相合い傘
お久しぶりです…!
女子たち全員集合です。
夏見柚子
羽山ヒナミ
関野さん
「……え、雨降ってる──」
帰ろうと関野が下駄箱で靴に履き替え外に目を向けると、雨が降っていた。
「はぁ……折り畳みない……」
リュックの中を確認して、関野は溜め息を吐く。
天気予報で雨が降るとは言ってなかったので傘は持ってこなかったが、いつもリュックに入れている折り畳み傘がなかったのは誤算だった。
「リュックの中身整理した時に忘れちゃったのかな……」
この間リュックの中身を整理した時を思い出しながら、関野は少し暗めな赤色の眼鏡を押し上げて、また溜め息を吐く。
もうちょっと様子を見てから帰ろうかなと、関野が立ち止まっていると、そこに柚子とヒナミがやってきた。
「あら、関野さん」
「今帰り?」
「あ、うん。そうなの。でも傘忘れちゃって……」
と関野が困ったように言うと、柚子とヒナミは顔を見合わせてから、笑って言った。
「柚子ちゃんも私も傘持ってるから、交互に入れてあげるよ」
「ええ。関野さんさえよければね」
と二人に言われ、関野は恐縮しながらお辞儀をした。
「あ、ありがとう、助かります!」
「いいのいいの。困った時はお互い様でしょ」
「そうね。今度私たちが傘忘れたら、関野さんが入れてね?」
ヒナミと柚子にそう言われ、関野は二人とも優しいなと思いながら頷いた。
「もちろん、傘三本準備しておくね…!」
「それは多いよ」
「持ってくるのが大変じゃない」
「あ、折り畳みで……!」
と関野が名案を思いついたというように言うと、柚子とヒナミは顔を見合わせて笑う。
関野は何か変なこと言っちゃったかな、と不安になりながらも、二人についていった。
外に出て、関野はヒナミの傘に入れてもらっている──。
「そういえば、相合い傘するの久しぶりかも」
とヒナミが傘を少し関野に傾けながら言った。
「相合い傘って、好きな人にされたり、するのをイメージするね」
「確かに。相合い傘ってそういうイメージが強いかもしれないわね」
と関野の言葉に柚子も頷く。
「あれって、密着するからドキドキだよね……私だったら真っ赤になって緊張しちゃうな……」
「あー、わかる。関野さんすぐ赤くなるもんね──私は自分で持ちたいかな。柚子ちゃんは?」
ヒナミに話を振られ、柚子は少し考えてから答えた。
「そうね……、最初は持ってるんだけど、途中から『持つよ』って代わってくれるのとか、良いわね」
と柚子は小さく微笑む。
「確かに、それいいかも。それで、濡れそうになったら『もうちょっとこっち寄れよ、濡れる』って腕が触れ合っちゃうみたいな感じでしょ?」
「あー、少女マンガだね、ドキドキするやつだ」
とヒナミと関野は顔を見合わせて頷く。
「甘酸っぱい感じが堪らないわね──まぁ、私たちの日常でそんなことはないだろうけど」
「えー、わかんないよ? 明日また雨で、もしかしたら舛田くんが相合い傘してくれるかもしれないじゃん」
柚子の言葉にヒナミがそう返すと、柚子は顔を赤くして吼えた。
「何でそこで舛田が出てくるのよ……!!」
「だって柚子ちゃん舛田くん好きだし、もし相合い傘するなら舛田くんとしたいんじゃないかなって」
とヒナミが笑って言うので、柚子は関野を呼んで盾を作る。
「そ、そんなこと思ってないわよ!! 関野さん、早くこっち来て!」
「あ、うん、お邪魔します──」
柚子の傘に入った関野を盾にして、柚子はヒナミから隠れた。
「そんなことしても、顔赤いのはバレバレだよ。ね、関野さん」
「え? あ……、うん。赤い──」
と関野は柚子を見て答える。
柚子は軽く関野を睨んで言った。
「何で言っちゃうのよ……!!」
「えっ、あ、ごめん──、訊かれたからつい……」
と関野は苦笑いする。
するとそこに、後ろから秋乃が走ってきて通り過ぎた。
「え、舛田くん──?」
気付いたヒナミが声を掛けると、秋乃は立ち止まって振り返る。
「あ、羽山さんに夏見さん、関野さんも。珍しい、勢揃いだ」
と秋乃は三人を見て「おお」と口を開けた。
「舛田くん傘忘れたの?」
「あぁ、うん。忘れて、走って帰ってたところ」
「じゃあ、傘入ってく? 途中まで──。柚子ちゃんが入れてくれるって」
「は……?!」
何言ってんの!?と柚子が隣を見ると、いつの間にか関野はヒナミの傘に移動していた。
「え、いいの? 迷惑じゃない? 夏見さんさえよければ、入れてもらえると助かるな──」
「走らなくて済むし」と秋乃も普通なので、柚子も冷静を装いながら頷く。
「い、いいわよ……入って……」
「やった。ありがとう──あ、傘持つよ、入れてくれたお礼に」
と秋乃はすっと傘を持った。
柚子があわあわとヒナミと関野に助けを求めようと二人の方を見ると、二人は「良かったね、柚子ちゃん」「頑張って……!」と小さく口パクをして、秋乃に「先行くね」と言って行ってしまった。
残された柚子は二人きりってどうすればいいのよ!!?!と内心ばくばくする。
「じゃ、おれたちも行こうか」
「そ、そうね……!!」
隣の秋乃に促され、柚子は歩き出す。
傘に当たる雨音よりも、ドキドキと激しい心臓の音が聞こえてしまうんじゃないかとひやひやしながら、柚子は秋乃と帰るのだった──
秋乃と別れた後。
柚子(ドキドキし過ぎよ…!聞かれてたらどうするの…っ?!!?)




