表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
17/79

夜の学校

遅くなりました。

夜の学校。

 秋乃(あきの)香月(かづき)は、ある計画を企てていた。


「さて、夏と言えば──」

「肝試しだな!」

「そう。で、やっぱりここは学校でやるべきだと思うんだよね」


 と秋乃は腕を組む。


「雰囲気もあるし、ぴったりじゃん?」

「確かに。……でも何で急に?」

「小さいことーは気にするな、それワカチコワカチコ〜」

「懐かしい! ……じゃなくてさ、何かあんだろ?」

「おっ。さすが香月殿、察しがいいですのぉ。実は最近、(しょう)がイライラして燃えてるから、背筋を冷やしてあげようと思って」

「原因、オレたちじゃね?」


 と香月が指摘する。


「…………」

「…………」

「まあまあ、それはそうだけど──まあ、単におれが章の怖がるところを見たいだけなんだけどね」

「それは一理ある。 オレも見たい!」

「でしょでしょ。じゃあ決まりだ。明日の夜、決行」

「楽しみだな!」


 と二人で盛り上がっていると、ネタにされている本人、もとい章が来る。


「盛り上がってんな。何の話よ」

「章の怖がるところを見ようっていう話」

「なんだそれ」


 章はくだらないというように、呆れた顔をする。


「だから、明日の夜空けとけよ!」

「学校探検だ!」

「……あぁ、そう──」


 てか、夜に学校入れんのか? と章は思った──


         *


 そして、当日の夜。


「いやあ、セコムしてなくてよかった。ほんと──」


 秋乃たちは、一階の廊下を歩いていた。

 運良く?一階の男子トイレの窓の鍵が開いていたため、そこから入室、もとい侵入した。


「やっぱ雰囲気あるな……」


 香月が辺りを見回しながら言う。

 確かに、昼とは違って誰もいない学校は静かで、些細な音でも大きく聞こえる。

 それに廊下は薄暗く、月の光だけが頼りになってくる。


「てかライトは?」

「そんなものに頼るわけないじゃん。もうっ、章くんったら」

「バカにしてんのか?」

「冗談だよ。ライトは、雰囲気を楽しむために持ってきてません」


 と秋乃が胸を張る。


「さすが秋乃! 考えることが違うな!」

「いや、ただのバカだから。てかどうすんだよ。あっちすげー暗いんだけど」


 と章が立ち止まる。

 前方には、窓が木に隠れて光が入ってこない場所がある。昼でも電気をつけっぱなしにするぐらい薄暗い所だ。


「ここは、章が前で香月、おれの順で」

「いやいやいや。ここは章だけで」

「ふざけてんのか──」


 と言ったあと、章が何かを察知してゆっくりと指をさした。


「……誰だ?」

「忍者さんじゃないの?」

「ああ、忍者──」


 だが、動きが何か違っていた。

 左右にゆらゆらと揺れていた。


「忍者さんって、あんな動きだったか?」

「酔拳とか?」

「学校にお酒持ってきちゃだめだろ」

「香月、そういう問題じゃない──」


 そんな会話をしてる間に、“何か”は明かりが届く場所まで近づいてきていた。

 当たり前だが、三人に近づいてきているのだ。


「……これってあれか? 逃げないといけないパターンか?」

「そうだね。逃げよう──」


 秋乃の言葉を皮きりに、三人は背を向けて走り出す。


「待てやあああああ──」


 と野太い声と共に、足音が近づいてくる。


「ヤバいヤバいヤバい!」

「香月振り返ってみ! ちょっとでいいから!」

「やだよ! 秋乃が振り返れ!」

「いやだよ──とお」


 と香月の足に自分の足を引っ掛けて転ばせる。


「ブッ──」


 香月は、廊下に突っ伏した。

 そして秋乃は言う。


「さすが、香月は友だち思いのいいやつだなぁ」

「お前最低だわ──」


 そう言いながらも走りをやめない章も、秋乃と同じだろう。

 少ししてから、うわああああああという香月の悲鳴が聞こえた。


「……どうする?」

「連れて帰らないとだろ……」


 立ち止まって少し考えてから、二人は戻りだした──


         *


 戻ってみると、香月の隣に山井(やまい)がいた。


「お前ら、何してんだよ」

「先生こそ何してるんですか?」

「見回りだよ。週直で」

「なるほど──それじゃ、おれたちはここら辺で……」

「明日、お前ら反省文な。学校に不法侵入したってことで──」


 と山井が怒りに満ちた笑みを浮かべる。


「「「……はい」」」


 三人は、やっぱりね……と思いながら頷いた──


         *


「てかさ、香月何で悲鳴あげたの? 先生だったじゃん」

「確かに──」


 家に帰る途中、秋乃と章が訊く。

 香月は何言ってんだ? というように二人を見ながら言う。


「ちげえよ。オレが叫んだのは、血眼の髪の長い女が首絞めてきたから。で、先生に呼ばれて意識が戻ったんだよ。マジ怖かったんだからな──!」


 学校では暗くてよくわからなかったが、電灯に照らされた香月の首には、うっすらと手で絞められた痕があった……。


 その日の出来事は、秋乃と章、もちろん香月にとって、忘れられない思い出となった──

 


休日投稿です。(今回は別)

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ