いらないものの遺書
短いです。
[ねぇ、僕知ってたんだ。初めて君と会ったその日から僕は君に恋をして、君は僕の双子の弟に恋をして、弟も君に恋をした。]
僕は使い道のなかったお小遣いで無駄に高く、手触りが良い縄を買ってきた。
そして、ずっと使ってきた椅子を定位置に移動させる。
[ねぇ、僕感じてたんだ。僕が邪魔者だって。皆も口にはしなかったけど分かってる。
そうだよね、君と弟は両想いで周りも二人を祝福していて、僕はその中で異物でしかないんだから。]
置いた椅子に登り、縄を輪っかになるように天井に括り付ける。
出来たら、正装に着替える為に一旦椅子から降りて、クローゼットが置いてある寝室に向かう。
[僕分かってるよ。両親も出来損ないの僕よりもなんでも出来る弟の方が好きな事も。
上辺では僕の事を可愛がっても心の底では嫌悪している事も。]
正装は学生だから、制服が正装なので制服に着替えた。着慣れた服に袖を通し、鏡で身なりを確認する。
着替えて、縄を括りつけたリビングに向かおうとすると、ある写真が目に入った。
腰くらいの小さい棚の上に立てられた写真立てに入っている写真は三人が親友でいる証として撮られた、君と僕と弟が写った写真。
この頃は凄く楽しかった。
そんな月並みな一言しか出てこない写真。
僕は棚に近づき、写真立てから写真を取り出し、それをバラバラに手でちぎった。
とにかく細かく、どんな物が写っていたか分からないほどに。
そして、粉々にした写真をその場の床に落として、そのままリビングに向かった。
[だからね。僕はこんな気持ちを抱えきれないから、こんな僕いらないから、価値なんてないから、皆の前から消えるね。]
僕は再び椅子に登り、縄を手に持つ。
気付いてくれるかな、君と二人でご飯を食べたテーブルに置かれた僕の日記に。君への想いを綴ったんだ。弟とは違う、汚い字でごめんね。
気付いてくれるかな、さっき作っておいた君の大好物のカレーに。食べてくれたら嬉しいけど、流石に無理だよね。気持ち悪いよね。
気付いてくれるかな、沸かしたお風呂に君が気に入っていた入浴剤を入れた事に。僕もあの入浴剤の匂いが大好きだったよ。でも、今年で発売終了だって。悲しいね。
気付いてくれるかな、気付いてくれるかな……
気付いてくれたらいいな。僕は君との思い出を思い出しながら、作り上げた僕の部屋に。
そんな事を思いながら僕は縄の輪っかに首を通し…
椅子を蹴った。
[]は紙に書かれた文章です。最初は二つとも読んで、後で別々に読んでも楽しめるかと思います。
人物設定
僕
名門家に生まれた跡継ぎ。跡継ぎとして厳しく指導されて育った。教育係の異常な存在否定のせいで自分は価値が無いと思っている。唯一の希望であった恋人に捨てられて、自殺した。
君
僕の恋人。軽い気持ちで僕と付き合ったが、途中から本気になる。でも、僕は名門家の跡継ぎなので重りになりたくないと別れを告げる。別れる理由に弟と付き合うからと嘘をついた。だが、それが自殺へと向いてしまった。きっと、彼は恋人の部屋の事を気付かない。
弟
僕こと兄のスペアとして育てられた。でも、教育係には恵まれ、その事を気にせず生きていた。兄の事が大好きだが、いつも忙しそうな兄の事を気遣い、話しかけられずにいた。君こと兄の恋人にはよく、兄とどう仲良くなれるか相談していた。だが、それが裏目に出てしまった。兄を一番に見つけるのは弟。兄と一緒に食べようと買った、兄の大好物のケーキを持ちながら、兄の家に行く。
いつか恋人視点や弟視点を書くかもしれないです。
ここまでお読み頂き、ありがとうございました。少しでも楽しんで頂けたら幸いでございます




