歌姫・風の村関係者
【紹介人物一覧】
シレルレオネ・ナルタセオ・ラセルエリオ・ラグセリオ・シラルトリオ・カロルレギオ
ウル・レクルピオネ・アルカフーオ・ミオサウル・カリビアネオ
イオレウス・シグルラウネ・イルルレーア・メリオーネ
シレルレオネ
数多の獣を従えてレゾニア王国を滅ぼし、姫巫女メイシャンを長き流浪の旅路へと追いやった終の歌姫、故人(享年23歳)。
風守りの祭祀長ラグオリオの年若い孫娘であり、一族の中でも屈指の力を内に秘めていた。元は優しく朗らかな少女であったが多くの一族を失ったことで暴走、神より賜りし愛し子である獣たちと心を通わせ、その多くを自らの支配下に置いたのち一族滅亡の遠因となった炎神の末裔たちの王国を悉く滅ぼした。
のちに王都にて姫巫女となったばかりのメイシャンと対峙、力を使い果たし共倒れとなったところを将軍ガデル以下の一族による封印を受けて、そのまま王都の地から動けなくなる。
その後、世話役として宛がわれた人間の少年、イオレウスと心を通わせ合いのちに心を開くことになる。
炎の王であるリュウシンが王都奪還を成し遂げた後も不気味に存在感を保ち、メイシャンとリュウオウが王都を訪れた時、ついにその姿を現した。復讐を望むメイシャンをリュウシンが諭したのちに、その身を蝕む王の炎によって力を奪われた。
その後、決戦を目前に控えた王都からナルタセオ達一族の者たちに守られて北の地に逃れた風の民は険しい白の山嶺の一部に村を築いて永住。その地にて、二人の娘を設けた後、短い幸せの中、家族に看取られて息を生きとった。
そのあまりに強大な力は二人の娘によって受け継がれ、のちの世に続いていくことになる――。
ナルタセオ
風の民の長であり大陸を股にかける行商人、百歳以上。
風守りの祭祀長ラグオリオの娘であり、リュウフォンことエルカオネと終の歌姫シレルレオネの叔母でもある。かつて風守りの一族は交流のあった獣使いの戦士団ラグナザレフの裏切りに遭い、一夜で滅び去った。
その時、生き残ったのは強い力を持った歌姫と呼ばれる年若い女性ばかりであった。その後、獣使いの長、将軍ガデルの軍団に囚われた彼女たちは異世界への侵攻へと駆り出され、この世界へとやってきた。
将軍ガデル直属の軍団による北方、栄華の都侵攻に他の歌姫たちとともに加わり、戦いの行方を見守っていた。辛くも勝利を収めたリュウシンの力を認め、その戦いに自分たちの未来を託すことを決める。
その後、人間の傭兵たちに加わり厳しい王都奪還の戦いに加わった。商家出身の傭兵団長クライスから手ほどきを受けており、傭兵連中から巻き上げた資金を元手に商売を始めることになる。
現在はリュウシンとの間に設けた一人息子、ラグセリオを風の村に残して一人大陸中を回りながら商売を続けている。
一瞬で離れた地に移動できる風の加護を利用して商人組合や領主フェリナに有力な情報を提供する密偵の役割も帯びている。
鍛冶師の村の人々とは親しく交流しており、特に同じ子供を持つ母親となったリュウシュンとは仕事上の付き合いを越えて信頼し合う仲でもある。
ラセルエリオ
娘シラルトリオとナルタセオの息子ラグセリオの面倒を見るものぐさな安らぎの歌姫、百歳以上。
風の村に住まう自堕落な女性で、よく北方の街道沿いの酒場に現れてはツケ払いで酒を浴びるように飲んでいる。そのため、各地の酒場からは要注意人物として知られている。
以前は母なる原初に住まう歌姫の一人であったが、終の歌姫封印によって傷つき眠りについていた仲間たちを守るためにともに眠りについていた。
怪しげな旋律を持つその歌声は敵を静かなる眠りへと誘い死をもたらす危険な力を内に秘めている。
王都に到着したばかりのリュウシンと出会い、眠りについていた一族を救うためにその眷属となった。自分たちを救ってくれたリュウシンに強い興味を持ち、その後宮に入り積極的に交流を持つ。
のちに一人娘、シラルトリオを生んだ後は忙しく各地を旅するナルタセオに代わりその息子ラグセリオの面倒も一緒に見ていた。
時折、鍛冶師の村のやってきては村人たちや姫長メイシャンとともに飲んで騒ぎ倒す日々を送る。しかし、その裏ではいまだに戻ることの無いリュウシンを待ち続ける寂しさと悲しみを抱えている。
ラグセリオ
炎の王リュウシンと静寂の歌姫ナルタセオの間に生まれた男の子、5歳。
母親のナルタセオが大陸をまたにかける行商旅で村を留守にしがちなため、腹違いの妹であるシラルトリオと一緒にラセルエリオに育てられている。のんきな性格なため、しっかり者のシラルトリオに怒られることもしばしば。
一族のために働く母親を誰よりも尊敬しており、大きくなったらその跡を継いで商人になろうと決めている。
シラルトリオ
安らぎの歌姫ラセルエリオの一人娘、ややだらけ気味な母親のせいでしっかり者に育った5歳。
まだ幼いため、風の精を満足に操ることができない。そのため、空を飛ぶ風舞の練習を続けているものの、肝心のラセルエリオが極度の面倒くさがり屋のために一向に上達の気配なし。
鍛冶師の村に遊びに来た時には従姉妹のリュウフォンとともに村の空を元気良く飛び回っている。
カロルレギオ
歌姫たちの中で唯一王との戦いに参加した百嵐の歌姫、百歳以上。
解放されたレゾニア王都で炎の王リュウシンの加護を受けて目覚めた歌姫の一人、遥かなる祖先の力を受け継いだ彼女は百の嵐を操るものと呼ばれるほどの実力者であった。
かつて原初の世界において、一族を失った時年上の許嫁を獣使いによって殺されており、ラグナザレフ戦士団を憎む気持ちは歌姫の中では一番強かった。
王都に押し寄せた獣使いの本隊をその荒ぶる旋律に巻き込み、縦横無尽の活躍ぶりを見せる。のちにリュウシンの愛馬であった白馬を譲り受け、大陸各地を旅している。
力の制御が困難なカロルレギオは他の歌姫のように風の加護による飛翔や転移を使いこなすことができないため、ある意味非常に不器用な存在でもある。
ウル(ウルセバイオ)
旧レイアス家の領地北方を治める姫将軍フェルネート母娘に仕える召使、二百歳。
かつては栄華の都を巡る戦いで多くの獣使いや獣たちを従えて、貴族連盟の騎士や傭兵たちと激戦を繰り広げた五人の歌姫たちの一人。
風守りの祭祀一族とラグナザレフ先代王の思惑のもとに滅ぼされた部族の生き残りであり、以前はどこか享楽的で人を寄せ付けない生き方をしていた。歌姫たちの中で唯一、風守りの一族を裏切った導きの歌姫メリオーネの行動を知っており、そのたくらみに加担しない代わりに比較的自由な立場を手に入れていた。
その後、北の都防衛戦で姫将軍フェルネートと直接対峙、彼女に敗れた後は他の歌姫たちとともに領主フェリナの下で力を封じられながら、囚われの身となっていた。
その後、フェリナの紹介もあって産後の肥立ちが悪かった失意のフェルネートのもとに仕え献身的な働きもあって多くの人々の信頼を受けて現在に至る。
過去の生き方もあり、彼女のことを疑うものをもそれなりにいるがようやく自分の居場所を見つけたウルは穏やかで人当たりの好い本来の性格を取り戻している。
収穫祭前夜に鍛冶師の村を主の娘フェルネリアとともに訪れ、リュウレイたちに出会う。
最初は警戒されたものの、レクルピオネの起こした騒ぎを通してリュウレイに深い信頼を寄せるようになった。
レクルピオネ
気弱な性格を隠すために自ら尊大に振舞う魁の歌姫、百歳以上。
騎士姫の異名を取ったフェイアネス・レイアスのもとに居候するさすらいの歌姫。北方の地より呼び寄せた大型の白狼の背に乗り、今日も各地を旅してまわる。あちこちで厄介ごとの依頼を受けてはその報酬をため込んでおり、常に借金に追われているリュウレイに比べればその財政状況は豊かである。
空気を読まずに暴走するきらいがあり、ある意味ではリュウレイ以上に問題を抱えた厄介な性格でもある。
歌姫たちの中では最後まで炎の民に囚われなかった存在ではあるが、王都の戦いが終わった混乱の中、行き場を無くして失意のうちに各地を放浪していた。その後、ようやくたどり着いた鍛冶師の村で、囚われの仲間たちを救うべく無謀にも姉姫アルスフェローに戦いを挑み逆に圧倒的な力の差を見せつけられて、捕らえられた。
その後、フェイアネスの助命嘆願も功を奏して彼女に引き取られる。その際、フェリナとの契約もあって、その眷属となることで各地を巡回してまわる役割を担う羽目になった。
フェイアネスとは気の置けない仲ではあるが、さらにその息子フェアルートは将来の夫としてその成長ぶりに大きな期待を寄せている。
収穫祭が近づいた鍛冶師の村に白狼とともに現れ、厄介で面倒な性格も災いして騒動を起こし、姫長メイシャンやその娘リュウサン、さらには姉姫アルスフェローの怒りを買い、再び謹慎を申し付けられる結果となった。
さらにお守りを命じられたナルタセオの子供、ラグセリオやラセルエリオの娘、シラルトリオを巻き込んで大暴走を展開。最後はかわいい甥姪を危険にさらされたリュウメイによる制裁を受けて、寝込む羽目に陥った。
その後、収穫祭が終わった後に目を覚まして、再び白狼たちとともに鮮やかに去っていった。
その見事な逃亡ぶりはしばし、ふもとの町の人々の間で語り草になったという。
アルカフーオ
政務官フィルセミナの補佐を担当する領主連合の役人、百歳以上。
元はナルタセオ達と同郷の歌姫であり、栄華の都を攻めた歌姫の一人であった。もともと生真面目で余裕のない性格を歌姫メリオーネに利用されていたが炎の王リュウシンに倒され、その力を失っていた。
比較的あくの少ない彼女はエルカオネやリュウレイたちと交流して友情を育み、またナルタセオやラセルエリオたちの口添えもあって、二年ほど前に解放されて当時から激務で各地を飛び回っていた銀髪の公女フィルセミナのもとに補佐官として仕えることになる。
かつての敵でもあったアルカフーオに対する風当たりは強かったものの、与えられた役目に誇りを感じていた彼女は持ち前の生真面目さでそれらをはねのけて職務にまい進。
現在では領主連合盟主フェリナもその働きぶりを認めるほどの信頼を勝ち得る結果となった。フィルセミナの娘フィルラミルの教育も担当しており、賢い彼女の相手にやや頭を悩ませることも。
実は穏やかな性格のフィルセミナに深い尊敬の念と親愛の情を抱いているが生真面目で不器用な性格が災いしてその思いを自然に伝えることができず、一人悶々としている。
フェルネートの信頼を勝ち得て、さらに深い関係を得たウルを目の当たりにして焦るものの、すでにフィルセミナには無くてはならない存在となっている自分に肝心のアルカフーオ自身が気付いてないという滑稽な状況であったことがのちに判明する。
その後、本来の役割を全うした彼女は多くの人々のために尽くす存在としてその名を知られるようになったという。
ミオサウル
カリビアネオ
フェリナの姉、フェルンレアドとフレアマルネスに仕える双子の歌姫、ともに百歳以上。
導きの歌姫メリオーネの母方の従妹たちであり、その力を利用するために生かされたか弱い存在であった。精神的に独り立ちできなかったために優しかったメリオーネの言葉に逆らうことなく栄華の都を攻める役を担う。
その戦いの最中で、リュウシンの加護を得たフィルセミナと対決して敗れ去る。その後、フィルセミナたちの尽力によって自由を得た彼女たちは、交流のあったフェルンレアドたちのもとに仕えることになる。
元は優しい性格の彼女たちは、多くの人々に支えられ幸せな日々を過ごしている。
イオレウス
終の歌姫シレルレオネを献身的に支えた青年、二十三歳。
かつてレゾニア王国が滅びた後、大陸の辺境から王都へと連れて来られた少年。そんな中、王都に封じられた終の歌姫の世話役として宛がわれていた。ややもすれば自ら生きる意志を放棄する寸前のシレルレオネを励まし続け、やがて深い愛情を通わせ合うことになる。
それさえもメリオーネの思惑のうちであったが、彼女が滅びた後は王都でシレルレオネとともに炎神の姫巫女帰還の時を待ちわびていた。のちに炎の王に力を奪われたシレルレオネとともに王都を去り、歌姫たちが永住の地として選んだ風の村に移住する。
その地で二人の娘、シグルラウネとイルルレーアに恵まれたものの、衰弱していたシレルレオネは病没。あとに残された娘たちを守りながら亡き妻の墓を守っている。
シグルラウネ
亡くなったシレルレオネの娘、四歳。
物静かだが、うちに強い力を秘めた風の末裔。風の精に耳を傾けることができ、少なくとも大人に引けを取らないほどの力を操ることができる。母を死に追いやった炎の民を本能的に嫌っており、あまりリュウレイたちに近づくことはなかった。
妹や父、一族の者たちを何より大事なものとしてとらえており、その考えは成長してからも変わることはなかった。
イルルレーア
風の加護によって守られた風の迷い子、二歳。
母が亡くなった意味をまだ理解することができず、父や姉と過ごしている。シレルレオネの墓参りに訪れたリュウレイたちに出会い、亡き母によく似た面影を持つリュウフォンことエルカオネをお母さんと呼ぶ。
その後、亡き母の風に導かれたイルルは鍛冶師の村に一人でたどり着いて、リュウフォン達と再会することになる。短い交流の後、迎えに来た姉のシグルによって連れ戻されるものの、それからは自分の意志で鍛冶師の村を訪れるようになった。
姉に比べて、炎の民に対する嫌悪感はなく、リュウレイやほかの村人にも可愛がられるようになった。
なお、余談ではあるがナルタセオが受け継いだ静寂の力を内に秘めており、風の力を打ち消して死をもたらす禁断の能力を内に秘めている。
成長したイルルはリュウフォンの衣装をそのまま継承することになるがそれは遥か未来のお話であった。
メリオーネ
一族を裏切り、先代の歌姫であった母や姉たちをその手にかけて歌姫の座を奪った災厄の女、故人であり享年百歳以上。
獣使いの将軍ガデルに仕え、その覇業に貢献した。彼女の裏切りによって多くの者たちがその後の運命を狂わされることになる。
栄華の都にて、炎の王リュウシンの軍勢と死闘を演じるものの敗北。のちに将軍ガデルとともにリュウシンの炎に焼き尽くされ、消えていった。