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マッチングアプリ

作者: 夜鳴つばさ

1分もあれば読めます

一時期、といっても大学生くらいの頃、出会い系、にハマっていた事があった。

出会い系という呼び方はよくないな。マッチングアプリ。

ちょうど、当時はマッチングが流行り出した頃で、俺は結構あのアプリで出会った。

でも、やっぱりあんなサービスで出会う女の子なんか、将来には繋がらない。

真剣に出会いを考えてたら、あんな場所には行かないんだろう。

とにかく、そんな価値もない場所だったけど、1人だけ忘れられない娘がいる。




マッチングアプリって、登録された顔写真を基本に、タイプの子を振り分けて、向こうも気になっていればメッセージができるというシステムなんだけど、その子は写真を載っけてなかった。

でも、当時はお金も無かったし、イマイチの方に振り分けるのもなんか勿体なくて、俺はタイプの方に振り分けた。

そういう写真を載っけてない子は、基本冷やかしで登録してるだけだから、マッチングが成立する事って基本ないんだけど、それでもその子とはマッチングが成立した。

形式美というか、作業という儀式というか。とにかく、俺はひとまずメッセージを出してみたの。「マッチングありがとうございます!よろしく!!」

まぁ、あんまり期待はしてなかったんだけど、メッセージが返ってきた。

「写真、上手だね(笑)」

後で気がついたんだけど、向こうが年上だった。

でもそんときは気がつかなかったから、

「え!ありがと!でもこれは盛れた写真かな(笑)」

「好きな食べ物はなに?」

「えっ!唐突に!? 唐揚げかな!」

「答えてくれるんだ(笑)」

なんだかんだで、盛り上がったわけ。

マッチングして盛り上がったら、次はLINE聞くの。これはセオリー。

「あのさ、LINE交換しない?」

「イイよ、ID送るから検索してね」

そのアプリには、秘密のやり取りみたいな機能があって、2人がLINEを送りあったら、相手のLINEが見れるっていうプライバシー保護があるのよ。現代の伝書鳩だよ。

ま、こっちはデタラメのID送って(この時点じゃ信用できないし)、相手のLINE見て検索した。

結構あっさりだったね、おっ、これは行けるかもしれないぞとか思いながら、LINE送った。

「LINE合ってるかな?マッチングの!」

「やほー!合ってる会ってる!正解だよ!」

ちょっと気分上がるよね。


で、そのあとも盛り上がり続けた。

その日は土曜だったし、急だったけど

「ね、明日暇だったりする?」

「ひまだよ〜」

(笑)とか絵文字とかついてないあたり、向こうもわかってるよね。

思い切って、

「ご飯食べよーよ!」

「それはダメ。」

えっ?

どういうこと?

俺の経験則では、こんだけすんなりいった相手って、会うのもすんなりな筈なんだよ。

例外パターンに突入って訳だな。

ちょっと混乱し始めたんだ。

「えっなんで?」

「そう言ってあるじゃん」

俺の頭は「?」でいっぱいになった。

一応、アプリを開いてプロフィールをみてみた。

自己紹介文に、「会うのはNGです」と書いてあった。

おいおい、マッチングアプリって出会い系とも言うんだぞ?

出会うためにあるのに、出会わないなんてあるのかよ?

マッチング率の調子が落ち始めてたから、なんか食いついちゃった。

「えっじゃあなんでマッチングアプリなんてやってるの?」

「暇つぶしかな」

「暇なんじゃん!」

「でも会いたくはないの」

ははーん。

既婚者だな?

「あ、もしかして結婚とかしてるの?」

「いや。してないよ」

「ん、なんかおかしいな~」

「とにかく、会えないから。」

あきらか、怒ってるよね。

大して知らない人と喧嘩になるのも嫌だったし、連絡を取るのをやめた。




それから、バイトとかサークルとか、就活だなんだでマッチングなんかしてる暇も、する必要もなくなった。

バイトと就活頑張ってれば、出会いはひとまずあるからな。

就活が落ち着いた頃、なんとなくあのマッチングアプリを開いてみたんだ。

「お久しぶりです。彼女は作れましたか?」

あの子だ。

「久しぶり!連絡ありがと!どうしたの?」

「会ってみたくなった。」

「りょーかい!明日の昼とか暇?」

「いいよ。」

そのあと、吉祥寺で待ち合わせる事になった。

なんかオシャレだよね。この時点ではね。


当日、久しぶりの高揚感を胸に、埼玉から遥々吉祥寺に上陸した。

夏も始まりだしてたし、制汗クリーム塗って、ちょっと爽やかな格好してね。

なにかあるかもしれないし、バッグの内ポケットにコンドームもいれておいた。

準備は万端さ。

軽く鼻歌なんか歌いながら、改札の前で待ってたんだけど、アレ、もしかしてバックレ?

そうじゃなかった。

俺に話しかけてきたのは、太ってて、とにかく清潔感とは真逆の人だった。

髪はベトベト、顔はニキビだらけ。

「あのぅ、〇〇くん、だよね」

悪いけど、俺の好みじゃない。

これは別に差別云々じゃなくて、俺のタイプじゃないから、サヨナラするんだ。

「あっ。違いますよ」

俺は逃げるようにして改札に入り、電車が来てたホームに行って、テキトーに乗り込んだ。

あの息切れは今でも思い出せるね。小さい頃に鬼ごっこを全力でやった時の感じだよ。



それから、LINEもブロックしたし、マッチングアプリも開くこともなくなった。

でもこの前、職場の子に振られて、またマッチングアプリを登録し直して、本当に久しぶりに開いたんだ。

そしたら、前に登録してた頃のデータが残ってたみたいで、当然、思い出のあの子のデータも残ってた。

信じられる?

なんであんな美女になれるんだ?

もしかしたら....俺がスイッチ入れたのかもな、なんて思っちゃう。

整形かもしれないけど、でも、綺麗になったもん勝ちだよな。

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