久しい登場
忍者登場!
忍者は、油断していた──
──ドササッ
「いつつ……」
とある一室に、忍者は落ちた。
ふと視線を感じて顔を上げると、そこには着替え中の女子たちが──
「…………」
『…………』
一瞬の沈黙の後、女子たちの怒声と共に、あらゆる物が忍者に向けて投げられた。
「変態!」
「さいってー!」
「出てきなさいよ!」
「ぶっとばすわよ!」
「ちょ、すまぬすまぬ! 悪気はなかったんでござるよ! ちょっと板が外れてて──」
「言い訳なんて訊いてないのよ! 早く出てけ──!!」
「ひぃぃ──!」
忍者は、素早く部屋を出た。
出る直前に、後頭部に何か当たったが、忍者は振り返らなかった。
振り返ったら、女子の下着姿を見ることになり、男として最低だからだ──
あとで落ちた所を直そうと思いながら、忍者は廊下を歩く。
通り過ぎざまに、生徒たちが忍者を見るが、忍者は気にしない。
「あ。忍者さん」
「ん? おお、あの時の──」
秋乃と遭遇。遭遇というか、秋乃以外で忍者に声をかける人など、あまりいないだろう。
「そうです。舛田秋乃です」
「舛田殿でござるか」
「はい。どうしたんですか? 珍しいですね」
「ああ、ちょっと失態をしてしまってな……」
すると、そこに香月がやってくる。
「うおお?! 誰? 秋乃の友達?」
「忍者さん。この前会った──こちら、田端香月」
「田端殿でござるか。よろしく頼むでござる」
「ござるとか! マジもんじゃん! やべー!」
「…………」
何でござるか。この田端殿は……と忍者は思う。
「こちらこそ、よろしくでござるよ!」
「う、うむ──」
「何してんだ? あ」
章もやってくる。
「どうも」
「うむ。こちらは──」
「平井章です」
「平井殿でござったか」
と忍者は手をたたく。
「何々?! 知り合いだったでござるか!?」
「香月、ちょっと静かにして」
「……へーい」
忍者は段々疲れてくる。
そろそろ行こうかと思った時、また誰かがやってきた。
「わー。忍者だ」
「本当だな──」
朔と犀だった。
あまり、驚いていないようだ。
「そちらは?」
「忍者さんだよ」
「なるほど、忍者さんか。僕は湯川犀」
「俺は、野嶋朔です」
「よろしくでござる」
いっぱい来たでござるな、と思いながら、忍者はどうしようか考える。
「忍者だぜ! 忍者!」
「香月うるさい」
「秋乃、ノート返せ」
「あとちょっと──」
「犀、忍者っているんだ」
「そりゃいるだろ。ただ見ないだけだ──」
「…………」
忍者はやりとりを見て、今なら大丈夫でござろう。と、さっとその場を離れた。
「……あれ? 忍者さんは?」
「さあ?」
秋乃が気にした時には、もういなかった──
*
「ふう……舛田殿には、色んな友がいるのだな──」
天井裏に戻り、忍者は一息吐く。
やっぱり、毎日いるところは安心するでござる──
そんなことを思いながら、さっき落ちた天井を直して、忍者はいつものように巡回する。
そしてまた、ずれている板を見つけた。
「む。直さねば──っ?!!」
──ドサッ
また落下。
「イタタタ……」
顔を上げる。
そこは別の部屋だったが、さっきと同じ光景が広がっていた。
「…………」
『…………』
女子たちの鋭い視線が、忍者を突き刺す。
「えっと……失礼し──」
『ヘんたーい!!』
「ぎゃああああああぁぁぁぁぁぁ……」
その時の忍者の悲鳴は、学校内に響き渡ったという──
忍者「これが、久しぶりの登場でござるよ……(遠い目)」
休日投稿です。




