平民の格好も慣れたもの
始めまして、読み専でしたが書いてみました。
サウティナ・ロベルテは、愛の話も、嫉妬の話も、裏切りの話もそれがどんな最後を迎えようと、劇を見るように面白かったと、楽しむ。
噂話からその後を妄想して楽しみ、実際の結末を見てまたそれを楽しむ。
一度で二度美味しい。いえ妄想の数だけ楽しむことができるのです。
ヴィスフェア王国には、今色々な噂話がありますが、特に国中を巻き込むとても熱い話題。
それが第一王子を巡る公爵令嬢と男爵令嬢の噂と、第二王子と侯爵家姉妹のお家騒動の二つ。
毎日がそれはもうとても素敵なスキャンダルに満ちて、たくさんの方々が派閥争いを見極め利益を得るために、あるいは娯楽のために噂話をしてます。
様々な派閥があるなか、中立を謳っているのがロベルテ伯爵家。その実、影から宰相に支える情報収集の家。
宰相の者と国王にしかロベルテ家の秘密は明かされないため、表立った派閥支援などなく、少し伯爵家にしてはお金がない方かもしれません。
けれど、サウティナには天職。
楽しく噂話を聞いて仕事として報酬までもらえるのだから!
今日は、楽しみにしていた報酬を貰いにお忍びで市井に出かける日。
(よし、こんな感じかしら?)
鏡を前にサウティナは平民の格好をして、話題の男爵令嬢の笑みを思い浮かべながら表情を作る。
「素晴らしいです、お嬢様。以前はいかにも貴族のお忍びでしたが、半年ほど前から段々と雰囲気を作るのがお上手になられましたね。今では商人の娘としか思えません」
「ありがとう、レベナ。いい出会いがあったのよ。いずれはお母様に『なにかしら。いくらなんでも無礼でなくって?』と言われるのが目標よ」
「……一体どなたですかそれは。絶対そのようなこと奥様は仰りませんよ」
「それもそうね。最近よく見るのよ、そういうのを」
半目のレベナに、サウティナはくすりと笑う。
「最近お嬢様が楽しそうで何よりです」
「ええ、そうね。今の情勢ではロベルテ家としては婚約者なんてできようもなく気軽で、近頃は話題は尽きないし本当、楽しいわ」
(リーデルテ宰相様次第だけど、今の王子殿下達の派閥争いが終わるまではまず婚約はない。王子の派閥争いが終わっても王子姫次第では王宮使えで、それも明確な横の繋がりを見せないようにするため、婚期は過ぎてからになる気がする)
「勿体ないです。お嬢様の美貌なら、申込はたくさんありそうなものなのですが」
(今のゴタゴタを見てると、婚約者いなくてよかったとしか思えないものね。リテラ様に誑かされてない殿方も、多分そうなんでしょう)
「美貌って、わたくしは平民に紛れられる程度のものよ」
(紛れられないから出てきた侯爵家のご令嬢がいますからね)
「今は、ですよ。……さて、お支度が整いましたよ」
「ありがとう。では、行ってくるねレベナ」
「はい。お気をつけていってらっしゃいませ。お嬢様」
ジャンルに悩んでいます、もしかしたらヒューマンドラマかもしれません。拙いことがあると思いますが、よろしくお願いします。