神『ドゥーガ』だ。

つまり、他の神より圧倒的に早く闘いの兆しに敏感な反応をする。

…これはあくまで予言内容では無く、預言出現時期順に神殿の名前を並べた物だ」


バアル様が指差した先を見ると、ずらりと地名と神殿名が書き連ねている。

「先に名前が書いてある地名ほど、『ドゥーガ』の神殿での闘いの預言の時期が早くなっている」


わたしは首を傾げて書面を見た。地名だけ見てもピンと来ないためだ。

「ええと、これって…どういう意味なんでしょうか?」


「では…こうしよう」

バアル様は苦笑して、アウロニア帝国の地図と羽根ペンを取り出してから、ざっと地図を机の上に広げた。


「最初は南のベルガモンに近いデリの神殿、次が反対岸になるコタの神殿、そしてほぼ反対のルミナ神殿…そして…」


次々に丸を書いていくと、最初は全てテヌべ川沿いに書かれていたそれが徐々に円の範囲が広くなり、アウロニア帝国全土を覆って行く。


わたしそれを見つめて思わず呟いた。

「そんな……」


知識で知ってはいても、実際に起こるかもしれないと思うと、背中を冷たい汗が伝わる。


(小説通りとはいえ、こんなに広がるなんて)


もともと無理に併合された敗戦国ベルガモンや、領土分割された東の景国まで戦火が及んでいるのを見て、わたしは呆然としてしまった。


この前提があり、内戦で弱体化している所を帰属化していた国々が各地で反乱を起こして、アウロニア帝国全土はほとんどが戦地に変わっていく。


わたしはゴクリと唾を呑んだ。


(このままこうやって帝国は滅ぶんだわ)


(これは...なんとか陛下に一刻も早くお伝えしなければ)

「…バアル様、お願いです。わたしと一緒に陛下へのお目通りをお願い出来ませんか?」


「何故だ?理由を言いたまえ」

バアル様は不思議そうにわたしに尋ねた。


「…わたしの預言内容を陛下にお伝えしたいのですが、わたしの拙い預言では正直、陛下に相手にして頂けるか分かりません。バアル様のお力添えがあれば陛下のお耳をお貸しいただけるかもしれませんので」

わたしは両手を握りながら、思い切ってバアル様に伝えた。


「一緒に上申するのは、私は構わない」

煙たがられるかと思ったが、予想に反してバアル様は少し笑いながら言った。


「――が、どうか誤解してくれるな。陛下は決して自分の選んだ預言者を軽んじたりはしない」


バアル様はどうやらガウディ皇帝を信頼している様だった。


わたしはガウディそれに黙って頷くしかなかった。


バアル様は側仕えの小姓を呼び、耳打ちをして何か伝えた。

少年が部屋を出るのを確認すると、わたしを見て微笑んだ。


「そこらに適当に掛けてくれ。陛下の面会の返事が戻って来る迄お茶でもしよう」

と言ってわたしが近くの椅子に座ると同時に、バアル様手ずからお茶を淹れ始めた。


 ****************


「…マヤ姫はレダ神に直接お会いした事はあるか?」

良い香りのする薬草茶を飲みながら、バアル様はわたしに尋ねた。


「レダ様ですか?…いえ、無いです。ただ…」

『お爺さんだったヴェガ神様ならあるけれど』

言葉に出そうとして、わたしは止めてしまった。


わたしのその様子を、バアル様は興味深そうに見つめた。


「…ひとつ面白い…興味深い話をしよう」

お茶を一口飲んだ後、不意にバアル様は話し出した。


「実は、陛下のお母上はレダ神の娘――預言者だった」


わたしは驚いてしまい、思わず訊き返してしまった。

「――え!?それは本当ですか?」


「はは…本当だ。そんなに驚く事かな?」


バアル様は軽く笑い声を上げると

「…とは言っても、君の様に優秀では無い。預言者としてもの資質はあったがごく僅かで、生まれ付きコミュニケーションの障害もあったらしい。

ただ――とても彼女は美しかったし、彼女の父親が非常に高い貴族の地位だった為に、陛下のお父上はお母上と結婚したらしい。

…直ぐに他の女性を自分の邸に何人も引き入れた様だが」


「…そう…なんですね」

(陛下のお母様が…まさかわたしと同じレダの娘だったなんて…)


「だから陛下は特にレダ神に特別な想いを抱いている…と私は考えている。彼自身はレダ神に信仰の重きを置く事を、政治的配慮に欠ける事になるからと、公言はしていないがね」


そう言うとわたしの反応を観察する様に、バアル様はじっとわたしの事を見つめた。

お待たせしました。m(__)m


読んでいただきありがとうございます。

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