保健室には
保梨先生が出ます。
「……っと!」
体育。外でサッカー。
犀が蹴ったボールが、鋭くゴールに向かっていく。
そして、ゴールに吸い込まれたと誰もが思った時、それを朔が頭で跳ね返した。もとい、ヘディングをした。
「どうだ!」
「チッ──」
小さく犀が舌打ちする。
周りは、ナイスヘディング! ナイスカット! と声が上がる中──
「ブッ──!」
と秋乃の頬辺りに流れ球がヒットし、倒れた。
「秋乃──! 先生──!」
秋乃は、保健室に運ばれた──
*
「あら珍しい。舛田くん?」
「保梨先生──実は……」
と秋乃をつれてきた章が説明する。
一緒に運んだ香月は、鏡で自分の髪をチェックしている。
「……そんなことが? じゃあ、とりあえず、氷渡すわね。痛いところに当ててちょうだい──」
と氷袋を秋乃に渡す。
秋乃はそれを頬にあてがう。
「冷たい……」
「仕方ないわ。我慢して──そういえば、舛田くん全然来なくなって、先生寂しい……」
「授業あるんで……」
「もう、来てくれないの?」
「今日来たじゃないですか」
「それは、ケガしたからじゃない! そういうことじゃなくて、もっと来てほしい……」
と保梨はくねくねと体を動かす。
秋乃は、サボるとよく保健室に来ていたのだ。
「無理です。単位足りなくなったらどうするんですか」
「あっ。それもそうね──」
と保梨は手を叩く。
「てか、保健室に人がいっぱい来たら、逆にダメじゃないすか?」
と章がツッコむ。
「そうね。最近なんか、ワタシが居ない時に、カップルで保健室に入ってきて、よからぬコトを企む生徒もいるのよ……やんなっちゃう」
「ちなみに、見たことあるんですか?」
と香月が会話に入ってくる。
「いや、それがね、いつも戻ると終わった後なのよね〜」
「そうなんですか──」
となぜか肩を落とす香月。
それを見て、秋乃は何を思ったのか、質問する。
「先生って、どういう人がタイプなんですか?」
「え? それは……」
すると、ドアが開かれ、山井が入ってくる。
「山井先生……っ」
「どうも──舛田、具合どうだ?」
「……大丈夫です」
「そうか──」
「湯川は来ないんですか?」
気になったので、章は山井に訊く。
「ああ、湯川はな。ケガした舛田を見たら、笑っちゃうから止めておくと言ってたぞ。でも、申し訳ない。とも言ってたな」
「最低ですね──」
ふと保梨を見ると、少しもじもじしていた。
「どうしたんですか? 保梨先生」
「え? 別に//? 何もないけど//?」
「保梨先生、顔赤いですよ? 大丈夫ですか?」
「大丈夫ですっ//」
「あ……もしかして──」
と香月が口に手を当て、ハッとして黙る。
それを秋乃が口にする。
「保梨先生、山井先生が好きなんですか?」
「そんなわけ──」
「あ、俺そっちの気ないんで。すいませんね。でも、友達でなら仲良くしましょう」
と山井はズバッと言う。
「もちろんですっ……//! お願いしますぅ!」
保梨の目がきらきらと輝いている。
恋する乙女というところだ。男だけど──
「じゃ、授業に遅れないようにな──」
「はい」
山井が出ていった後、保梨が秋乃に礼を言う。
「ありがとう! 舛田くん!」
「いえいえ……」
ちょっと期待してたのに……と秋乃は呟いた。
「お前は何を考えてんだよ」
「え? ちょっと……」
「とりあえず、戻ろうぜ! 授業始まる」
「そうだな──じゃ、保梨先生、ありがとうございました」
「ウフフ。また来てね!」
「いや、来ませんよ──ほら、秋乃も行くぞ」
と章が声をかけると、秋乃はボソッと呟いた。
「禁断の保健室……」
「いやねえよ──?」
秋乃が何を考えているのか、少し怖くなる章だった──
次回、忍者を出そうと思います。