表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

17/48

17「拷問」

「あ? どうした。まさかエルフの娘。おまえ、まともに立ち会えばこのおれに勝てるとでも思ってたのか、おぉ? ククク、ここに到着したばっかのおまえ、凄かったよなぁ。まさしくS級冒険者でございって感じでよ。おれのことをタダのキモいクモ野郎とでも思っていたのだろう。それが、こーんなふうに」


 エビルスパイダーはしゅしゅうと腹から糸を吐き出しヴェロニカをあっという間にぐるぐる巻きにしてしまう。


「糸で身体の自由を奪われ好き放題いわれるとは思っていなかっただろう。あ?」


「……」

「なんかいえよっ!」


 無言のままのヴェロニカに苛立ちを感じたのか、エビルスパイダーは歩脚を振るって切りつけた。


 鋭い切っ先はヴェロニカの頬を抉った。


 ヴェロニカの端正な面からどろりと赤い血が流れる。


 エビルスパイダーはカカカと楽しそうな高笑いを上げた。


「さあ、どうやっておまえで遊んでやろうか。おっと、レディに名前を訊ねるのを忘れるとは。これでは紳士失格だなぁ、オイ。なあ、女よ。おまえの名は?」


 笑い声を時折挟みながらエビルスパイダーが訊ねるがヴェロニカは黙したままだ。


「ほーう、それじゃあこの仔猫ちゃんでハンバーグの材料を作ってもいいのかなぁ?」


「ヴェロニカだ」


「……とと。ダメだなぁヴェロニカちゃん。おぢさんに黙って糸を切ろうとしちゃ。そーいうのは、めっ!」


 ぎゅん


 と糸が引き絞られヴェロニカは壁に叩きつけられた。


 だが、エビルスパイダーの力加減は絶妙でシシンバに行ったほどではない。


「めっ、めっ、めっ!」


 無抵抗なヴェロニカは上下に糸を振られ天地に四肢を打ちつけられ悶絶する。


「わかったぁ? これに懲りたらそういう悪ふざけはしないことぉ」


「それが貴様の本性か……」


「ククク、別に全部が嘘じゃねぇさ。ただし、街に残してたのはおれが拉致って監禁してた貴族の娘っ子だし、子供ってのはそいつの妹さ。ちょっとばっかりいい変えるのは勘弁してくれや。それに拷問に耐えたのは本当だぜ。もっとも三秒ですべてゲロッちまったがよ。にしても、そんな天使みたいなおれをこんなクモとくっつけて遊んじまう魔族っておっとろしい存在だよな? ああー、それとギルドは最初はおれのことを本気で治そうとしていたみたいだがな。もっともおれを慰めに来ていた神官の娘を犯して食っちまったら、キレやがってよ。ったく、心の狭いニンゲンたちだぜ。魔族の拉致被害者に対するおれに謝罪と賠償が足りねーよ。なあ、そう思うだろ?」


「地獄に落ちろ」


 エビルスパイダーは笑い声を引っ込めると無言のままヴェロニカの身体を糸で振り、幾度も壁に叩きつけた。


 その時間はヴェロニカにとっては無限に思える時間帯だっただろうが、実際にはものの数十秒だっただろう。


「加減はしてやった。二度とそのような舐めた口を利くな。わかったか」


「フン、マッサージを頼もうと思っていたところだ」

「……おまえ、本当に強情な女だな、負けたよ」


 そういうとエビルスパイダーはヴェロニカを繭状になるまでぐるぐる巻きにしていた糸をわずかにほどいた。


 それから巧みに糸を調整して両手両足にかけ、ヴェロニカを仰向けにしたまま宙吊りにした。


 大の字である。


 ヴェロニカはキリキリと四肢を引っ張られながら苦痛に呻いた。


「が、がああ」


「苦しいか? ま、苦しいだろうな。苦しくしてんだから。だが、これはS級であるおまえを鍛えるため、元冒険者であるおれが心を鬼にして行う野外訓練の一環なんだ」


 もはやヴェロニカの装備は引き千切られて、ほとんど下着同然の格好で搾り上げられている。


 ヴェロニカは無理やり天井を向かされたまま、両手足に絡んだ糸の引き絞りによる強弱をつけた責めに苦痛の喘ぎをこらえられなくなっていた。


 彼女の豊かな乳房には糸がかけられギリギリと締めつけられ、太腿も糸でボンレスハムのように締めつけられ欝血がはじまっていた。


「許してくださいと泣きながら頼めば、このおれも慈悲心を起こすやも知れないぞ」


「……気色悪い顔を、近づけるな」


 ヴェロニカの言葉にエビルスパイダーは歩脚を振り上げると彼女の右眼に落とした。


「あっ、ああああっ!」


 ずぶり


 と、脚の先端にある小さな針がヴェロニカの右眼を潰した。


「うーん、いいねえ。どこまでおれに反抗するか知りたくなってきたよ、ヴェロニカちゃん。まずは、この綺麗なお目目。それから、右腕ッ。左足ッ」


 もはや彼女は声すら出ない。


 切り落とされた右腕と左足が地面に落下する。だが、糸で固定されたヴェロニカは残った左腕と右脚でバランスを崩した人形のように宙に吊るされたままだった。


「ふわーあ、なんかもう飽きたな。じゃ、そろそろお腹をぶっ壊して、もぐもぐタイムと洒落込ませてもらうとするよ。グッバーイ、勇敢なS級女冒険者さん」


 エビルスパイダーがヴェロニカにトドメを刺そうと歩脚を振り上げたとき――。


「見つけた」


 濡れたモップが闇の中から出現し、凄まじいスピードでエビルスパイダーの歩脚を叩き割った。



評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ