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兄貴とたけし

初投稿です。

温かく見守って下さい。


 夕闇が迫る商店街に、一人の青年が歩いていた。

 体が大きく目付きの悪い青年は、人となりを良く知る者からさえ、視線を避けたくなる威圧感が有った。

 それゆえ、青年はいさかいに巻き込まれる事が多く、その全てを力づくで解決していった。

 青年は元来、理不尽な暴力は奮わない。

 その容姿から、何時も絡まれるだけであり、トラブルを解決しようと首を突っ込むだけであった。

 いつしか、界隈では青年を知らぬ者は居なくなり、街の顔役になっていた。


 今日の青年は浮かれていた。

 商店街連中が、思わず声をかけてしまう程に。

「兄さん、今日はご機嫌だね。何か良いこと有ったのかい?」

「あぁ! これから有るんや」

 弾んだ声で答える青年。

「急いでるから、またな!」

 そう言うと青年は、古い雑居ビルの中へ消えて行った。


 青年はビルの一室に入ると、直ぐさま声をかけた。

「たけしぃ~。おらんのか~! たけしぃ~!」

「なんや、どこ行ったや、たけしのやつ」


 数分後、部屋の扉が開かれ一人の少年が入ってきた。


「今日は早かったっすね、兄貴」

「何やたけし。おったなら返事位せぇ!」

「いや、今帰って来たっす」


 たけしと呼ばれた少年は、ガリガリと痩せていた。

 また、飄々とした雰囲気のある少年だった。


「ところでたけし。例の件はやってくれたんやろ?」

「プリンなら買って来たっす」

「それや無い! あっいや、それも頼んどったんか。ありがとう」

「で、どうしたんすか?」

「どうしたってお前。先週一緒にホームセンター行ったやろ」

「行きましたね」

「そん時見つけたあれ、買って来い言うたやろ」

「あ~、それなら下に置いて有るんで、ちょっと待ってて欲しいっす」

「はよせえよ。大切に扱うんやで」

「大丈夫っす」


 少年は、明るく答えると、すぐさま部屋から出ていった。


 少年は青年を兄貴と呼ぶが、血の繋がりは無い。

 両親を無くし、頼る親戚も居なかった少年を引き取り養ってくれたのが青年である。

 少年にとって青年は、恩人であった。

 以来、少年は青年の使いっぱしりとして生活してきた。


「兄貴の言うことは、時々難しいっす」


 部屋に一人残された青年は、独りごちる。


「嬉しいわ。めっちゃ嬉しいわ。やっとや、やーっと手に入るんや。可愛いがったるで~。良い子良い子したるで~」


 浮かれていた。躍りだしそうな程に浮かれていた。


「あれやな。色々買わなあかんな。何を用意すれば、ええんやろ? まあ、たけしが聞いとるはずやし、問題ないやろ」

「たけし、早く戻って来んかな?」

 上機嫌な青年と共に、部屋の雰囲気はいつにも増して穏やかだった。


 数分後、再び少年が部屋へ戻ってきた。

「連れてきました兄貴。可愛いでしょ」

「あ~可愛いな~。めっちゃ可愛い、ってこれおかしく無いか?」

「何がっすか?」

「俺が頼んだのこれか?」

「そうっす!」


 穏やかだった空気は一変し、やや不穏なものへと変わっていく。

「たけし、これちゃうやろ」

「何がっすか?」

「これなんや?」

「チャウチャウっす」

「俺が頼んだチャウチャウちゃうやろ!」

「何言ってるかわかんないっす!」

「だから! 俺が頼んだチャウチャウちゃう言うとんねん」

「チャウチャウチャウじゃなくて、チャウチャウっす」


 噛み合わない二人の会話は続く。


「お前なめとんのか!」

「兄貴、何怒ってんすか? こいつ可愛く無いんすか?」

「可愛いわ~、ってそうやない!」


 青年は、少年を諭すようにもう一度訪ねた。


「いいか? もう一度聞くで? これなんや?」

「チャウチャウっす」

「ちゃうわ!」

「兄貴、チワワが欲しかったんすか?」

「もうええ。返してこい!」


 項垂れる青年。訳がわからず、首を傾げる少年。


「兄貴、何が不満なんすか?」

「俺が頼んだチャウチャウとちゃうからや!」

「それなら、早く言ってくれれば良いのに」

「最初から言ってたやん・・・」


 青年は更に項垂れる。

 しかし、少年は青年の姿を気にも止めず、問いかける。

「こいつ可愛くないんすか?」

「可愛い。めっちゃ可愛い」

「まあ、兄貴が嫌なら俺が飼うっす」

「しゃーないなぁ~」


 なんだかんだで少年には甘い青年は、しぶしぶとその犬を飼う事に決めていた。


「ところでお前、必要な物とか聞いてきたんやろな?」

「プリンなら、さっき兄貴に渡しましたよ」

「なんでプリンやねん。それは、だいぶ前に終わっとんねん。飼育方法やし・い・く!」

「聞いて無いっす。兄貴、知らないんすか?」

「俺も良く知らんねん」


 青年は、生まれてこのかたペットを飼った事が無い。育て方を知らないのは、少年も同じだ。


「飯とかどうすんすか?」

「だから、それを聞いて来い言うたやろ」

「じゃあ、さっきのプリン駄目っすか?」

「駄目やろ! ってかあれは俺のや」

「俺も欲しいっす」

「プリンをいつまで引っ張っとんねん」

「いや、犬の餌なら買ってきましたよ」

「それを先に言わんかい!」

「だって兄貴だけ、プリンずりいっす」

「安心せえ。ちゃんと二人分有るがな」


 二人の可笑しな一日は、今日も穏やかに過ぎていく。

試しに、短編を書いてみました。

鉄板ネタで、おバカな二人の会話を楽しんで頂けたら嬉しいです。

関西の人達ごめんなさい。

馬鹿にしてる訳ではありません。

それと、方言が変だったらごめんなさい。


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