表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。

けんちん汁

作者: 馬猿

この間の正月、実家に妻と2人の子供を連れて行った。


毎年盆と正月は、兄の家族と両親が暮らしている実家に兄妹一同集まることにしている。


兄や妹の家族もみんな集まり、夕食の色とりどりのおせち料理に舌鼓を打った。


居間の大きな掘りごたつにも人が入り切らないので、掘りごたつには大人達が座り、料理と酒と世間話で盛り上がった。


引き戸越しには、兄が近年リフォームしたダイニングキッチンがあるのだが、テーブルには、私達兄妹の子供達が着いていて、はしゃぎながら料理をつまんでいた。


子供どうし、食事中にもかかわらず、時折席を離れて遊ぼうとしては、妹やそれぞれの親達に注意される。


母と妹はキッチンで会話を楽しみながら、何か煮込んでいる最中だった。


家族が一同に集まり、にぎやかになるのはこんなときぐらいしかない。


しばらくすると、妹がみんなにけんちん汁を配った。


お椀には具がいっぱい詰まっていて、香ばしい匂いが漂っていた。


みんなでけんちん汁をすすり合っていると、うちの幼稚園の年長組の上の息子が掘りごたつにいる大人勢のところにやってきた。


ちょうど兄のそばにやってくると適度にお酒が入ってご機嫌な兄は、

「おおっ、どうした?」

と言いながら私の息子を引き寄せ、頭を撫でた。


すると息子は突然、「けんちん汁の『けんちん』って犬のち○ち○のこと?」


一瞬沈黙が漂った。


それはあたかも時が止まったかのようであった。


ただ、けんちん汁の湯気と香りだけが時と無関係に部屋中を漂っていた。


その沈黙の後、ドッとみんなの中から大きな笑いが渦巻いた。


「何だろうねぇ…」といいながら、再び大人達は話をはずませ、子供達はやんちゃにはしゃいだ。


こんなときでしかない親類一同での団欒に花を添えたのであった。

評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ