高校入学式当日
私の名前は華月美夜。身長は百六十四センチの標準体形。後ろからついてくる母親を見ても分かる通り、漆黒の黒髪に同色の瞳。前髪がそろっているのは前の日に焦って自分で鋏で切ったせいじゃない。若干つり目がちな私の容姿を引き立てるのには、前髪がそろっている方が似合うと思ったから。急遽、予定変更したまでよ。憧れていた高校の制服。黒のローファー。皮の鞄。……似合わない、キーホルダーが鞄からぶら下がっているって? こ、これは……っ!!
「美夜、髪の毛に桜の花びらがついているわ」
か細い指先が、私の髪に触れ、一枚の桜の花びらを連れ去って行く。桜の花びらが指先から溶けて、同化してしまいそうな程、淡い色の彼女は私を見てほほ笑んだ。
ーー……ううん。一枚の花びらだけじゃない。桜の木から風に乗って花びらが舞い落ちる。その全てが、彼女に触れたら、細身の姿故、飛ばされて消えてしまいそうな程、可憐な女性がそこに立っていた。
「妃彩」
小さい頃から色素が薄く、もともと明るかった髪色は、水泳の時間にプールの殺菌の為入れられている次亜塩素酸ナトリウムによって大分色が抜けてしまった。
私の母親の隣にいる、おしとやかで上品な女性が妃彩のお母さん。彼女を見ても分かる通り、顔が小さく、目鼻立ちがくっきりとしている。
妃彩は笑うとえくぼが出来る。本人はそれを肉がついているから嫌だとか、家ではひそかに小顔ローラーやマッサージをして直しているようだが、彼女の努力とは裏腹に天使の誘惑のようなほほ笑みに魅了される男子は多い。優しくて素直で、同じくらいの背丈なのに……おっぱいがデカイ。……失礼。妃彩とは小学生の頃からずっと一緒で、家が近所のこともあっていつも一緒にいる。
幼馴染み? 友達? いや、そんなもんじゃない。
私の秘密は親よりも妃彩の方が知っているし、妃彩のことも全部分かっている。好きな食べ物。趣味。好きなタイプ。学校で苦手とすること。うちに帰ったら何をするか。テレビを見ている間だって、スマホでチャットしてたりするし、それがお互いに苦になっていないことだって分かっている。
鞄につけたぬいぐるみ型キーホルダー。
中学最後の修学旅行にテーマパークで妃彩とお揃いで購入した思い出のもの。
ーーねぇ、妃彩。いつまでも私の隣にいてくれる? これから、クラス発表を見て、別々のクラスになったとして、それぞれ別の友達が出来たとしても、私たちの関係は変わらないよね?
そんなことを考えながら、私達は新しい物語の始まりの舞台へと足を進めたーー……。




