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明日は思いっきり食べましょう


サウティナとリテラは約束通り、ランチを共にしていた。

最初こそは、なんとしても今のうちに別の日にお茶会を取り付けると隙を窺っていたサウティナだったが、それはもう無理なのではないかと思い始めていた。


「私、あまりお茶会に参加したことなくって本当に楽しみで! それてもサウティナさんのなんてワクワクしすぎて今日なんて寝れるのか心配です」


(この調子では予定を蹴ってでも来そうだもの。これはもう次に移りましょう)


ユタリナがロゼートに、サウティナがリテラにそれぞれ今日一日側につき、リテラに外堀を埋められるのを防ぎ明日のロゼッタのお茶会で訳を話し謝罪して少しでも悪くなる印象を軽減する作戦。


「初めてだから、あまり期待されても困るのだけどね」

「いえ、どんなものでも全然!」


(ここまで機嫌がよいなら例のアゼルノトル様とお茶会の情報経路を探ってみてもよさそう)


「お茶会と言えば、誰かに言った覚えはなかったのですがわたくしが、明日のロゼッタ様のお茶会に出るのどなたから聞いたのですか?」

「アゼルノトル様からですね。なんだか嬉しそうだったので、どうしてか聞いてみたらサウティナさんと話したからとかで、何を話したのかも聞いたら教えてくれたんです」


(上司の息子が仕事の邪魔しかしない件について、そろそろなんとかしたい。しかも、既にリテラ様に誑かされてるのでは? わたくしの前に来る時はほとんど不機嫌そうなのに、上手くやっていけるのか将来の上司としても不安が募るわ)


「ゼーテルゼ様からでしたか、特に話されて困ることもありませんが、あまりおしゃべりな殿方がも感心致しませんね……」


(でも、ご令嬢の見たわたくしのことを話していた、リテラ様の話し相手の殿方とは誰? ゼーテルゼ様の顔を知らないなんてことはないはず)


「お喋りな男性はお嫌いですか? イベリス姫」


声の方に顔を向けて慌てて席を立つサウティナ。


「これはデビッド殿下。いえ、光栄なことです」


デビッドを席にと促すサウティナ。


デビッド・ヴィス・ノーブ第一王子殿下。

ロゼートの婚約相手でリテラに熱をあげていると噂の中心人物の一人。


「ありがとう。それにしても貴方のような方がリテラと楽しそうに話してくれて嬉しいよ」


(まさかデビッド様とランチを食べる事になるとはね……あまり交流をしたい相手ではないのだけど)


出る杭は打たれるというもの。その際たる例のリテラはデビッドがわかりやすくアプローチをかけているからそのことを表立って言っているのはロゼートのみ。

サウティナの場合はそうではなくただ動きづらくなるだけ。


(なら探りついでに距離を向こうからつめられないように、手を打っておきましょう)


アゼルノトルでの失敗から殿方との距離の間というのは初手に限るということを学んでいる。

サウティナは、王宮使えとしての教育された引き出しで侍女のような振る舞いをイメージする。


「はい、リテラ様とは親しくさせていただいてます。ですがその、大変申し上げにくいのですがデビッド殿下はここでランチをしてよろしいのですか? ロゼート様は良いのでしょうか」


サウティナの言葉にわかりやすく顔を顰めるデビッド。


「ロゼート? 彼女は僕がいなくても心配ないよ。それよりリテラさ、平民としての印象がご令嬢達によく思われてないから心配なんだ」


(侮蔑、嫉妬、それに恐れ? お二人だけのやり取りは見てないけど随分な感情を向けているのね。政略結婚にしても随分……)


サウティナは、リビッドが僅かに見せたそれらの感情を拾いながら思考を進める。


(直接話すロゼート様がそれをわからないとは思えない。ステンレン公爵家そのものを蔑ろにしていると言ってもいい状態。アウスル侯爵の後ろ盾がある第二王子がいるのに、これではまるで自分が王になるつもりがないと言っているようなもの。そうなればステンレン公爵家としての利も見えない。では何故今も婚約を? どうなっているのかしら?)


「デビッド殿下、私は大丈夫って言ってるのに。リテラさんも言ってるし、やっぱりロゼートさんの方に行ったほうがいいと思う」

「リテラは優しいね、本当に。でも僕もリテラと話したいからさ、いいでしょう?」


リビッドからリテラに視線を移すサウティナ。


(三角関係を楽しくみているのつもりだったけど、リテラ様のこれは違う。デビッド様の一方通行。これでロゼート様が冷めていたら、政治的な意味合いはともかく感情面での3人の関係性は想像していたより面白くなくて残念だわ……)


仕事としては知っておきたいけど、趣味としては知らなくてよいことだったと顔には出さず落ち込む。


(またお菓子リーデルテ宰相様から強請らないとね)


あまり興味は無くなってしまったけど、それが美味しいものになるのは喜ばしい。


「もう、デビッド殿下ったら。あっ、このパフェっていうのすごく美味しいの。サウティナさんが教えてくれて」

「へぇ、そうなんだ。良かったね、僕も食べてみようかな」


(でもこの情報を、明日のお茶会の前に知れたのはよかった。ロゼート様とステンレン公爵家への印象が随分と変わったわ)


「サウティナさんとはお茶会もする予定で、今から楽しみなんだ」

「……へー、そんなに仲良くなったんだ? サウティナ嬢それは本当?」

「え? ええ。そうなりましたね」


妄想に突入していたため、侍女としての仮面どころか生返事をしてしまうサウティナ。

サウティナのにやにやを見て、リテラも笑顔で話す。


「ね? 本当に楽しみ!」


(そうね。他の方も居る明日のお茶会よりも、返事しだいだけどロゼート様との思い切った話はわたくしのお茶会ですればいいわ。なら明日は純粋に楽しみましょう)


「はい、わたくしも楽しみにしております」

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