主人公よりも
行き当たりばったりですが、始まります。
カメさん更新です(_ _)
面白くなるように頑張ります。
「良い天気だ」
玄関から出ると、心地よい日差しが平井章を出迎えた。
「今日も頑張るぞ──」
章は一人意気込んで、学校に向かった……
*
教室に入ると、章は思わず溜め息を漏らした。
机の上に立ち、何かの宣言をする田端香月。
「オレが! この二年二組の、イケメンだ!」
それを見て注意する、委員長の湯川犀。
「何をしてるんだ。君は。机の上に誰が乗っていいと思ってるんだ──?」
眼鏡のブリッジをクイッとあげると同時に、香月が乗っている机を蹴り倒す。
「おわっ?!! っぶねえ! 何すんだよ!!」
間一髪、跳んで転ばずに済んだ。
机がガシャンッと倒れる。
それを直しながら、香月が犀を睨む。
「君が机に乗っているからだ」
「そしたら机蹴っていいのかよ!?」
「だめだ」
「じゃあ何で蹴ったんだよ!」
「え……? 蹴りたくなったから」
と犀はゲスい顔をして言う。
「次机に乗っていたのを見たら、タダじゃ済まないからな」
「……はぃ」
あまりにも犀の目が本気だったので、香月は一歩退いた。
そんな犀の目を見て、野嶋朔が声をかける。
「まあまあ、犀落ち着いて。イラついたら、俺を殴ればいいさ!」
「……いい。朔、お前はいつからそんな奴になったんだ──」
と犀は頭を抱える。
朔は、いつものことじゃんと犀を慰める。
「何でこのクラス、変なやつばっかなんだ?」
章はまた溜め息を漏らす。
だが、溜め息を漏らしても何も変わらないので、とりあえず席に行く。
窓際から二列目。ふと斜め前に目をやると、窓際の舛田秋乃が頬杖をついて、ぼんやり外を見ていた。
「おは……」
「ぁ……今日新しいアニメやる……」
「天気とかじゃねえのな!」
思わず章はツッコんだ。
「え? あ。いい天気だな~」
「遅いわ!」
「そっか。おはよう」
「ぉ……おはよう……」
言おうとしたことを先に言われて、章はもごもごする。
そこに、香月がやってくる。
「おはーす!」
「おはよう」
「お前さっき何してたんだよ」
「は? 見ればわかるだろ? このオレが、イケメン宣言してたんだよ」
「いやわかんねえよ──ただな、このクラス……変わり者ばっかな!」
章が半ば呆れ気味に言った時、担任の山井がドアを開け放ち、入ってきた。
「おら席着け。着かないと張り手くらわすぞ──」
鋭い目つきで放った言葉に、全員が素直に席に着く。
「ほんとですか?!」
だが、朔だけが立ったまま目を輝かせている。
「あー……そういう趣味があるやつは、個人的に今日の昼休み体育館裏に来い。張り手の一つや二つ、好きなだけやってやる」
「わかりました! 強めでお願いします!」
「……冗談だ。教師は生徒に手ぇ出せないからな。野嶋は、あれだ。湯川にやってもらえ。それなら大丈夫だ。喧嘩で片付けられる──」
と朔に手で座るように指示する。
「わかりました! 犀、あとで強めで張り手──」
「しないからな?!」
と犀が間髪入れずに反論する。
「先生もやめてください。僕は、見るからにやってくださいっていう奴には興味ありません」
「そうか。すまんな──じゃ、ホームルームを始める──」
章は、そういう問題じゃなくね? とツッコみたくなるのを、グッと堪えた──
ホームルームが終わり、山井は開け放ったドアを閉めて出て行く。
「なんだよ〜。やんないなら言うなよな──ねえ? 犀」
「僕に訊くな──」
と犀は眼鏡を押し上げる。
若干機嫌が悪くなっている。
「……はぁ──」
「どうした? 章疲れてね?」
「そりゃなぁ……だって──」
「あ。わかった」
「わかるか、香月──」
「オレがカッコよすぎてツラいんだな!」
「…………」
章は何だコイツ馬鹿か? という冷たい視線を香月に送る。
「仕方ない。このオレのカッコよさは隠せないからな!」
香月はそんな視線をものともせずに、続ける。
「見とけ。オレの勇姿──!」
と近くの机に仁王立ちする。
「わぁ……」
と香月に気づいた秋乃が声を出す。
「香月、お前……」
「どうだ? オレカッコいっ!?」
「机に乗るんじゃない──!」
犀が机を勢いよく蹴り倒した。
章は机と一緒に床に転がった。
「ぐっ……てめぇ……」
「自業自得だ。さっき忠告したばっかりじゃないか──」
「……そうですね……」
謝りながら机を起こす香月の頭には、たんこぶが出来ていた。
それを見た朔は何を閃いたのか、机に立ち犀を呼ぶ。
「犀、これならいいよね!」
なぜか目を輝かせている。
まるで、早く蹴ってくれと言わんばかりだ。
「…………」
犀はそんな朔を下から見上げて、一言。
「下りろ──」
「…………わかったよ」
朔は犀が蹴らないとわかると、ちぇっ、と口を鳴らして下りた。
それを見た香月が口を挟む。
「何で野嶋にはやんないんだよ」
「だから、僕はやってくださいっていう奴には興味ないんだ」
「贔屓だ!」
と香月が吠える。
それを見た章は、もういいや……と本日三度目の溜め息をつき、朔はつまんないというように席に戻った。
「今日も平和だ……」
秋乃は、そんなクラスを見渡して呟いた──
まだ出てない人たちは、徐々に登場します。
これから、よろしくお願いします(_ _)