~死後~
死んだ。
急な眠気が襲って、苦しい、痛いなど微塵も感じることなく、眠るように死んだ。
死ぬと魂が体から抜けて天へと上ると聞くが…
俺はがいるところは晴天と草原のようだ。
足首程までしかない草たちが、微風で綺麗に靡いている。
なぜか体が軽いので…
全力疾走だぜ!
「ま、待って下さ~い!」
てっきりまた神と名乗る者の声が頭の中に流れてくるかと思ったら、後ろから聞こえてきた。
勢い良く走っていたので止まるのに数mほどかかったが、止まって振り返ると、例の女神少女が追いかけてくる。
「なんで走り出すんですか!?」
「そこに草原があったから。…ってかなんで後ろに現れたんだ?」
「なんですかその理由…」
なぜ後ろにいるのか説明すると、ひっそりと後ろに現れて脅かそうとしたら、現れた瞬間に走り出されたのでスカし、急いで追いかけてきたらしい。
女神と言っていたが、やはり子供か…
「言っときますけど、あなたが生きていた時間の数え方でいうと私は5000歳越えしてるんですよ!」
「その姿で年増か!?」
「年増言うな!」
女神が思いっきり右フックを仕掛けてきたが、リーチが短く動きが遅かったので、余裕で避けれた。
「な、なんで避けれるのよ!」
「女神少女、自分の体と俺の体を見比べてみろ…」
俺の体を見る女神少女。
自分の体を見る女神少女。
俺の体をもう一度見る(以下略…。
「…私のリーチが小さい!」
「移動距離も攻撃範囲も俺の方が倍あるんだぞ?女神少女が俺の倍以上のスピードで動けるなら話が変わるが…」
ホントにこの女神少女が万物の神なら、たかが人間に勝てないわけがない。
あきらかに手加減されてるのがわかる。
「残念ながらスピードは人間レベルよ、スピードは」
「…それ以外は?」
「聴覚は人の心の声まで聞こえる。逆に声は人の心まで聞かせれる。防御力はあなたの元いた世界の戦略兵器でもカスリ傷すら付かない。攻撃力は…普通車殴れば100mくらい飛ばせれるかな」
「ちょっと待て、そのパンチ力で右フック当たってたら、俺の頭吹き飛ぶやんけ」
「なに言ってるんですか?」
女神少女は手を伸ばす。
俺の体を貫通した。
「あなたは実体のない魂なんですから当たったフリはしますけど、実際は何にも起こりませんよ(笑)」
「ってかここどこなんだ?女神少女」
「ここは『選択の丘』です。…ってか、女神少女ってなんですか?」
「いや、名乗って無いじゃん」
「…名のるほどの名はありません」
「……ふざけてんのか?」
「いや!ホントに名前無いんですよ!!私の使徒達は名を与えていますが、私に名を付けてくれる方がいなかったので、名無しの神なんです!」
どうやら想像通りだったようだ。
色んな神の名が世間に知れ渡っていたが『なぜ神はこんなに多いのか』なんて、誰も気にしなかっただろう。
もしかしたら世間が知っている名のある神達は、別の何かによって名を与えられて神になったのではないかと、俺は考えた。
「だいたいそんな感じですよ~」
「勝手に人の心を読むな!プライバシーもヘったくれも無いだろうが!」
思いっきり頭をひっぱたく。
「ちょ、叩かないで下さい!暴力反対!痛いです!」
ウソこけ!
どんなに防御力が高くても痛いものは痛い、と言っているがどうも信じられん。
ってか、そもそも当たらない筈なのに、なんで当たったんだ??
「…確かに。なんで私からは触れないのに、貴方からは触れるんですか!?」
「俺が知るか!!」