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タヌキとキツネ

そして翌日…


「悠人の姉の遥です♪

今回はホントに突然無理言ってごめんなさいっ!

来てくれてありがとう♪」


当日…別荘を提供してくれると言う遥の友人が何故か運転するワゴンで現地に向かうため、待ち合わせ場所であるユートの自宅前にコウが姿を現した途端、遥が化けた。


これ…ターゲットになってんじゃないか…と内心不安になるユートをよそに、コウはコウで普通に第三者に対してのよそ行き用の礼儀正しさで

「いえ、今回はお招き頂きありがとうございます。

ご期待に添える事ができるかわかりませんが、微力を尽くします。」

と、丁寧に挨拶をして頭を下げた。


「なんだかサークルの子に敵対視されちゃって断りきれなくってって感じだから…。

来てくれただけで感謝ですっ。

ホントにごめんなさいねっ。

助かっちゃいましたっ」


いかにも自分は嫌なんだけど、相手が無理矢理っという風に語る姉。

すっごい嫌な女でとか、女の決戦場へと拳握りしめてたくせに…とは怖くて言えない。


「ね…悠人のお姉さん…すっごぃ女らしくて可愛い感じの人なんだね…」


コウと一緒に来たアオイがコソコソっとつぶやくのに、ユートは

「化けてる…。普段はすごい暴君だから。

可愛いって言うなら絶対に絶対にアオイの方が可愛いからっ」

とやはり小声でささやく。


「アオイちゃんも弟がいつもお世話になってます♪

これからもよろしくね♪」

と、次に遥はアオイにもそつなく笑顔を向ける。


「あ、はいっ!こちらこそ、よろしくお願いしますっ。」

振られてアオイもあわててピョコンと頭を下げた。


「悠人もこんな可愛い子が彼女なんて幸せね♪」

「かっ可愛いなんてとんでもないですっ!

遥さんみたいに綺麗なお姉さん見慣れててなんで私みたいなのとか思っちゃって…」

遥の言葉に真っ赤になってワタワタしながらそう言うアオイ。


あまり女の子女の子した感じのしない格好とそんなアオイの態度は遥に好感を持たせたようだ。

女はライバルになり得ない相手には、得てして優しくなれるものである…。


「確かにね、遥ちゃんみたいな綺麗なお姉さんいたら幸せだよね~、悠人君も」

別荘まで同乗する遥の側のテニスの選手であるらしい別所はニコニコとアオイの言葉にそう言った。


もちろん…当の弟は

(そうまで言うなら、お前が弟になってみろ)

と、思っていたのは言うまでもない。




「んじゃ、全員集合かな?出て良い?」

いかにも女らしい感じの遥とは対照的に綿シャツとブラックジーンズと言うラフな出で立ちのスラリと背の高い美人が運転席から顔を出す。


「あ~、ちょっと待ってくれる?藤。

木戸君がまだ来ないの。」

それに対して遥が答える。

どうやらチェス担当の人物がまだらしい。


「あちらは…今回の宿泊施設の提供者の方ですか?」

コウがチラリとその藤と呼ばれた女性に目を向けると、遥がにっこりとうなづく。


「そう♪お友達の風早藤ちゃん。

私なんかと違ってすっごぃ美人でしょ?

財閥のお嬢さんなんだけど全然気取ったところがなくて、とっても良い人よ」


「そうですか。挨拶してきます」

コウはその言葉に運転席側に回る。

きょとんとする遥。


「自分で紹介しといてなに呆然としてるかな?

この人は」

なんとなく理由はわかるもののユートは面白くなってきいてみる。

それに対して遥はアオイの目につかないようにこっそりとヒールでユートの足を踏みつけた。


「…ってえ!!!何すんだよっ?!!」

「あら、ごめんね、悠人。ちょっと足元見てなかった。」


(うそつけ、うそをっ!!)

と思うものの、ここで置いて行かれても嫌なので、痛みを堪えて姉をにらみつけるにとどめるユート。


その弟の怒りもスルーで、遥はユートに耳打ちする。


『ね、あそこでなんでスルーなわけ?

普通は”遥さんの方が美人ですよ”とか、せめて”遥さんも美人ですよ”くらい言わない?』


やっぱり…な姉の言葉に、内心爆笑なユート。

『そういう社交辞令が欲しいならコウほど向いてない奴いない。

スペックは高いけど実も蓋もない言い方でも有名な奴だから。』


どうやら…姉の画策もあの果てしない鈍感男には通じてないらしい事を知って、ユートは安堵の息をつく。



そんなやり取りをしてるうち、遥の携帯から着メロが流れた。

「ちょっと待って」

ユートを制して遥がメールをチェックする。

「木戸君…あとから自力でくるって。

行っちゃいましょ」

メールは木戸からの物だったらしい。


「あいつ遥ちゃん待たせた挙げ句それって信じられんな。」

別所は怒るが、たぶん…内心ではそれ以上に怒り狂っているであろう遥は、それでも表面上はにこやかに


「ううん、私の都合だし。

来てくれるだけでホントにありがたいもの。

みんな待たせてごめんなさいね、出発しましょう♪」

と、他をワゴンにうながした。





そして車が動きだすと、ユートが口を開いた。


「ただでお邪魔する俺が言うのもなんですけど…藤さんてなんで別荘提供した挙げ句運転までしてるんです?」

それに対して、藤は苦笑する。


「まあ…迷惑料…かな?

舞とは向こうの車に乗ってる美佳と共に幼稚舎からの腐れ縁でね。

自分に自信あるのはいいんだが、あちこちに喧嘩売りまくる女だから。

他のサークルでもめ事起こして追い出されたのを美佳が連れて来ちゃったんだよね。

いい加減こっちでは他の大学の子にまで喧嘩売るなって言ってるんだけど聞きゃあしない。

で、もうどうせならいったんトコトン叩いてやった方が本人のためかなと思って提案したんだけど。

あいつの手駒ならある程度知ってるけどテニスで別所に、チェスで木戸に敵う奴いないしね。

まあだから遥は気楽に遊んでいってよ。」


「他…大学なんですか?

同じサークルって聞いてましたけど…」

そこでカチンコチンになって硬直してたアオイがようやく口を開いた。


「ああ、高校生だとそういうの知らない子もいるのか。」

それに答えたのは別所だ。


「うちのサークルは俺ら城上大の男と青葉大の女の子と聖星女子大の女の子でできてんの。

で、遥ちゃんは青葉、藤や舞や美佳は聖星ね」


「え~!」

その言葉にさらに反応するアオイ。


「もしかしてフロウちゃんとこの付属?」

と、コウに振る。


「なに?知り合いいたりとか?」

という藤の言葉にはユートが答えた。


「はい、えと…こいつの彼女が高等部の2年に…」

「え~!碓井君彼女いるんだ?」

驚く遥にユートは

「このツラとスペックの高さでなんでいないと思うんだよ?」

とため息。


「確かに…モテそうだね碓井君。

でもうちの学校の後輩とは驚いたな。

フロウちゃん…はあだ名だよね?」

と藤。


「はいっ。本名は一条優波ちゃん。」

アオイが言うと、それまで笑顔だった藤がポカンと目を丸くした。

「まさか…ジュリエットだったのかっ、碓井君の彼女って。」


「はあ?」

藤の言葉に今度はユート達3人が目を丸くした。


「そっか~。あの子にもう彼氏とかいるんだ~。まあでもお似合いだよね。」

クスクスと笑い始める藤に、コウが初めて口を開いた。


「姫を…あ、…彼女をご存知なんですか?」

コウの言葉に藤はうんうんと笑いながらうなづく。

「知ってるも何も…流星祭でロミオとジュリエット演じた仲だからねぇ」

「ええ~?!」



「聖星の学園祭、流星祭では開園当初から高等部と中等部の親睦をはかる意味で中高共演でロミオとジュリエットをやるのが伝統なんだ。

で、当時高3だった私がロミオで同じく中3だった彼女がジュリエット。

彼女可愛いからねぇ…。

歴代のジュリエットの中でも随一って絶賛されて一躍近隣の学校でもアイドルだったよ?

なんていうか…あれだよね。

初々しくて純粋で清らかでって雰囲気があって…」

懐かしそうに目を細める藤。


「まあ…確かに。今でもすっごぃ美少女です。

藤さんが中学の時は?

やっぱり今回の…えと、舞さんとかがジュリエットやってたりしたんです?」

アオイの質問に、それまで笑顔だった藤の表情が少し硬くなった。


「あ~…私達の年はちょっとした事故があってね…。

それから2年間はロミオとジュリエットじゃなくてハムレットになったんだ。

で、そのままハムレットでいくのかな~って思ってたら、結構お年だった当時の学園長がお体を壊してね、死ぬ前にもう一度ロミオとジュリエットを観たいなんて言い始めて、また戻ったと言う…。

そんな感じで2年ぶりだったのもあって、すごい盛り上がり見せたんだよ。」

と、話し終える時にはまた笑顔。



そして

「ところで碓井君、”姫”…なんだ?」

クスっと笑みをもらして聞いてくる藤にコウが言葉に詰まる。


「いやいや、それ正しいよ。

私もそう呼んでたしっ」

「舞…みたいなタイプ?」

遥が少し眉をしかめるのに、藤は大きく首を横に振った。


「いやいや。全然。

聖星は舞を含めて”自称”お嬢様は多いけど、私がこの子は”お姫様”だと認めたのは一条優波ちゃんともう一人今はなくなった友人だけだね。

汚さとか欲望とかドロドロした世界とは別の清らかな空間で生きてたよ、彼女は。

役柄が決まって彼女と引き合わされた後は学園祭が終わるまで本気でお守りしてたし。」

そう言ったあと、藤はチラリとミラー越しにコウに目をやった。


「私は…今回の勝負には関係ない中立な人間なんだけど…勝負終わった後でいいからさ、現在の彼女のナイト様とぜひ勝負してみたいね。

どう?一応私も剣道は有段者なんだけど」

「はい、ぜひ」

コウはうなづく。


その後ユート、アオイを交えてしばらくフロウの話で盛り上がる。




そんな話をしながらも車は高速に。

いくらか走った頃、別所が携帯をいじりながら口をひらく。


「そいえば藤、別荘…どこだっけ?」

「ん~箱根の山奥。」

携帯で天気予報を確認していた別所は少し顔をしかめた。


「夕方から雨振るらしいからテニスどうするよ?明日の試合までにコート乾くか?」

との言葉に、藤はクスっと笑みを浮かべる。


「平気。そんな事もあろうかと屋内。」

「うっあ~。お前金持ち~。」


思わず声をあげる別所に、藤は

「正確には祖父が、ね。」

と、肩をすくめた。


「まあでも確かに豪雨の山道は嫌だな。

次の海老名で休憩取ったらもう直行するから、みんなそのつもりで」

藤は言ってサービスエリアに向かう。






店から近いあたりに車を止めて車から外にでると、

「あら、あなた達もここで休憩なのね」

と、すぐ横で声がした。


高級そうなコートに身を包んでニッコリと声をかけて来たのは、遥達と同年代くらいのまあ美人の部類に入る女性。


(あ~、こいつが噂の狐と狸の片割れか~)

その言葉と少し強ばる遥の表情でユートは察した。


「ん。なんだか箱根方面じきに雨くるらしい。

そっち運転川本だっけ?

伝えておいてやってよ。

別荘つく前に雨の山道で事故なんてシャレにならんから。」


藤がそう言って一歩前に出て、それから少し驚いたように目を見開いてピタっと足を止める。

その藤の視線を追う遥と別所も凍り付いた。


「ああ、彼?

どうしても私のために戦いた~いなんて泣きついてくるから…。

遥の差し金だから止めた方がいいよ~とか山岸君とかも言ってくれたんだけど、そんな風に疑っちゃ可哀想だしぃ…。

遥の所は”お金はなくても才能ある人”が集まるらしいから、他にチェス要員見つけたのかなって思って使ってあげる事にしたのっ♪」


3人の視線の先でオドオドしているのは、どうやら遥の側でチェスを打つはずだった木戸らしい…。





「…信じられねえ事しやがるな……」

ユートも姉がえげつないのは重々承知はしてたが、相手のえげつなさはそれを超えている。


遥はさすがに言葉もなく青くなっていて、別所は

「ざけんなよっ!木戸!お前何やってんだよっ?!」

と、その男につかみかかりかけて、舞の側の男二人に止められている。


藤もさすがにこれは…と思ったのか

「舞…ちとやりすぎじゃない?」

と眉をひそめるが、舞は

「やだぁ…私が言いだした事じゃないし~。

てっきり遥ちゃんに追い出されてこっちに来てリベンジしたいのかと思って可哀想に思って拾ってあげたのよ?

好意だったのにそんな事言われるなんて…」

と、ハンカチを握りしめる。


「そうだよっ!舞は優しいだけなのに、何お前らいちゃもんつけてんだよっ!

勝てないかもしれないからって言いがかりはよせよっ!」

その舞の様子に別所を止めていた男達が口を揃えた。


「…ユート…。」

思わぬ展開にアオイも青くなって隣のユートを見上げる。


「は…遥ちゃん、ごめんねっ。

こんなんで勝ってもホントに違うからっ。

気にしないでねっ。」


向こうの側から一人の女の子が走ってくる。

極々普通な感じの良くも悪くも目立たない子だ。

コソコソっと謝ってくるが、遥の側はさすがに無言。


「美佳…あんたがついててなんでこういう事黙ってやらせておくかな?

せめてメールで知らせるとかなかったん?」

と、藤がその女の子、美佳に小声で非難を送っている。


「ご、ごめんっ。

私、藤にも言っちゃダメって止められてて…。

ごめんねっ、嫌わないで、藤っ。」

そのまま嗚咽をあげる美佳に、藤が大きくため息をついた。


「あ~、もう謝る相手違うし…。

どうするよ、これ。

まあ3戦だから後のテニスと剣道で勝てばいいわけなんだけど…」

藤は頭に手をやってチラリとコウに視線を向ける。


その視線に気付いて、コウは厳しい表情で相手方の面々に目をむけた。



「こういうやり方は…嫌いです。」

「ん、まあ好きな奴はいないだろうねぇ…やってる当人達以外は…」

「藤さん、チェスはわかりますか?」

コウの言葉に藤はちょっと考え込む。

「私はできるけど…。

でも第三者だから参戦はダメだよ?」

「ルール知ってれば結構。

運転別所さんに頼んで宿泊先着くまでに教えて下さい。」

「は?」

「俺がやるので。」

きっぱりと断言するコウに藤は苦笑した。


「ん~、気持ちはわかるけどね…。

木戸は他に取り柄ないけどチェスだけはハンパないよ?

仲間内はもちろん、教授も含めた城上大のチェス大会の優勝者だし。」

「将棋と碁ならやります。

それに…信念のない卑怯者に負ける気はありませんので」

言ってコウはユートを振り返った。


「絶対に勝つからやらせてくれ。」

一瞬ぽか~んとしていたユートだったが、その言葉に笑って言う。


「姉貴大丈夫、俺らは勝つ。

どっちにしても誰かやらなきゃなんないんっしょ?

コウにやらせてやって」

弟の言葉に少し涙目で硬直してた遥は少し笑みを見せた。


「まあ…悠人がやるよりはマシよね。

ごめんね、碓井君。お願いします」

と、頭を下げる。


そこで藤は

「んじゃそう言う事で。

チェスの試合は今晩の予定だったけど明晩にさせよう。

あれだけの事やってんだからそのくらいはさせないと…」

と、反転しかけるが、それをコウが制した。

「いえ、予定通りでお願いします。

相手に負けた言い訳させる理由を与えたくないので」

と、厳しい表情で言うと、そのまま車に戻る。




「え~っと…本当に勝つつもりなんだ…。

彼はすごい自信家なのかねぇ?」

目を丸くしてそれを見送る藤に、

「普段はスペックに対してあり得ないほど自意識低い男なんですけど…」

と、アオイ。

そしてそれをユートが補足する。


「ずっと海陽学園育ちでしかもトップから一度も落ちた事がないという伝説の男で…現在高等部の生徒会長やってます。」


「うあ~~そうなのかっ!」

藤は驚きの声をあげた。


そして

「城上大チャンピオンvs天才高校生かぁ…。

そりゃ一見の価値ありだな…。ま、運転は任せろ」

と、とたんに元気になった別所がニヤリと笑って藤の肩を叩くと、自分も運転席に乗り込んだ。






「なんか…大変な事になってきたね…」

全員所用を済ませて車に戻り車が動きだすと、アオイが小声でユートに話しかける。


ホントは単にコウに剣道の試合にだけ出てもらって、気楽に遊ぶつもりだったのだが…こうまでされるとユートとしてもやられっぱなしは悔しい。


「なんだか微妙な雰囲気になってごめんなさいね、アオイちゃん」


まだショックの冷めやらぬ様子で、それでも他人の目が命の遥としては、アオイにフォローを入れてくる。

その遥にアオイはブンブンっと首を横に振った。


「いえっ、遥さんのせいじゃないですっ!

あんな卑怯な人達に負けたくないのは私達も同じですからっ!

絶対に勝ちましょうっ!

てか、コウに任せておけば絶対に大丈夫ですっ!

勝ちますっ!」


他人事なのに思い切り力が入るのがアオイだよなぁと、拳を握りしめて遥に力説するアオイに苦笑するユート。


それでも兄弟なだけに感じるところは一緒らしい。

自分の方がちょっと涙目なアオイに

「ありがとう。

なんだかアオイちゃん達のおかげで元気でたわ。」

と、遥はアオイの頭をちょっとなでて、次にユートに小声でつぶやいた。


「悠人…あんたって本人は馬鹿だけど碓井君にしてもアオイちゃんにしても人間関係だけは素晴らしいわ」


馬鹿…はまあ余計だと思うものの、とりあえずこの敵に回すと怖い暴君にアオイが気に入られた事は快挙である。


ユートはホッとして、藤にチェスのルールを教わっているコウに目をやる。


学生だけならとにかく、教授も含めた学内チェス大会のチャンピオン…相手はかなりの腕なのだろう。

いくらコウでもチェス未経験なわけで…勝てるのだろうか…。





そして20分ほどたった頃、藤が雑談に加わりにきた。


「碓井君は?もう教えないの?」

遥が言うと、藤は苦笑した。


「私がいても邪魔だから。

すごいね、さすがに海陽トップだけあるよ。

飲み込みの早さと集中力が全然違う。

もう基本概念やルールはある程度頭に入ってノートPCで実戦段階。

あれ…下手すると本当に勝つかもよ?

天才が一つの物を新たに学び始めてそれを完全に物にするまでってのを目の当たりにできるだけで、今回来た価値ある気がしてきた。」


「藤もほぼトップから落ちた事ないって聞いてたけど…。

その藤をしてそれだけ言わせしめるってすごいわね。」

遥の言葉に藤は手を顔の前で振った。


「うちの学校と海陽なんて一緒にしちゃだめだって。

海陽って日本でたぶん東大進学率一番高い学校だよ?

そこのトップって…いうなれば日本一賢い高校生だよ?」


「うあ…そうなんですか~!」

アオイが驚きの声をあげる。


「そんなの引っ張ってこれるんだから、人材対決では今回の結果がどうであろうと遥の勝ちだよ。

木戸ごときチェス馬鹿引っ張られたくらいじゃ全然揺るがんて」

元気づける様に言う藤の言葉に遥が笑顔をみせた。


「しっかし…この段階で寝返るって舞がえげつないのは今に始まった事じゃないけど、木戸も許せんな」

そこで藤は木戸に怒りを向ける。


「ん~ごめんな。

あいつ舞は苦手だから近寄りたくないって言ってたんだけどな…」

それに別所が運転席から言う。


「いや、別所が謝る事じゃないけどさ…。

苦手ってあれかね、舞の本性でも何かで目撃したんかね、木戸も。」


「さあ?そこまでは知らんけどな。

木戸はあいつあれでロマンチストだからさ。

舞に夢みて本性みて反動で一気に苦手にってのも考えられるけどな。」


「ロマンチストって…あのツラでかっ?」

別所の言葉に藤が吹き出した。


「そう言うなよ…。

まあ木戸に限らず女より男の方がロマンチストだぞ?マジ。」

なさけない顔で言う別所にユートは心中同意する。


女は…リアリストだと言うのは姉と妹を見てて本気で実感だ。

そんなユートの心の声には当然気付かず、別所が続ける。


「なにせ…高校までミッション系の男子高で、四葉のクローバーを天使からの授かり物だって押し花にしてお守りに肌身離さずに持ち歩いてるような男だぞ」


「へ~。まあ勝負師は何かしらジンクス信じてたりとかはするみたいだけどな。

あいつもそのクチか。」


そんな事を話しているうちに車は一路箱根へ…。

そして箱根の山奥の別荘に着く。




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