鍛冶師の村関係者
【紹介人物一覧】
リコウ・リホウ・セイリャン・リシン・カリン・ショウヨウ
ゴウケイ・テイヘイ・カイユウ
リコウ(親方)
村の鍛冶工房で親方を務める腕利き鍛冶師でリュウレイの師匠、30歳。
村の若手鍛冶師たちの頭を務め、元締めリュウメイ不在中の工房を預かる弟分。若かりし頃からリュウメイやリュウゲン、村長ゴウケイに鍛え上げられただけあってその腕前は近隣の村や町に鳴り響いている。リュウレイや新入りカンショウにとっては怖い存在である。
その反面、仕事の後の宴や酒盛りでは皆に率先して羽目を外すなど、そうした意味においてもリュウレイに鍛冶師としての生き方を示してきたこともあり、尊敬される反面ああなったらだめだと思われている。
八年ほど前、獣使いの襲撃により村が被害を受けた時母と妹リヨウを亡くしており誰よりも獣使いに対する憎しみは深いものがあった。そうした過去もあり、娘のリホウがリュウシンの息子リュウオウに好意を抱いているのを知り、温かく見守っている。
リホウ
親方リコウと妻セイリャンの長女でリュウオウ達の幼馴染、5歳。
リュウオウが生まれる二月前に生まれた女の子で、誰にも物怖じしない気の強いところがある。わがままなきらいがあるリュウサンにもはっきりとものが言える唯一の存在であり、村の女の子たちからは頼りにされている。
母のセイリャンをよく手伝い下の弟たちの面倒を見るしっかり者だが、リュウオウのことが大好きであり大きくなったら結婚したいという思いを胸に秘めている。そのため、同じ思いを抱く年上のリュウフォンとは水面下で対立状態にあったりする。
セイリャン
鍛冶師リコウの妻であり、現在は三人の子供を育てる母親、26歳。
母親は鍛冶師の村出身であり、ふもとの町で家族とともに雑貨商を営んでいる。かつて獣使いの襲撃で故郷の村が滅びたことを知った母親の勧めで、当時天涯孤独の身だった鍛冶師リコウに嫁いだ。十人姉妹で、一族の多くが周辺の町に嫁いでいる。
姫長メイシャンがこの村にたどり着いた時は既に身重であり、同じ時期にリュウオウを身に宿していた彼女とは妹セイランを通して交流を重ねていた。
穏やかな性格で夫を支え、子供たちを育てるしっかり者だが一度怒ると村でも噂になるほどの怖い人でもある。
リシン
村の女衆のまとめ役で、リュウレイたちの姉貴分、26歳。
かつて戦場で獣使いとの戦いを生き抜いた傭兵上がりの手練れ。リュウレイたちがこの村に住み着いたのとほぼ同時期から村に滞在しており、現在は鍛冶師リハクのもとに嫁いで一人息子リトクを設けている。
何かと対立しがちな、村の女たちと旦那衆の折衝役を務めたり、宴や集まりなどで村人たちの先頭に立ってその場を切り盛りする。
体調を崩し病床にある村長ゴウケイの面倒を見たり、手間のかかる妹分リュウレイの稽古相手を務めたりと多忙な日々を送る。
リシンもリュウメイを姉貴分と慕う身だが、かつては無謀にもリュウメイとリュウシン姉弟に飲み比べを挑んでその借金を丸ごと背負うなど悲惨な目にあわされた経験を持つ。
それゆえ、何かと村を留守にしがちなリュウメイへの愚痴を浮かべるリュウレイを宥める役を担うこともある。
面倒見の良い、裏表のないはっきりとした性格であり多くの村人から慕われている。
元傭兵仲間のカリン、ショウヨウとは苦楽生死を共にした間柄であり、深い信頼関係で結ばれている。
カリン、ショウヨウ
リシンの妹分で同じ時期に鍛冶師の村に嫁いだ元傭兵、それぞれ25歳。
リシンと同郷であり、生来を誓った男たちや身内の若者が獣使いとの戦いに赴き帰らなかったことをきっかけに復讐のために傭兵となった。腕利きの傭兵団長クライスの下で各地を転戦、のちに炎の王となるリュウシンを迎えるための帰還に付き添い、結果としてリュウメイとの飲み比べで発生した借金返済を理由に居残りを命じられた。
しかしそれは彼女たちの将来を見据えた、クライスの恩情であったことがのちに判明する。
戦いが終わった後は村の復興に尽力。それぞれ懇ろな仲になった、鍛冶師のカシンとショウサイのもとに嫁ぎ、娘のカレンとショウリンを設けている。
二人とも姉姫アルスフェローの館に近所に住んでおり、同時期に子供が生まれたこともあり家族ぐるみの親しい交流を重ねている。
二人ともまだまだ武芸の腕は健在であり、時折妹分のリュウレイやカンショウの稽古相手を務めている。
ゴウケイ
かつては北の地にその人ありと知らぬものは無いほどの盛名を誇った名工であり、村長、75歳。
若かりし頃から無鉄砲で知られ、リュウメイの祖父リュウエンとは犬猿の仲で知られた。村はおろか大陸で一番の鍛冶師となることを夢見て、古の技法を伝えるという大陸東方の地に修行に赴いていた。
そこで若き日のリュウゲンと老師ジンライに出会い、10年余りにわたり研鑽に励む。故郷に戻る直前、リュウゲンと義兄弟の契りを交わして村を訪れることを誓い合った。
その時の縁がもとでリュウゲンは北の地を訪れ、リュウ家の娘リュウショウと出会いのちに婿入りするきっかけとなった。
60歳を迎えたころにそれまでの無理がたたって腰を痛め、鍛冶師を引退した後は温厚な村長として後進の育成に当たってきた。
獣使いとの戦いが始まった時、武器や防具の増産を奨励して側面からその戦いを支えていた。その配慮がのちに仇となり、獣使いの報復を受けて女子供ばかりが惨殺されるという悲劇に遭う。
その襲撃で跡継ぎと期待した孫のゴウエンを失い、天涯孤独の身となった後は生き残った村の若者たちとともに村の復興と獣使いへの復讐の機会をうかがっていた。
そんな折、滅びたレゾニア王家の姫君メイシャンを連れたリュウシンが帰還して村は大きな驚きと喜びに包まれた。王都奪還に旅立つリュウシンを見送った後はあとに残されたメイシャンたちを支え、村の男たちを叱咤して武器の増産に励んだ。
王都の戦いののち、行方知れずとなったリュウシンに全てを背負わせてしまったことを何よりも深く後悔しており、その帰還を誰よりも強く待ち望んでいる。
リュウ家の跡取り娘、リュウレイの成長に期待しており、彼女を技術的にも精神的にも教え導く師匠の一人でもある。鍛冶師として独り立ちできないことに焦りを募らせるリュウレイに納剣堂のことを教え、また村の奥地に眠る禁足地のことを伝えていた。
のちにリュウレイが見事独り立ちを果たした後は自分の役目が終わったことを悟り、誰にも看取られることなく、一人静かに息を引き取った。
そのあまりに大きな功績は村人たちに大きな足跡を残し、葬儀においては姫長メイシャンや姉姫アルスフェロー、領主フェリナの三者による炎の下、荼毘に付された。
のちにリュウレイは、独り立ちの儀で打ち上げた裏打ちを納剣堂に納め、残る真打ちを恩人である村長ゴウケイの墓所に収め、さらなる研鑽に励むことを誓ったという。
テイヘイ
農家も兼ねる熟練の鍛冶師、54歳。
昔から農家と鍛冶師を兼業していたテイ家の主であり、ふもとの町に嫁いだ娘夫婦に後を任せ現在は気ままな暮らしを送っている。村についたばかりのリュウレイたちに農業を手解きしてくれた恩人であり、器用な手先から細工ものを教えてくれた人でもある。
リュウシンを幼いころから知っており、彼からも慕われていた人格者である。
カイユウ
岩牢の管理を任された若手鍛冶師、28歳。
村の高台にある岩牢の管理を代々務めてきた、リュウレイの先輩鍛冶師。親方リコウにも引けを取らない腕前であり、リュウレイやほかの鍛冶師たちからも頼りにされている。