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主人公どころの話じゃない  作者: えるれいん
7/9

6話 縮まる電波の距離

特撮好きとか完璧自分の趣味全開


最近の特撮はストーリーが濃すぎてほんとにニチアサ放送してんのかってレベルです


休み明け、私は眠い目を擦りながら教室に座る。


「なんだ葵、また夜更かしか?」


「んー?あぁ」


「これはしばらくは会話にならなさそうだな」


ケラケラと笑いながら他の友達と話に行く燕治をジトっと睨みはしたが正直そんなことはどうでもよかった。眠い、そっちの方が問題だ。

土曜の夜更けまで桜と特撮ドラマの鑑賞会をして盛り上がった余韻で日曜は一日中ゲームやら映画鑑賞やらしてしまった。


正直超楽しかった。

特に桜と最初に見たあの特撮。

決してニチアサに放送できない大人な内容と過激なシーンだったが、それだけに素晴らしい作品だった。自分の運命に悩まされながらも必死に生きようとする歩く溶原性細胞ことシーズン2の主役枠には涙さえ覚えたレベルであのあと涙を流しながら桜と語り合ったものだ。


そんな私の青春の1ページと化した記憶にふけながらゆっくりと瞼を閉じる。


幸い席が端なのと前の席の田中くんが高身長のおかげでお昼まで爆睡してもバレなかった。

ありがとう田中くん。



─────────────────────

時間は過ぎてあっという間にお昼である


私は今日もコンビニで買ったパンと飲み物を持ち屋上へ


「葵、今日飯どうだ?」


向かおうとしたら燕治がいつものように昼飯に誘ってきた。


「あー別にいいk」


「葵ちゃーん!お昼一緒に食べよう!」


OKの返事を返そうとした直後教室の入口から元気よく私を呼ぶ声がした。

何事かと声のする方へ向くとそこには天真爛漫という言葉の良く似合う茶髪の綺麗な少女、私の彼女扱いの風巻さんがいた。


「風巻さん、こんにちは」


「もー!詩織って呼んでって言ったじゃん」


私の呼び方が気に入らなかったのであろう彼女はぷくっと頬を膨らませる。


「え、あ、ごめん。し、詩織?」


「よろしい!ってあれ、もしかしてお取り込み中だった?」


少々恥ずかしかったがそれでも彼女は機嫌を直したようでやがて私の隣にいる男の存在に気づく


「こんにちは風巻さん。葵と仲良かったのは知らなかったな。あ、そうだなら一緒にお昼でもどう?」


「え、桐山くんも?」


燕治は気さくに誘っているが風巻さんはどうも微妙そうな顔をしている。まぁ、形とはいえカレカノ状態でお昼を食べようとしているのに横槍を入れられるのは嬉しくはないだろうな。

それと燕治が風巻さんを誘った直後から私の視線の端で大和さんがすごく悲しそうな顔をしているのは気のせいだろうか。多分気のせいだ。


「あーごめん、燕治。今日は風巻さんと食べようと思うんだ。その、色々あってさ」


今日は風巻さんと食べることにした私は燕治の誘いを断ることにした。

風巻さんがわぁっと喜んでいたのを見て燕治はなにか察したようで


「...あぁっ!なるほどそういうことか。それは悪いことしたな」


え?何を納得したの?今ので付き合ってることわかったの!?こいつ恋愛疎いはずじゃあ...

と思ったら燕治は私の肩に手を置き少し小さな声で「人生相談だろ?分かってるって」と察しがいいだろ?俺!みたいな顔で言っていた。

あぁ、やっぱ分かってなかったか。


「うんまぁ、そんな感じ。今度詳しく説明するから。...大和さんとお昼でも食べてきたら?前悪いことしちゃったし」


「あぁ、そうだな。女の子を飯に誘うのは緊張するけど、声かけてみるよ」


「おいそれ私が女認定されてないって言うアレか」


「ちょい葵ちゃん!私放ったらかしじゃない?

早く行こー!」


「あ、ごめん。それじゃまた後で」


「あぁ!頑張れよ」


燕治との会話を後に教室を出る。


その後燕治が大和さんに声をかけ

大和さんは顔を真っ赤にした後、ハットした顔に戻り「おのれ水澤さん...」と喜びと悔しさ混じりの表情を浮かべていたそうだ。


─────────────────────


『屋上庭園』


「ここで食べよっか」


いつもの屋上にやってきた私たちは芝生に腰掛ける。

私に続いて風巻さんも腰を掛けるが私の事をにやにやしながら見ているもんで何かと聞いたら


「告白した場所でご飯だなんて、なかなか憎いねぇ葵ちゃん」


「え、いやここ私の休憩スペースなだけで特にそういう訳じゃ...どしたの?」


私の発言を聞くや否や風巻さんは顔をムスッとさせる。


「そーいうのはさぁ、嘘でも頷いてくれた方が嬉しいんだけどなー。男心がなってないや」


「あぁ、なるほど...って私女なんだけど」


風巻さんフィルムで映る私ってほんとなんなんだろう。乙女ではなく漢女なのだろうか。

...精神的健康に良くないなこの考えは


「ま、まぁ、そういうのは今後の課題として考えてくから、ごめんね」


私が謝罪をすると彼女は表情一転笑顔に変わり


「もー冗談だよー。それはそれとして正直に謝ったりするのはポイント高いかも」


「ポイント測定とかあるんだ」


「女の子には常備されてる機能なのです」


「私その機能ないんだけど。腐ってるのかな」


「ぶふっ、腐ってるって何、ふふ。やっぱ葵ちゃんって面白いね」


私のボケがお気に召したようで吹き出してしまった。

あった時から思ってはいたけど表情豊かな子だなぁ。


それからしばらく2人で談笑しながらお昼を食べていると私はふと思ったことがあった。


「そう言えば何で私を彼氏に選んだの?」



「え、どタイプだったから」


即答するとかマジモンかよ


「あいや、そうじゃなくて。ほら私って周りから好かれてないじゃん?で、その元凶がいるわけで」


「それって桐山くんのこと?」


「まじか元凶で通じるとかアイツも悩める羊くんだな。まぁ、そうなんだけど私てっきり風ま...詩織は燕治が好きなのかと思ってたよ」


私の、というかこれは多くの人たちが思っていたと思う。風巻さんは白駒の中でも上位に君臨するレベルの可愛さを持っている。人気は高い。

そしてそれと同レベルで人気を誇る燕治、

当然男女からの信頼も厚い。


ので私も最初は例に漏れず風巻さんも燕治を好いているのでは?と考えていた。


しかし私の疑問に風巻さんはたははと笑い応える


「あーそうだねぇ。確かに桐山くんはかっこいい!ほんとイケメンだと思う!何より性格も出来てるよね!だけどさっきも言ったけど私が好きなのは葵ちゃんなわけでちょっと違うんだよね。

それにあの桐山くんレースには勝てる気もしないし」


「私じゃなくて私みたいな男の人、がタイプなんでしょ?」


「もー!今は葵ちゃんがいるからいいの!」


そう言って私の腕に抱きつく。

ちょ、距離が近い、いい匂いする。

私が男なら卒倒もんかもしれない。


「で、でも見た目はそうでも実際しばらく一緒にいたらなんか違うなってなるかもよ?」


「そんなのわかんないでしょ?これから色々知っていけばいいんだよ...あ、そうだ!」


彼女は思い出したかのようにスマホを取り出し


「連絡先!交換しよ!」


んっ!とどこかのジ〇リ映画の少年

みたいにスマホを突き出す彼女に私は

あぁそう言えば交換してなかったなと自分のスマホを取り出す。


「土日誘おうと思ったんだけどね、舞い上がって連絡先渡すの忘れちゃっててねーあはは」


「そうだね、でもこの間の土日はどのみち予定あったんだよね」


「そっかー残念...はっ!まさか既にほかの女と!う、浮気かな!?」



「男という発想はなかったんかい。

ちょい身内と遊んでたんだよ...ほら終わったよ」


交換の終わった私のスマホを覗くと画面には


『詩織』と書かれている。桜意外の女の子と連絡先交換するなんて初めてなのでちょっと嬉しい。

あ、なんかニヤニヤしてるかもしれない。気をつけよう。


「これでいつでも連絡取れるね!...なんでニヤニヤしてるの?」


「うぇ!?あ、いやなんでもない!」


普通に顔に出てしまってたか。

次から気をつけよう。そう戒めた直後ピロッ!

と着信音が鳴ったので画面を見ると


詩織『よろしくね!o(≧▽≦)o』


口頭でいえばいいのに、と微笑ましく思いながら私も『よろしくね』と返信する。


...何も返事がない

顔を上げると彼女は画面をのぞき込んだまま黙り込み、よく見ると頬が少し赤く口元も緩んでいる。


「ど、どうかしたの?なんか変なことした?私」


「へ!?いやちがうの!えっと...」


彼女は少しオロオロした後


「今のやりとり、カップルっぽいなぁって...えへへ」


素直に可愛いと思った。

こういう所が愛嬌があって人気があるのだろう



(恋をしたことの無い私が恋する少女のお手伝いだなんて皮肉が聞いたもんだなぁ)


そんなことを考えながら

その後もスマホのトーク画面を覗き込んではニヤニヤしている彼女を微笑ましく見守る私がいた。




『お昼、B組教室』


「き、桐山さん、こここのお弁当私が作ったんですけど、良かったらお一口どうでしょうか!?」


「え、手造り!?大和さん料理もできるんだすごいなぁ。あ、ハンバーグ!俺ハンバーグ好きなんだよね!」


(あぁ、この子供らしい無邪気な笑顔...そしてそれを引き立たせる素晴らしい顔立ちっ!

あぁ...幸せっ!)


「うん、旨い!お肉もふわふわしててすごく美味しいよ!ってあれ!?大和さん鼻血出てるけど大丈夫!?」


「あぁ、優しいっ!」 バタっ


「大和さあぁぁぁぁぁぁんっ!!!」

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