眼鏡と世話役
遅くなりました(^^;)
図書室ではお静かに。
「……何してるんだ」
放課後、犀は図書室に来ていた。
そこで、秋乃と香月を見つけた。
「本でドミノをやろうかと」
と秋乃が本を並べながら言う。
「湯川もやるか?」
「結構。てかやめろよ──」
香月の誘いを即切り捨て、犀は本を選びにいく。
本を選んでいると、本から声が聞こえてきた。
「さあ、選べ。そう、今目の前にある本だ。さあ、早く──」
「……何してんだ朔」
「バレちゃった?」
と向かいの本棚から犀の所にやってくる。
「声でバレる。てか何してんだ」
「犀に本選んであげようかと思って」
「何かあったか?」
「うーん……まだ。要望は?」
「そうだな……。文学がいいな。古くても構わない」
「わかった。じゃ、ちょっくら探してくら──」
と朔は歩いていった。
犀は黙々と棚に目を通していく。
「……うーん。ないな──」
ふと、秋乃たちの所に戻ると、立派なドミノがテーブルに完成しつつあった。
「…………」
「あとちょっとだ」
「おう!」
なぜ、やめろと言ったのに続けているのか。しかも結構本格的に作っているし、くだらないことに労力を使いすぎだろ。と犀は思う。
「お。湯川じゃん。見て、後少しで完成だよ」
「すげーだろ!」
「片せ。本で遊ぶんじゃない」
「ノリわりーな。楽しもうぜ!」
「本は読む物であって、ドミノをするものじゃないだろ」
「何々? 何が完成するって?」
と朔が本を持ってやってくる。
「おお、野嶋。本持ってきてくれたのか! サンキューな!」
と香月は迷いもなく本を取る。
朔は、え? え? と空になった手元と香月を見る。
「それ、僕にじゃないのか?」
「そうだけど──」
すでに本は、ドミノの一部と化している。
「ダメだ……。せめて平井がいれば……」
この二人をどうにかできるのに──
そんな思いが届いたのか、章がやってきた。
「あ! 秋乃と香月、ここにいたのか! 早く戻れよ。先生が待ってんだから──」
「あとちょっとだよ」
「そうそう!」
「うるせえ。本で遊んでんじゃねえよ。怒られるぞ、湯川に」
「効果がなかった」
「うお。マジか──」
と犀と朔に気づいた章は腕を組む。
「……はあ、湯川に言われてもやめなかったのか……仕方ないな。もし予定より早く終わったら、ジュースおごってやったのに──」
ピクッと香月の動きが止まる。
「香月、惑わされるな! それは悪魔の囁き……!」
「あぁあ、レデンツの新しいガチャガチャある所、知ってるんだけどなぁ──」
ピクッと秋乃も動きを止めた。
「でも、先生を待たせてるうえに、やりたくないからって図書室の本でドミノやってるんだもんな。それならおごれないし、教えられないなあ──」
と章は大げさにため息を吐く。
秋乃と香月は顔を見合わせ、
「香月くん、戻ろうか」
「そうだな、秋乃くん。じゃ、あとは任せた!」
と犀たちに言うと、二人はすごい勢いで図書室を出て行った。
「おごるのか……?」
「なわけないだろ。ああでもしなきゃ戻らないからな」
「……なるほど」
と犀は頷く。
「じゃ、俺も戻らないとだから」
「おお」
と章を見送って、犀たちは目の前に残されたドミノを見て思った。
これ、どうするんだ──? と──
本は、あのあと犀と朔が元に戻しました。
休日投稿です(7月になります)。




