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星たちは月に恋をする☆シュガージュリエッタ(妃彩)



「……忌まわしき魔王。よくも私の大切な親友(クリスティナ)を連れ去りましたわね。ここで息の根を止めて、もう二度と……もう二度と……過ちを……私は過ちを繰り返さないようにしないといけないのですわ……。そう……もう……繰り返したくは……彼女の死を受け入れたくは……ない」









 ーーどうやら私は夢を見ているようです。


 私がこの世界に来てから、一番古い記憶は、赤ちゃんの頃に二番目のお母様に抱かれている記憶になります。一番目と言っている意味は一番目が現実の世界のお母様、二番目は夢の中のお母様のことです。

 時は午後三時。お昼ご飯をいただいたあとにお昼寝をしていた所だと思います。お母様の金髪はとても美しくて、私は小さな指先で握っていました。私達は窓際のベッドでよくお昼寝をしていて、二番目のお父様のお帰りを一緒に待っていました。


 映画に出てくるような白と淡いブルーを基調とした素敵な洋館。家具はお母様の趣味で度々新調されている様子でした。

 この日お母様は幼馴染のお友達に手紙を書いておられました。季節の花が彩られた便箋に、写真を添えて。二人は離れ離れになってしまったけれど、国の王太子のお誕生日会で再開するのが楽しみだと言っておられました。お母様にも大切なご友人がいらっしゃるのですね。



 そして、その王子様のお誕生日会で私も私の大切な親友と再開したのです。

 お互いに姿は赤子でしたが、小さい頃の写真は見たことがありましたし、何よりも、長年一緒にいたので、パッと見ただけで彼女が誰かわかりました。


 (美夜みよ。美夜なのね!?!?)

 

 私達は最後にとても寂しいお別れ方をしました。



 だから、夢でも再開出来てよかった。初めての長旅、舞踏会。素敵な演奏とお料理とたくさんの人と、そして美しい王子様。私はとても幸せで眠くなってしまって。……疲れたのか、その後の記憶はありません。



 その後は、どんなに月を眺めていても長らく美夜にあうことはありませんでした。


 私は優しいお母様とお父様と、それにお祖父様やお祖母様、五人の家政婦ハウスキーパーのお姉様方とその他お手伝いに来てくださる方と一緒に日々を過ごしていました。この先もあまりに長い夢が続くのですが、夢を見続ければいつかまた美夜にあえるかもしれないと思い、私はまた目をつぶりました。


 後で知ったのですが、なぜ、幼い頃、王子様のお誕生日会に私達家族が呼ばれたのか、お城に呼ばれることが度々あったのかというと、私のおうちは牡牛座の血縁が濃いものの集まりで、名高い魔術師の家系でした。……でしたというのは、私には手のひらに乙女座の印があるからです。王子様の婚約者は牡牛座の加護を受けるものが良いとはされていたのですが、当方は私とも仲良くしてくださり……まあ、他にも婚約者はたくさんいるのですけれど、それでも彼は王子様なので親しくされるのはとても嬉しく思っておりました。


 幼きある日のこと、私はいつものようにお城に呼ばれました。私は癖毛の金髪の髪を三つ編みにされて、お花のついた髪飾りと淡い水色のワンピースを着せられていました。水色リボンのお帽子、お花の付いた飴色のサンダル。綿飴のようなふわふわなぬいぐるみ。走ってくるシオン王子とその後ろで微笑むご兄弟のお兄様方。私達は手を繋いで隠れんぼをしたり、手を繋いで鬼ごっこをしたり、またしても手を繋いでお昼寝をしたりと……。そんなこんなで夕方になり、お父様から「お大事なお仕事のお話がまとまったので帰るから」と、言われ、私は王子様に手をひかれ物陰に隠れました。

 

 その時、お庭に植えてあった一番綺麗なお花を片手に「大人になったら、ぼくと結婚してくれる?」と、結婚の申し出を受けるのでした。お花が夕日に照らされて、宝石に見えた。とか。王子様に乙女座の紋章にキスをされたのがとてもドキドキしたとか。夕日がとても綺麗だったとか。恋心をいだいた理由はたくさんあるのですが、ごっこ遊びの延長だとしても、私も王子の瞳に囚われた一人なのでした。



 私がだいぶ成長してからは密かに王子様とお付き合いをさせていただいていて、たまの合間に学園生活のあとひっそりとデートの約束をしたりしていました。私が親友を探していることを王子様は知っていらして、それらしき人の噂を耳にしたので……と、いうことだったのですが、噂をすればなんとやら……と、いうのはなんて素敵なことなんでしょうね。少しの間でしたが美夜にあうことができました!!!!(拍手☆)


 ……でも、なんだか、いろいろなことがあったはずなのですけれど、美夜と再開して、彼女を追って……そのあとの記憶が途切れ途切れなのです。もしかしたら、もうすぐ夢から覚めてしまうのかも……しれませんね。


 そんなこんなで、私は、あの悲しいお別れをした時と同じく、十六歳になりました。私は私達が通う学園に美夜も編入して来てくれたことをとても嬉しく思い、「ぜひ、同じクラスに!」と、学園長やお父様に申し出たのですが、それは叶いませんでした。ならば「同じ活動を!」と、再びお誘い申し出たのですが、それもご遠慮されてしまいました……。お父様が言うには「お父様にも逆らえないお方が王の他に一人いらっしゃる」とのことで、あとはぼやかされてしまったのですが、これは一体どういうことなのでしょうか。……国王と騎士団団長よりも権力のあるお方……。そのお方はなぜ、私の「美夜と同じクラスになりたい」、「同じ活動をしたい」、「あわよくばおうちを教えてほしい」と、言うささやかなお願いを聞いてくださらないのでしょうか? 「遠くて道が危険だから」、「それがおうちのルールだから」と、言うのがさっぱりわかりません。私のおうちにはそれらの問題をすぐに解決できる、車や船や自家用、飛行機ジェットを操縦できる者もおりますのに……。そもそも美夜とどんな関係が……と、一人で考えているとぐるぐる困惑してきたので、ついうっかり私は王子の前で泣いてしまいました。



 そんなとき美夜がやっと姿を見せてくれたのですが、不審に思った私のお付きの者が美夜のことを追い払ってしまって。「またね」と、お約束をしましたのに、それをきっかけに美夜はまたどこかへ消えてしまって……。


 

 ーー私は、必死で彼女を探しました。

 そして、お父様が誰を怖がっていたのかを知りました。


 美夜を連れ去ったのは魔王だと。



 ーーでも、もう心配しなくても大丈夫ですわ。






 私は牡牛座の加護を受けていなくても、乙女座の加護を最大限に引き出せる。もともと王家に嫁ぐつもりで幼い頃から幼児教育を受けており、魔法使いの称号は得ていたので、さらに美夜を取り戻すために特別な訓練を受講して魔術師になりました。騎士団を率いる父の権力、そしてどんなに複雑な魔法陣も見ただけで再現できる、博識と集中力と記憶力に優れた母の血を受け継ぐ私。

 私は世界の禁忌の一つである、魔界へと繋がる魔法陣を見事にそのまま再現した。

 禁忌の書は特別な場所に保管してあって、禁忌の書は魔術師の中でも本当にごく僅かな世界でも指折り数えた人しか開けられないようになっていたんだけれど、その、ごく僅かな人に王子の名があったのよね。王子というか、次期国王様。私は優れた魔術師を引き連れて魔界へとーー……侵入した。





 魔界の魔王城にたどり着いたわけだけれど、どこを探しても、魔王と美夜の姿はなくて。悪魔を数匹ぎりぎりまで懲らしめたあとに、悪魔は「美夜ヒトは魔王に守られているから探しても無駄だ」と言った。


 無駄と言う意味が魔王が作ったその試練に入ってみて分かった。

 一戦するごとに七十二柱の悪魔の一人が出てくる。いくら仲間を引き連れても、一人の悪魔を倒すにはすごく時間がかかった。





 ……やっとの思いで、魔王の首に剣を突き立てた時、「魔界にもうすでに美夜はいない」ことを知った。



 ならば、なぜ、私はまた多くの人とお別れしなくてはいけなかったのか。これは、まだ、夢なのか。いつになったら夢から覚めて、私は離した手を繋ぐことができるのかーー……と。

 



 

 


 


 



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