主人公はこっち(秋乃)。
ツンデレ登場。
『朝でござる。朝でござる。起きてくださ──』
「ん……ふぁ……」
カチッと目覚まし時計を止めて、秋乃は目をこする。
「……朝──」
ベッドから這い出て、顔を洗いに部屋から出る。
「おはよう、秋乃」
「……ん」
コクンと頷いて、洗面所に行く。
「…………」
顔を洗い、部屋に戻る。
制服に着替えて、部屋に置いてある様々なフィギュアに挨拶する。
「おはよう皆。行って来ます──」
「行ってらっしゃい!」
「……っ?! ……ついに喋っ──」
「秋乃、それは喋らないわ。早くご飯食べて」
いつから居たのか、半分ドアを開けて、そこからフィギュアを片手に見つめている秋乃を、母が呆れた顔で見ていた。
「……今の母さん?」
「そうよ。早く食べて──」
秋乃はフィギュアを戻して、母の後についていく。
「もう一回言ってくれない?」
「なんでよ」
「録音を……」
「…………」
「ダメ……?」
「いつからこんな風になったのかしら──」
母は、顔に手を当てて溜め息混じりに言った。
「母さ──」
「言わないわよ」
「…………」
リビングに入って、秋乃はしょんぼりと椅子に座り、パンを食べ始めた──
*
「ダメか……」
学校に着いて、秋乃はまだ朝のことが頭に残っていた。
「何が?」
章が訊く。
「母さんの声録音ダメだって」
「……は?」
「声。可愛かったんだよ……」
はぁ、と悔しがる。
「キモ──」
「……そう?」
と秋乃は首を傾げた。それを見て、章は少し距離を取るのだった。
今は体育があるので、体育館に向かっている。
「そういえば、香月は?」
「トイレだって」
「ああ──」
頷いて、章は前を向いた。
そして、止まった。
「……?」
秋乃もつられて止まった。
前を見ると、髪の長い女子が廊下の真ん中で仁王立ちしていた。
「……誰?」
秋乃がコソッと章に耳打ちする。
それに反応するかのように、女子は口を開いた。
「そう! この私こそが夏見柚子。覚えておくのね!」
「…………」
「……じゃ、体育なんで──」
「待ちなさいよ!」
と素通りしようとした秋乃の前に立つ。
「……低い」
「何よ! 低くて何が悪いの?!」
「可愛い──」
「は?」
と章が秋乃を見る。
柚子はポカーンと口を開けている。
「か、可愛くなんてないんだからねッ////!?」
「……ツンデレ?」
「ツンデレでもないわよ////!」
と章の問いにも答える。
だが、顔は赤い。
「わぁ……ツンデレだ……!」
と秋乃は普段無表情なのに、目を輝かせている。
「ツンデレじゃないって言ってるでしょ?!」
「可愛い──」
「可愛くないわよ////!」
「照れてんじゃん」
「照れてないわよ//!」
「あ。嬉しい?」
「べ、べつに嬉しくなんかないんだからねッ////!」
と柚子は顔を赤くしてそっぽを向く。
それを見て、秋乃はやっぱりと思う。
「ツンデレだ。こんな近くに居たとは。えっと……夏見さん? だっけ。よろしくね」
「よ、よろしくしてあげるわ! 仕方ないわね。あ、あなた名前は?」
「舛田秋乃」
「舛田ね。わかったわ。覚えといてあげる」
「こっちは平井章」
「どうも」
「あんたはいいわ──」
「オイ!」
と章が吠える。
「じゃ、じゃあね──」
と柚子はずんずん歩いていく。
内心、可愛い!? 私可愛いって言われた//!! となっていることに、秋乃たちは気づいていない。
「ツンデレだ! あのキャラと一緒だよ。現実に居たんだ!」
秋乃は少し興奮している。
「いや、落ち着けよ。ちげえから──」
「レデンツと一緒。面白い人と会えたな──」
「オレ登場! 後一分でチャイム鳴るぞ!」
「マジで?! てかいつまでトイレ入ってたんだよ!」
「フッ……」
と香月はうつむいて、暗い陰を落とす。
「……聞くか?」
「遠慮するわ──てか行くぞ!」
「レデンツ……!」
「お前は現実に戻ってこい──」
章は、秋乃を引きずるように走り出す。香月も少しお腹を気にしながら走り出した──もちろん、間に合わなかった。
ツンデレが登場しました。
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