ちょっとした
大変、お久しぶりです(_ _)
まだ続きますので、気長〜〜にお付き合い頂ければと……!
田端香月
夏見柚子
羽山ヒナミ
「関野さーん、呼んでるよー」
「ぇ……? はい――」
教室の前のドアからクラスメイトに呼ばれ、関野はなんだろうと前に向かう。
廊下に出ると、手に折り畳み傘を持った犀と朔がいた。
「あ、わざわざ……!」
「返しにきた、ありがとう」
「助かったよ――」
二人から渡され、関野はどういたしましてと笑って受け取る。
「帰り道、大丈夫でしたか?」
「うん、濡れなかったよ。ちょっと今朝一人殴られてたけど」
「なぐ……?!」
「心配ない。殴られるのは必然だったんだ。関野が気にすることではない――」
と犀はメガネを押し上げると、ふん、と鼻から息を吐いた。
「今頃教室で頬押さえてるんじゃないかな……」
「羨ましい」と朔は薄く笑う。
羨ましい……?と思いつつも、関野は深く訊くのはやめた。
「じゃ、教室戻る。傘、本当にありがとう」
「はい。いやいや、どういたしまして」
「またね――」
戻っていく二人を見送りながら、関野は誰が殴られたんだろう……とぼんやり考えるのだった――。
*
犀と朔が教室に戻ると、香月が殴られたであろう左頬を撫でていた。
「ほんとに殴るやつがあるかね……!」
「痛い……!!」と泣きそうになる香月に、章と秋乃がドンマイと声を掛ける。
「自業自得だろ、仕方ねえよ」
「昨日、あんなこと言わなきゃよかったんだよ」
「え、何で二人とも味方してくれないの? 全面的にオレが悪いみたいじゃん――」
と香月は納得できんとしかめっ面になった。
それから「良いこと思いついたぞ!」と手を叩く。
「傘の持ち主を見つければいいんだ!」
「あれは関野の傘だ――」
話を聞いていたらしい犀が横から口を挟んだ。
それに続くように、朔も口を開く。
「帰りに関野さんとちょうど会って、傘貸してくれることになって、なんで傘二つ貸してくれたのかとかはまあ、色々あって……」
と一通り朔が説明すると、聞き終えた香月は「フラグ回収早すぎ!」と頭を抱えて唸った。
「なんで……っ、なんでそう言っちゃうかね……!!」
「関野に迷惑掛けるだけだろ」
「迷惑は掛けてなんぼ!」
眉間に皺を寄せた犀にグッと親指を立てると、三人は「それはないわぁ……」と香月を見つめる。
「え……、なんでそんな……。いや、確かに! 確かに、迷惑かけることはいけない、だが、誰しも心の奥で思っているのではないだろうか、この日常に、ちょっとした非日常が起こらないだろうか……、とね!」
すると秋乃が、それはわかるな、と口を開いた。
「確かに、毎日同じことの繰り返しだもんね。何かあったら楽しいかも」
「だろ?! それを自ら起こしに行くんだよ、楽しい!」
と香月は拳を作る。
それを見ていた犀は溜め息を吐き、朔は苦笑いする。
秋乃と章はまた始まったと香月を見つめた。
「よし、そうと決まれば実行あるのみ! 次の授業はサボろうぜ――!」
そう香月が四人を見回すと、犀はすでに席に戻っていて、朔は「遠慮しとく……」と苦笑いして離れ、章も「パス」と手で払い、秋乃も「おれもいいや」と断る。
「ノリ悪くね?! ……いいよ、オレ一人で行くしね!」
ふん、と香月は鼻から息を出して、教室を出ていく。
もちろん、後から彼らが来るわけもなく……。
「はぁ〜、ほんとに一人じゃん、何で?! 絶対ちょっとした何かがあったら楽しいのに――」
そう呟きながら香月が廊下を歩いていると、移動教室なのか、教科書と筆箱を抱えた女子集団とすれ違った。
「ぁ……」
「ん……?」
不意に一人の女子が集団から抜けて立ち止まる。
それから香月を見ると、少しはにかんで口を開いた。
「こ、こんにちは……!」
「こんにちは……?」
香月が困惑しているのがわかったのか、女子は「あ、えっと……」と続ける。
「手紙を、渡した者です。あの時はごめんなさい……。で、見掛けたので、声を掛けてみました」
「あ、ああ――! 手紙の! あれから大丈夫?」
香月も思い出して訊いてみると、女子は晴れやかな顔で頷いた。
「はい、罰ゲームとか、そういうのもないです」
「ならよかった――。次移動っしょ、行かなくて大丈夫?」
「あ、行きます。じゃ……、また会ったら――」
そう女子はペコリと頭を下げ、タタタと軽やかに走っていく。
後ろ姿を見送りながら、香月は「……女子から話し掛けられたの、久々じゃね??」と思った。
「結構可愛い子だったんだよなー、次会ったらデートに誘われちゃったりしちゃって? ムフフフフ……」
一人妄想に思いを馳せていると、移動教室なのか、柚子とヒナミが通りかかった。
「気持ちわる――」
「柚子ちゃん……!」
「お、夏見と羽山」
「レデンツじゃないわよ!」
「――田端くん、授業は?」
牙を剥く柚子に苦笑いしながらヒナミが訊くと、香月は「あ〜……」と誤魔化す。
「……自習だからいっかな、みたいな」
「良くはないよね……」
「バカに付き合ってられないわ、行くわよ、ヒナミ」
「あ、うん、じゃぁ――」
柚子がさっさと歩き出すので、ヒナミは軽く会釈して香月から離れた。
「……まったく、レデンツは相変わらずツンツンだもんな〜」
ぶつぶつ言いながら、香月は目的もなく歩く。
少しすると、授業開始のチャイムが鳴った。
普段なら教室で聞くチャイムも、違うところで聞くと新鮮に聞こえる。
「……サボるの久々だなぁ、前は保健室とか行ってたんだけど……。今日は保健室って気分じゃないし……。屋上行くかぁ?」
「開いてないだろうけど……」と香月はとりあえず屋上に向かうことにした。
階段を上りながら、徐々に誰かの声が聞こえてくることに気づいた。
「……誰だろ――?」
そっと壁に寄って、香月は見られないように聞き耳を立てる。
「時間が足らない……、やりたいことが出来ない……、三年はこんなに忙しいのか……っ」
顔は見えないが、声から絶望加減がわかる。
三年らしい彼は、やりたいことが出来ないことを悲観しているようだ。
「ネタは浮かんでいるんだ……、やる気が出てこない……、なぜだ、なぜなんだ――!」
(……なんか、めっちゃ一人で叫んでね……? てか三年なのに授業受けてないとかヤバくね? ……いやまぁ、オレが言えたことじゃないけど……)
そんなことを思っていると、下から階段を上がってくる音がして、香月はヤバいヤバいと焦る。
が、隠れる場所もなく、その場に固まることにした。
香月がじっとしていると、下から来た生徒は固まる香月に目もくれず、そのまま上がっていった。
「ぇ……無視?」
でも、教師じゃなくてよかったな……、と安堵していると、上から会話が聞こえてきた。
「――何やってんだお前は、教室戻るぞ」
「自由時間が欲しい……」
「授業が終われば休み時間だ、ほら、しっかり歩け本谷――」
とさっき来た男子が本谷と言われた男子の腕を掴んで引っ張っていく。
通り過ぎながら、本谷と言われた彼は、香月に向かって口を開いた。
「少年よ、人生楽しめ!!」
「え、あ、はい――?」
グッと親指を立てて、本谷は階段下に消えていく。
残された香月は、本谷って聞いたことあるんだけど……誰だっけ……?と考える。
「……わかんないし、いっか――」
と香月は考えるのをやめた。
とりあえず屋上に続く階段を上り、踊り場に出る。
やはり、屋上に続くドアには立入禁止の札が掛けられていた。
「……ですよねー」
一人呟いて、香月は階段を下りる。
そろそろ授業も終わる頃だろう。
「……戻ったら、今あったこと話してやるか」
たんたんと階段を下りながら、たまにサボるのも悪くないなと思う香月だった――
戻った。
香月「手紙の子が挨拶してくれた!」
秋乃「名前聞いた?」
香月「はっ!…聞いてない」
章「そこは聞いとけよ(笑)」
本谷(学生の頃と時間の流れがだいぶ違う気がする……)




