表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。

思い出、忘れない

作者: 月守 空

あらすじにも書きましたが「綾瀬」は名字です。ついでに湊は女の子です。


「私何やってんだろうな・・・」

私はため息混じりに呟いた。

そして、後ろに大きな口をあけてボールが来るのを待っているゴールを一瞥した。

人の名前を呼ぶ声や、シュートを外した仲間を慰める声が聞こえる。

見てのとおり、今はサッカーをやっている。普段の私なら、きっと手を抜いていただろうか、三年生の12月。

一番重要な時期に手を抜いて成績を落とされたら堪らない。だから、半分本気、半分嫌々私はやっていた。

「綾瀬。左からボールきた。あ〜右からも」

叫ぶような、湊の声で私はハッと我に帰った。

そうだ。ボーっとしている場合ではない。

仮にも私はキーパーをやっている。一番、しっかりとボールを見ていないといけないのではないか。

「止めてーーー」

いつの間にか、ボールは目の前に来ていた。

「くっ・・・早いよ・・・」

悪態をつきつつ、私はボールを取る為、構える。真正面を飛んでくるボール。私は手で弾いてボールの軌道を変えた。ボールは弧を描き、あさっての方向にとんでいく。

「怖えーよ・・・てか、遠いよ・・・」

文句を言いつつ、遥彼方へと飛んでいったボールを取りに行く。

足で操りつつ、私は一番近い味方を探す。十メートルくらい離れた所に手を振る短い髪が見える。湊だ。残念ながらどんな表情をしているのかは全く持って解らない。それでも、湊に変わりはないのでボールを渡し、急いでゴール前へと戻った。

もう一つのは・・・と見ると、既に味方がゴールへと持っていっていた。

私は、恐ろしく目が悪い。多分、両目の視力を合わせても0.3くらいしかない。当たり前の事だが、普段は眼鏡をかけている。でも、今は取っている。何故かってそれは仲間の皆に

「危ないから、眼鏡は取っておいたほうがいいよ」

なんて言われてしまった。

「見えなくて困るんだけど・・・」

外しながら文句を言う私に先程、叫んだ湊が

「俺がボール来たら教えてやるし、コッチでも守ってやるから、綾瀬は心配すんな」

ぶっきらぼうに言ってくれた。体育得意な湊だから・・・と言うのもあるし、湊が何か少し苛ついているようにも見えた。これ以上文句言ってたら何されるか解ったものじゃない。

だから、文句言うのをやめて試合開始当初から、全体の様子を見つつ湊の姿を見ている。

湊は本当は守備なのだが、今は敵の陣地に突っ込んでいく。そして、シュート・・・したらしい。周りの様子からしてどうも入ったらしい。

「凄いな。湊」

「そうか?そうでもないんだけどなあ・・・」

何時の間にか湊は戻ってきていた。

「なっ・・・早いな。戻ってくるの・・・」

「うん。だって攻撃疲れたし、綾瀬。見えてないだろ?だから解説に来た」

「・・・にしたって早かないか?」

「早く守備の方に来て、休んで体力回復させたかったから。それより、解説すると・・・」

湊は現状を淡々と話し、再び攻撃の方へと走っていった。

私は、それを嬉しいようなくすぐったいような気持ちで見ていた。

てっきり「俺がボールきたら教えてやるし、コッチでも守ってやるから、綾瀬は心配すんな」というのを律儀に守っているとは・・・。単純というか何と言うか・・・湊らしかった。

「湊・・・」

呆れたように笑いつつ、私は湊の姿を追った。本当にいきいきしていて、何ていうかカッコよかった。表情が見えないのが残念だけど・・・。

私はこの時こう思った。

「湊は男の子だったら、結構もてたんだろうな」と。言葉遣いなんかもろ男って感じだし、性格もどちらかっていうと男の子っぽいし、髪も短いし、名前も「湊」なんて男の子っぽいし・・・。

しかも、何時の日かセーラー服着ていたのに、男子に「あっ・・・お前か。後ろからみたら男かと思った」なんて言われてる。

女の子にしておくのは勿体無いな。男の子だったら、彼氏にしたかったな・・・。

「勿体無いなぁ・・・」

「何が?何が勿体無いって?」

ハッと我に返るとそこには湊がいた。

まさか、先程の事を本人に言うわけにはいかない。まあ、言ったところで湊が気にするとは思わない・・・。けど・・・。私は・・・。

「秘密だよーだ。」

教えなかった。だって・・・

「教えてくれたっていいじゃないか」

とむくれる湊が何だか可愛くて、ぎゅーってしてあげたくなるからね。

・・・なんてそれこそ本人に言ったら引かれるか、殴られるかされてしまいそうだから我慢して、騒ぐ湊をからかいながら私は教室へ戻っていった。

本当はこう言わないとだめだったのかもしれない。

         「律儀に約束守ってくれてありがとう」




この感情は果たして何なのだろうか。

ただ単に、私が人をからかって遊ぶのが好きで、その矛先が一番近くにいた湊に向いてしまっただけなのだろうか・・・。

なんなのか解らない。

何時か、解るのかな?

でも、たとえ解らなくても・・・解っても・・・今、湊と笑って話せている今を忘れたくはない。

ずっと、ずっと、覚えておきたい・・・。

だから、これからもよろしくね。湊。


半分実話で半分は作り話です。湊モデルの子は本当に男の子みたいな女の子ですし、美咲モデル・・・もとい作者は美咲みたいなこと思っていましたし・・・


要望あったら続編書きたいと思っているので、感想よろしくお願いします。

評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ