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嘘つき預言者は敵国の黒仮面将軍に執着される  作者: 花月
2.『vice versa』アウロニア帝国編
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14 戦神の預言者

大変お待たせしました。

 

「三十分…って僕ら言いましたよね、ニキアス様」

ユリウスはかなりの早足で歩きながら、プリプリと怒った口調で言った。


『ドゥーガ神』の預言者である『バアル』に面会に行く途中の廊下でニキアスはたっぷりユリウスに絞られていた。


「だから…すまないと言っている」

「僕等が…リラ姉もですよ?どれだけ危ない橋を渡ってセッテイングしたかお分かりですか?」


「む…わ、悪いと思っている。本当に…」

 やきもきしながらリラと一緒に待っていたユリウスの前に、トーガを乱して二人が現れたのが三十分をとうに過ぎた五十分後である。


「ニキアス様、もう少し早く歩いて下さい。これじゃバアル様との面会のお時間に遅れてしまいます」

「歩くって…ユリウス、お前もう走ってるじゃないか」


「ニキウス様のトーガをきちんと直さなきゃいけなかったからじゃないですか。僕は今日初めてバアル様にお会いするんですよ?遅刻なんて嫌です」


時間ぎりぎりにやっと『ドゥーガ神』の預言者の部屋の前に到着したユリウスは、小走りで乱れた息を整えながら控えの間の扉をノックした。


全く呼吸を乱さないニキアスが後に続く。


「どうぞ…入ってくれて構わない」

部屋の中から豊かなバリトンの男性の声が聞こえた。


 ******



そこには黒い肌と真っ黒い瞳、白髪を短く刈り込み堂々たる体躯の壮年の男性が立っていた。


年の割に鍛えられた身体と精悍な顔つきから年齢が不詳なのだが、ニキアスが昔神殿で見た姿からそう歳を取っていない様に見える。


「久しぶりだな。ニキアス」

「バアル…二年振りですね」

 

お互い腕を伸ばし、再開を喜ぶ抱擁をした。


「左眼の痣はどうした?神の加護の気配がするぞ。後で詳しく教えてくれ」

預言者バアルは笑ってニキアスに言うと、傍らで立つユリウスを見て尋ねた。


「この少年は誰だ?…随分と賢そうだが」

「ありがたいお言葉恐悦至極でございます。ダナス副将軍が息子のユリウス=リガルト=ダナスと申します。どうぞお見知り置きを」


ユリウスが礼儀正しく一礼すると、バアルは肩をすくめて笑った。


「どうやら彼は本当に賢いと見えるな」


アウロニア国前前王の時より『ドゥーガ神』の預言者である『バアル』は、帝国内に限らずこのザリア大陸がまだ北のゼピウス国、南東に位置する景国、南のベルガモン国とバスキア国に分かれていた頃からずっと、放浪し神殿を周り続けている。


もともとアウロニア国内で『ドゥーガ神』に加護を頂いた為、アウロニアに属しているが、本来の形である預言者の立ち位置のままの振る舞いを許された数少ない人間である。


国内外の事情にも詳しい情報通でも知られていて、昔からどの国の王にも阿たりへつらったりする事が無い生粋の預言者であり、ドゥーガ神の戦士(息子)なのだ。


「今日はどうした?

昨日帰ってきたばかりで面会したいとは、ずいぶん急だな」


「申し訳ありません…お疲れの所を」


「いや、平気だ。今回は気になる預言があって戻ってきたのだ。

暫くしたらまた出てしまうからな。かえってここで会えて良かった」


バアルはニキアスの肩をポンポンと叩いた。


「もうガウディ陛下にご面会されましたか?」

「陛下にはもうお会いしたな。労いの言葉を頂いたが。彼も大分皇帝らしくなっていたな」


自身の顎の白い無精ひげを指で撫でながら、ニキアスへ少し微笑む。


『己が頭を垂れ、膝を折るのはドゥーガ神のみ』

どの君主にも頭を下げないバアルらしい一言だ。

バアルは皇帝ガウディが敬意を示す、ごく僅かな人物の1人である。


ガウディまでもが、どの国の王や皇帝に平服しないバアルの態度を納得している様だった。


 ******


「ドゥーガの神殿の皆は元気ですか?」


「皆殆どが息災だ。まあ戦士として日々鍛えているからな。お前のいた神殿の皆も元気でいたぞ。…あぁ、お前に関して神官らが気になる事を言っていた」


バアルは眼をきらっとさせてニキアスを見つめながら言った。


「『預言の姫と出会いお前が壊れ、地に争いが起こる』と神託があったそうだが」

「…俺がですか?」

「今回旅の途中で戻って来たのにはそれもある。まさか同じ(ドゥーガ)の――しかも神官に近い格を持つお前が()()()と聞けば気になるではないか」


「壊れる…それは…」

ニキアスは呟いた。


(マヤの事だろうか?)

たしかに今回のマヤ王女への振るまいは目も眩む程の怒りを覚えたが、だからと言って現実に陛下に手を掛ける程向こう見ずでは無い。


(それに)

何と言ってもガウディ実際自分の兄で唯一の血縁でもあるのだ。


「どうやらそれは杞憂だったな。思っていたよりもお前の表情が穏やかだから安心した」

バアルはニキアスを見て微笑んだ。


「穏やか…そうですか?」

(先程マヤに逢えたからかもしれない)


「まあ、他にも…気になる預言があったのだがな」

バアルは小声で呟いたが、気を取り直した様にニキアスへと尋ねた。


「それよりも最近のお前の様子を教えておくれ。宮殿内の未婚の女性が嘆いていたぞ。麗しの将軍が敵国から恋人を連れて帰って来たと」


お待たせしました。m(__)m


読んでいただきありがとうございます。

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