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主人公どころの話じゃない  作者: えるれいん
6/9

5話 私の大事な家族

ちょっと3話の屋上庭園での燕治のセリフを増やしました

私と風巻さん...もとい詩織との偽交際関係が築かれた次の日、土曜日に入った私は朝からアルバイトに入っていた。


喫茶店「チェルシー」

うちのマンションから徒歩10分ほどにある

やたら甘いミルクレープが推しのお店である。

私の父とそこのマスターさんは古い友人で

1人で暮らしている私の事をよく気にかけてくれるしバイトもさせてくれている。


「誠二さん、おはようございます」


入口の扉を開けベルの音が鳴る。

すると奥から30代程の眼鏡をかけた男性がやって来たので私は挨拶をした。


「お、葵ちゃんいらっしゃい。あと出来ればマスターって呼んで欲しいかな」


「今日はあんまりお客さんいないんですね。桜は?」


「桜は今、買い出しに行ってるよ。苺の発注をうっかり忘れててね。お客の方はこないだ出来たパンケーキ屋さんに流れちゃってるかなぁ、戻ってきてくれるといいんだけど」


「また発注し忘れたんですか?よく持ってますよねこのお店。そのうちほんとにお客さん来なくなっちゃいますよ?」


毎度忘れ物の多い彼だが逆にそのうっかりさんが可愛いと評判でリピーターがいたりする。


「ははは、おっしゃる通りで」


僕も歳かなぁ、と三十路がよく分からないことを言っていると扉のベルが鳴る。


「おとーさん、苺買ってきたよ。しっかりしないとお店潰れちゃうかもだよ」


「おかえり桜」


「あ、アオちゃーん、今日シフトだっけ?」


白髪の小柄な女の子が私の姿を見つけ駆け寄ってくる。

彼女は笹倉 桜(ささくら さくら)。この喫茶店の店長笹倉 誠二(ささくら せいじ)さんの一人娘さん。2人と私でこのお店を切り盛りしている。桜と私は小学生の頃からの付き合いで

よく両親がお互いの子供を連れて遊びに行っていたことから仲がいい。

年齢は私の一つ下で十五歳だが、見た目でいえばもう一、二歳若くとても可愛らしい顔をしている。特徴的なのはその真っ白な髪色と青色の瞳。何でも血筋の中に外人の血が混じっていたらしく彼女はその先祖返り、隔世遺伝ということらしい。

前下がりのショートボブに少し垂れた大きな目がとても愛らしい子だ。

そして何より性格の優しい子でいろんな所に気を配ってあげられる。私にも懐いてくれている自慢の妹分だ。


「そ、桜も今日は手伝い?いつも頑張るね」


「おとーさんが頼りないから仕方ない」


「ふふ、確かにね」


のんびりした喋り方でサラッと酷いことを言うが

まぁそこも愛嬌だろう。


「娘にまでも言われちゃうんだなぁ」


お父さんも微笑みながら小粒の涙を流しているのだから恐らく嬉しいのだ、たぶん。


桜は買ってきた苺の詰まった袋を厨房に置いてくると私の元へまたトトトと駆けてきた。


「アオちゃん、バイトおわったら暇ー?」


「んー、特に予定はないかな。...あ、もしかして」


「ふふふ...お察しの通り、届いたんだよ...例のブツが」


桜はどこからから郵便で届いたであろう小包を取り出し私に見せびらかしてきた。


「今日はこれで鑑賞会でもしようと思って、一緒にどう〜?」


中に入っているのは間違いなくBluRayだろう。

一緒にどう、というのは私と一緒にみたいということで恐らく今日1日泊まってかない?という意味である。明日の用事も特にないので私は二つ返事で返す。


「もちろん、いいよ」


「やったー!それじゃお菓子とジュース買いに行こー」


ぴょんぴょんとはねて喜ぶ桜を見て私も微笑ましくなる。すると誠二さんも困ったように笑う


「買いに行くのはいいけど今は働いてね、あと途中で買い食いもダメだからね、夕飯食べられなくなっちゃうから。あ、そうだ。葵ちゃんは晩御飯どうする?うちで食べる?」


「一度家に帰って準備して...そうですね、頂きます」


「うん、わかったよ。それじゃ今日の夕飯は葵ちゃんの好きなブリ大根だね」


「相変わらずおっさんみたいな趣味だよねアオちゃん」


「なんでや、ブリ大根美味しいやろ」



─────────────────────



「それじゃ桜、ちょっと待っててすぐ着替えとってくるから」


「あーい」


バイトを終え桜とお楽しみの為の買い出しに行くついでに先に私の住むマンションによってもらった。

タンスから適当な服をバッグに突っ込み

泊まるための準備をする。

そんな中ひとつ思うことがあった。


(そう言えば風巻さんと連絡先交換するの忘れてたな)


偽とはいえ交際することになったのだ。

連絡先くらい聞いても良かったかもしれないが

事が事だっただけに少しテンパっていたのと

同性の人と仲良くなれるかもという気持ちが前に出すぎて忘れてしまっていた。

ラノベやマンガなら今頃デートでもしているのだろうか、まぁこんな関係自体よくある話ではない。


桜や誠二さんがこの話を聞いたらどんな顔をするか見てみたいな。


誤解を生まないために親しい人には話していいって風巻さん言ってたし夕飯の時に言ってみようかな。最初は「恋人が出来た」だけ言ってみよう


ちょっとした悪戯を考えながら私は荷物を持って桜の元へ向かう。


「お待たせ桜」


「よし、いこー。特撮トークしながら行こー」


「後で鑑賞会するのに?」


「それはまた別腹ってことでー」



今晩が楽しみだ。



─────────────────────



「おかえり、ちょうど夕飯できたから手を洗っておいで」


お店(裏は笹倉家)にもどると香ばしい匂いを立たせながら誠二さんが笑顔で出迎える。


この人いつも笑ってるなぁ。安心する笑顔だ、と思いながら桜と手を洗いに行く。


やがてテーブルに料理を並べ3人でいただく。


「「「頂きます」」」


形の崩れることなく綺麗に煮込まれた鰤を箸でつまみ大根と一緒に頬張る。

濃すぎずそれでいて味わい深い料理に何度目かわからない感銘を受ける。米がとまらない。


この人本当に料理美味いなぁ。

昔いろんな料理店に修行に出たことがあるって聞いたけどその成果がこれなら本当に大したものだと思う。


「あ、そうだ2人に言わなきゃいけないことがあったんだ」


「「?」」

柔らかく煮込まれたブリ大根に舌づつみを打ちながら私は早速風巻さんとの話を始める。


「私、恋人ができたんだ」


「ほぁ!?」


「え!?本当かい葵ちゃん!」


2人は案の定驚いた顔をしている。


「あ、アオちゃんに恋人...嘘でしょ」


「相手は一体...あ!もしかして燕治くん?」


「燕治兄!?アオちゃんまじ!?あの腐れイケメンと付き合ったの!事件だよこれ!全然ベストマッチじゃないよ!」


桜に関しては思った以上に驚いている。

これ以上黙ってるとやはり誤解を生みかねないのでホントのことを言おう。


「ちがうよ、燕治なわけないじゃん。誰があんな腐れイケメンとw」


「だ、だよねー。そんなわけないよね」


「燕治くんへの熱い風評被害が...。じゃあ相手は誰なんだい?」


2人は再度相手は誰だと私の話に食いついたままだ。婚前の両親を見ているようだ。


「えっとね、相手は風巻詩織っていう女の子で」


「ぶへっ!」


直後誠二さんが飲んでいたお茶を吹き出した。


「お、女の子!?え、それって彼女さんってこと!?...巷で言う百合って、あっ(察し」


「女の子同士...いやでもカップリング的にはアオちゃんが彼氏役でも無しではない?となると相対的に彼女さんの方が受けでアオちゃんが...あっ(察し」


しまった。真実伝えた方がインパクトデカすぎてさらなる誤解を。あっ(察し)じゃないよやめなさい。

桜に関しては遠い目で何かを語っている。


「ち、違うんだってこれには深い訳があって」


「女の子同士で付き合ってて深い訳っていったいどーいうことなのアオちゃん!」


「だーもう、いいから話聞いて!」



その後20分の説明につき納得してもらえた。


「ふむ、理由が理由だけどそれは本当にすごいことになったね」


「てゆーかアオちゃんよく引き受けたねー」


ようやく落ち着いた2人と私は食べ終えたお皿などを片付ける。


「なんていうか、あそこまで言われたらほっとけなかったって言うか。何ていうかで」


「まぁ、アオちゃんらしいと言えばらしいけど」


「そこが葵ちゃんの優しいところだよね。

それに良かったじゃないか、同年代のお友達が増えて」


誠二さんめ、少し気にしてたことをサラリと


「そこを言われると...まぁ、そうなんだけど」


「やっぱ友達少ないの気にしてたんだーアオちゃんかわいーねー」


「調子に乗らないの」


「ふぎゅー」


私にマウントとろうなんて一年早い。

頬つまみの刑だ。


「ぷはっ。それにしても風巻詩織って二年生の人だよね。白駒三大美女の『ヒロイン』ってあだ名の」


私の頬つまみの刑から抜け出した桜は先程話した彼女の話題をあげ出す。


「あ、そっか。桜今年から家の学校だっけ」


「そうだよー。これでもう寂しくないねー?」


「またこの子はー!うりゃ!」


「ぷげー!」


「風巻詩織ちゃんねえ、白駒にはすごい子がいるって噂を聞いたことはあるけどまさかそんな子と関係になるなんてね」


「うん、私も驚いた。...やっぱ変かな?」


まぁみんな普通は変だとは思うだろう。

こんなことしてる人なんてほとんどいないし私だって聞いたことない。

だけど誠二さんと桜は笑うこともせず答えてくれた。


「確かにビックリではあるけど、その子も本気だったんだろうし、葵ちゃんも力になりたくてOKを出したんだろう?おかしいことなんて何も無いさ。何か困ったことがあったらいつでも頼るといいよ。できることは少ないけど協力はするから」


「そこがアオちゃんのいー所だし

かっくいーところだよ!自信持つべし」


「ありがとう、二人とも」


なんだかここまで言われると逆にムズ痒い気もしてくるが。嬉しくもあった。


─────────────────────


『桜の部屋』


夕飯を食べたあと私はシャワーや色々準備を済ませて桜の部屋に来ていた。

桜の部屋はわりと女の子女の子した部屋ではなく。マンガやポスター、BluRayBOXやDVDなどで埋め尽くされた少年みたいな部屋だ。


実は私の趣味は大体桜から影響されたものが多かったりする。


そして今日桜の部屋に来た理由は朝も話していたとあるBluRayにある。


桜は少年漫画やアクションが好きだったりするのだがとびきり大好きなのは特撮物で、特に仮面〇イダーのシリーズをこよなく愛している。


さくらが通販で取り寄せた小包にはそのシリーズで桜が前々から欲しがっていた作品が入っていて

今日は2人でそれを見ながら夜更かししようという計画だ。


「今回はなかなかハードなストーリーだったり血飛沫とかバンバン飛ぶけど、アオちゃん平気だよね?」


「そーいうのには結構耐性あるよ。最近の特撮ってそんなのばっかだったり?」


「いや、これが飛びきりすごいだけ」


最近の特撮は色々あるんだなぁ、と思いながら

桜がテレビにディスクを入れるのをぼーっと見つめていると


「アオちゃん」


「ん?どしたの桜」


「夕飯の時の話、ほんとに驚いた。

でもさ、話を聞く度にやっぱアオちゃんは凄いなぁって思った」


珍しい。話が話ではあったが桜がこんな真剣に話してくれるなんて


「あたしもアオちゃんにお友達が増えるのは嬉しい、アオちゃんのことちゃんと見てくれる人が出来るのも嬉しい。けどね、もし何か辛いこととか嫌だなって思うことがあったら言ってね。

あたしもアオちゃん大好きだから、力になりたいんだ」



「...ありがとね、桜」


「...よし!セット完了!お菓子もジュースもOK。今夜はひとっ走り付き合ってもらうぜ!」



本当にいい妹分を持って私は十分幸せだ。

















とある星を破壊する異星人のせいで

父親キャラや喫茶店のマスターが信頼出来なくなりますよね。おのれエボルトォォォォ!!!

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