1話 新学期
ピピピピピピピピピピ!!!!!
耳元で鳴る電子音で目を覚ます
盛大に朝を告げながら右へ左へ超高速で振動する目覚まし時計に手を伸ばす
「ぐ...んぐ...ぐっうぅぅ...」
ガチッ
「…毎日が祝日になればいいのに…」
伸ばした指先で目覚ましのボタンを止め重い頭を持ち上げる。
毎朝起きるのに苦悶する憂鬱な思考に心の中で嘆きながら跳ねた黒髪を抑え、洗面台の前まで到着。いつも通り顔を洗い歯を磨き、誰もいないリビングに向かいキッチンのトースターに食パンを突っ込みスイッチを押す。
待ってる間にもう一度自分の部屋へ戻りアイロンのかかった制服に袖を通しながらふと思い出す。
(今日から2年か...階段上がるの面倒なんだよなぁ)
そんなことを考えながら2年を示す緑のピンをブレザーに付け
焼きあがったパンにジャムを塗りたくりながらあらかじめ付けていおいたテレビを観る。
どうやら今日は快晴らしく、進級式、入学式前にはもってこいだと キャスターは明るい笑みで話していた。
「...少なくともそれは無いな」
当の本人達からすれば賛否両論ありそうな話だが
個人的には遠慮願いたいと鼻で笑いながら呟く。
その後もテレビを見るうちに気づけば家を出る時間、パンをインスタントコーヒーで流し込み軽いリュックと家を出る。
エレベーターを降り5分歩くと見えてくる改札を通り10分少しの電車に揺られ人混みに揺られ、ふと車窓を見ると自分には不釣り合いな胸元の緑のリボンが歪んでいたので整える。
電車を降りて少し歩くと同じ服を着た人達が校門をくぐって行くので同じように自分も進む...
すると背後が少し騒がしくなる。だが、これはある人物が来るとお決まりで起こるようなものなのであえて無視をしているとそいつはこちらに気づいた様で自分から駆けてくる。
軽快な足取りでかけてくる茶髪で顔立ちの整ったその青年は私の肩を叩き
「ういっす、葵!」
「あー...燕治、おはようさん」
朝から元気な野郎だなと適当に挨拶を返しておく
「気づいてて無視してた癖によく言うよ。
新学期始まっても変わらないなお前は」
「春休みで人が変わるとか逆に心配にならない?」
「確かにな。でもお前はもっと愛想良くした方がいいと俺は思う。友達できないぞ?」
「半分はお前のせいだってことを忘れんなよー」
そんないつものやり取りをしながら周囲の人へ目を向ける。
やっぱ見てるなぁ、皆。
と言ってもこれは主にこちらを見てるのではなく
隣にいるこの男、桐山 燕治はこの学校内でトップと言っても過言ではない容姿、学力を備え、運動部の助っ人に入れば好成績を残して帰ってくるレベルの運動神経という天に二物も三物も与えられたハイスペックヒューマンである。
学校を歩けば注目の的。その性格の良さから女子のみならず男子からも人気が高い。
ので今回も例外なく周囲の目線を集めている。
...いや、ひとつ訂正しようかな。
さっき主に自分を見ている訳では無い、と言ったな、あれは嘘だ。
見られている、女子から。それもすごい睨みを効かされながら。その理由はわかってほしい。
「おかげでこっちは朝から憂鬱だよ。
ほらほら、ピク〇ンよろしく男女引き連れてさっさと行きなさいや」
「いや何ピク〇ンだよそれ。いいじゃんかせめてクラス分かるまで一緒に行こうぜ、幼馴染だろ?」
「はあ...わかったよ」
屈託のない笑顔を浮かべる燕治に諦めた私は
2人で靴を履き替え1階に貼られたクラス表を見上げる。
もう高二にもなるのだからいい加減ワクワクもしないんだけども「なんかいつになってもこういうのってドキドキワクワクするよなぁ」
まぁ例外はあるかもしれない。
その様を見て周りの女子達も「燕治君可愛い...」
とか「私は今年は一緒のクラスにっ!」などと言っている。
「お、B組だ。...おい葵やったな!同じクラスだぞ!」
「うへぇ...マジ?」
「なんでそんな嫌そうな顔するんだよいつもの事だろ?...ま、いいや、教室行こうぜ」
そりゃいつもの事だよ。小学校から今までずっと同じクラスだよ。だから嫌なんだよ
そう頭の中で愚痴りながら階段を登り教室へ入り
スカートがめくれないように座る。あいにく燕治は名前的に席が遠いく、周りのクラスメイトと話をしているのでこっちには来ない。
のでイヤホンを装着し周囲の世界からシャットアウト、眠りにつく。途中先生が入ってきて話を始めたので首元まである髪を掻き分けイヤホンを外し机に突っ伏す。
私、女子高生の水澤 葵は再度眠りについた。