休みだー
こっちが春休みだー
春休みに入った秋乃たち。
犀は図書館に行って、家に帰るところだった。
「あれ? 湯川じゃね?」
「ほんとだ──」
聞き慣れた声が聞こえて、犀はちらりと顔をそっちに向けた。
顔を向けた方で、秋乃と香月がおーい、と手を振っている。
そのまま無視するのもあれなので、犀は二人のもとに向かった。
「何してるんだ?」
「バドミントン」
「バドミントン?」
と犀は二人の持っているラケットを見て、ああ、と頷く。だが、羽がない。
「……エアバドミントンか?」
「なわけないだろ」
「木に引っかかっちゃって」
と秋乃が木を指差して言う。
確かに、羽は木に引っかかっていた。
「だから、あれをどうやって取ろうか考えてた」
「そう。で、ちょうど湯川が通りかかったから、呼び止めた」
と香月がぐっと親指を立てて言う。
犀は、はぁ……と苦笑いして言った。
「呼び止める必要あったか?」
「困ってるのを助けるのが友だちだろ? 助けてくれよ」
「えー……」
香月に向かって、犀はめんどくさそうな声を出す。
「ちょっと知恵を貸してほしいだけだから」
お願い、と秋乃は頭を下げる。
犀は仕方なく、溜め息を吐いてから頷いた。
「……わかった。少しならいい──」
クイッと眼鏡を押し上げ、犀は少し考える。
「田端が木に登って取ればいいじゃないか」
「それさっきやった。無理だった」
と香月が首を振る。秋乃もうんうん、と頷く。
「じゃあ、ラケットを投げる」
「引っかかったらアウトじゃん」
「それもそうか──」
秋乃に言われ、犀は木を見る。そして思いついたように言った。
「木を揺さぶればいいんじゃないか?」
「あ、そっか」
「それやってなかった──」
と秋乃と香月は木に近寄り、せーのっ、と揺らす。
枝は揺れるが、羽は落ちそうにない。
「……落ちない」
「何か他にないかね」
「風に任せる」
と犀が真顔で言うので、秋乃と香月は困惑する。
「湯川が、何か運に任せるみたいなこと言ってる……!」
「どうした? どっか悪いのか?」
「悪くないわ──そういう時もあるだろ。諦めも肝心だ」
と犀は帰ろうとする。
すると、秋乃がふと言った。
「湯川が香月肩車すれば、届くんじゃね?」
犀と香月は顔を見合わせ、それぞれ違う反応を示した。
「ナイスアイデアだな!」
「いやいやいやいや!」
頷く香月と首を振る犀。
秋乃は大丈夫大丈夫、と手を振り、取れる取れる、と笑う。
「いや、そういう問題じゃ──」
「湯川、ほら、早く早く!」
「……………」
犀は仕方なく、肩車をした。
「うおー、たけー!」
「早く取れ──」
高さにテンションの上がる香月に、犀は急かす。
「……っしょ、取れた」
「よし──」
と犀はすぐにしゃがみ、香月を下ろした。
「湯川、ありがとな」
「……どういたしまして」
「助かったよ──湯川もやってく?」
秋乃がラケットを見せて訊くと、犀は首を横に振って言った。
「いや……また同じことになったら面倒だから、やめておく──」
と犀は軽く手を上げて、歩き出した。
背中で、二人のやりとりを聞きながら……。
「とりゃ──あ」
「あ……」
何やら、問題が起きたような声がした。
犀は少し歩くスピードを上げる。
「湯川ー、ちょっと待って〜」
「あ、おい、湯川ー!」
犀は聞こえないフリをしながら、その場を後にする。
問題事には関わりたくない……と犀は内心謝りながら、歩いていった──
秋乃「春だー」
次回は再来週の休みになります。




