ゼロ番基地
気まぐれ第2話!!
女に抱えられて、建物と建物の隙間に入っていく。あの男は、少し離れたところで周りを警戒しているようだった。
すると、女の歩いていく先が歪み始めた。
「...三番を経由して、0番に進む。」
女がそう言うのが聞こえた。
「分かった。三番によるなら、服の類も分けてもらうか。あそこにしか無いものもあっただろう...」
男がそう返す。
「...この子起きたまま運ぶのは、やめておいたほうがいい気がする...」
女は私を見ながらそう言った。さらに、続けて言う。
「今もどうせ起きてる...」
私はそれを聞いてギクッとした。
「...起きてるのか?すまんな...少し寝ててくれ...」
私の意識はそこで途絶えた。
どれくらい意識を失っていたのだろうか?
意識が戻った時、天井が見えた。ベッドの上だろうか?柔らかい感触が背中にあった。
その時だった。
「...起きたか?」
あの女が覗き込んでいた。
「うわっ!」
私は驚いて、起き上がった。その時、違和感を感じた。
「...寝ている間に、着替えをさせてもらった...」
自分の体をよく見ると、体の大部分は包帯に包まれていた。
「...えっ...包帯...?」
包帯の上には、ノースリーブのトップスにショートパンツという簡単な服を着ていた。
「...あなたの声を初めて聞いた...」
女がそう言ってきた。
「...そうだ。自己紹介がまだだった。私は、カコ。本名じゃないけど...あなたも何か本名とは違う名前を名乗ることを勧める。」
カコという名前の女の姿を初めてハッキリと見た。
自分は顔、右の膝から下と右腕以外に包帯が巻かれているが、彼女はそうではなかった。
ほぼ全身を包帯で包み込み、かなり大きなサイズのトレンチコートを着ている。
「...あなたの包帯の上から服を着せたのは、流石に包帯だけだと可哀想だと思ったから...」
私の視線に気がついたのか、そう言ってきた。
「...名前。早く考えて...」
カコはそう急かしてきた。
「うぅん...アキ...でどうかな?」
なんとなく思いついた名前だった。
「...アキね...よろしく...」
カコがうっすらと笑った気がした。
「お、ひと段落ついたようだな。」
そう言い入ってきたのは、あの男だった。
「さて...俺は、シンっていう。俺からは、あんたの状況を説明させてもらうぜ...?」
シン、そう名乗った男は、状況を説明してくれた。それによると...
ニュースでも話題になり続けている、例の事件。
あの犯人が、先程私の目の前に出てきたやつだと言う。
しかも、同一犯ではなく、そういう「仕事」を生業とする種族がいるというのだ。つまり、私を襲ったやつ以外にもこの事件を起こしているやつがいる。
さらに話を聞くと、もともとは西洋で活動をしていたらしいやつらは、既に人間に狩り尽くされ、東洋にかなりの数が逃げ込んできたらしく、西洋からも専門家がこの国へやってきているそうだ。
シンは、そんな専門家の一人で日本生まれで西洋育ち...ということだ。
さて、専門家の追っているやつらは、個体を名ではなく、番号で識別しているそうだ。
古い個体から順に001、現在のところ060までが確認されている。
ちなみに私を襲ったのは、わりかし新しい個体で番号は055。
古い個体ほど強いが、新しい個体でも稀に一桁並みに強い個体がいるそうだ。
そういうやつらから、被害者を助け出すのがシンの役割らしい。
他にも、被害者への物資配給係や、やつらの本拠地捜索隊など様々な役割を持つ専門家がいるという。
...シンからの説明は、ざっとこんな内容だった。
そこでふと疑問に思った。
「行方不明者は、二人って話だったけど...カコがその一人だとして...後もう一人は...?」
ニュースでは、この街での行方不明者は二人だったはずだ。
「...あぁ...あいつは...元気でな...結構ウロチョロするんだ。多分...もうすぐ帰ってくると思うんだが...」
シンは少し頭を抱えながら、そう言う。すると...
「たっだいま〜!!帰ったぞ!シン!カコ!...ん?誰だ?」
こっちが誰だと言いたくなるほど騒がしいツインテールの少女が現れた。
「...アキ。こいつがさっき言ったやつだ...。」
この人が...と思って振り向くと...
「新入りか!!よろしくな!私は、クロだ!」
ツインテールの少女がそう言う。
しかし、彼女の体には、左半身にだけ包帯が巻かれていた。